人質交換ゲーム 新連載 1 最初の提案
最初の提案
その日、わたしのおみくじは大凶で、死神と苦手な両生類系の男に出会い、地獄に向かって進むことになりました……。
「妹のツムギです」
兄が紹介してくれたので、わたしは、
「よろしくお願いします」
とあえて明るくハキハキと挨拶しました。
余計なことを言う、と兄の顔に出ています。
「いいですね」
右に審判のように座っている不気味なオジサンが微笑みました。ですが、正面に座っているわたしたちと同世代の兄と妹の表情は硬いままです。
なにしろ、わたしと正面の座っている女の子は、お互いの兄によって、なにをされても文句を言ってはいけないのです。
「ぼくはカツヒコです」と兄は名乗りました。美少女を前にして興奮しているのがわかります。
「タキオです」と兄の前に座っている男性がねっとりした声で言いました。
兄とほぼ同じぐらいの年齢の若い人。成人していなければ参加できないので、きっと資格を得て間もないのです。
「妹のミヤビです」と彼は横にいる少女を紹介しました。
清楚です。睫毛を伏せて、こちらを正視できなません。この子をわたしの兄が……。
そしてわたしはタキオさんに……。
私もタキオを正視できません。兄とちがい、がっちりとした体格で大きくて、肩も盛り上がっているようです。
「人質交換ゲームを取り仕切るアシスタントのウダガワです」
えび茶色とでも言うのでしょうか。おそらく貰ってもほとんどの人は着ないだろう妙なチェックのジャケットを着ています。年齢はわたしの父と比べても老けているので四十以下のはずはなく、では何歳かと言われると五十かもしれないし七十かも知れません。痩せこけて、皮膚は焼け焦げだ紙のように黒く皺だらけ。それでいて油を流したように照り輝いています。
頬から顎まで短いヒゲがつながっています。そのほとんどは白いのです。
ヒゲは白いのに髪の毛はウソのように黒々として、オールバックです。生え際を見てもカツラではなさそう。怪しいけども。
ハローウィン・パーティーでそのまま死神役ができそうな雰囲気です。魂を吸い取られそうです。わたしのクラスメイトたちなら全員が「キャー」と叫んで逃げるでしょう。
「君たち、このあたりははじめてかな?」
ウダガワの言葉にわたしたちはみなうなずきました。
わたしも、浅草に来たのははじめてです。これから大変なことになるというのに、テレビでよく見る外国の観光客でいっぱいの雷門を通って、同世代の修学旅行生たちと仲見世を抜けて、恐れ多いことですけどお参りもしてきたら、少しウキウキしていたのです。
「末吉だってさ」
兄はおみくじを引いて、少し不安そうに笑いました。
「ツムギも引いてみろよ」
「やめとく」
「引いてやるよ」
「やめて」
でも兄は強引にカラカラを金属の箱をふって竹の棒を出して、そこに書かれた番号と同じ引き出しからおみくじを1枚、抜き取りました。
「やったね」
「え?」
大凶……。
「気にするな」
勝手な兄です。
浅草にドンキがあるのは知りませんでした。あちこちで巨大なビル建設をしているので、この街は大きく変わろうとしているみたいです。
定休日らしくひっそりとした遊園地の裏を抜けて広い通りに出ました。
そこからはスマホの地図を見て歩く兄のあとをただ追うだけです。
やがて、古ぼけた喫茶店に辿り着きました。店名が赤いテント地の軒先に書かれていたようですが、赤い部分はほとんど褪せてしまい、文字も剥がれて読めなくなっていました。アロエの鉢植えが入り口に転がっています。不気味なほどの生命力で、四方八方に伸びています。
店内に入ると、恐ろしいオジサン、ウダガワが待っていたのです。
「ようこそ、ゲームの世界へ」
不気味なこの人だけだったなら、きっと逃げ帰ったでしょう。
この数日、悩みながらも覚悟したのです。でも、ウダガワは不気味すぎる。とてもできない。ムリな気がしたのです。
それでも、わたしたちによく似た2人がすでにいたのと、そこにいるミヤビさんの美しさに魅せられたように、席についていました。
「すてきなゲームになりますな」とウダガワがほがらかに笑いました。
「若い人質はそれだけでギャラリーが期待するのでポイントも高くなるんですよ」
ヒッヒッと空気が漏れるような笑い。
「では、お互いに身分証明書を交換して確認してください」
それは儀式の第一歩。
「ぼくはツムギを平手打ちする。いいか?」
鼻息も荒いタキオが言います。
「はい。お願いします」
彼はわたしを掴んで引っ張りながら、かなり急いで歩きつつ、自分の端末で提案を選択しました。今日は合計4つの提案をこなさなければなりません。その最初の提案は平手打ちか、グーパンチ。わたしは平手打ちを選んだのです。
路上です。
さっき会ったばかりのカエルを思わせるタキオが、いきなり大きな平手でわたしの頬を張り飛ばしました。
「ひーっ」
アスファルトに崩れてしまいました。ジーンと痛みが頬から顔全体に拡がっていきます……。

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