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伝奇SM「牛頭伝説」 1 九斗村

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★新連載は、かつて商業誌に掲載された「牛頭伝説」を全面改稿してお届けします。舞台は昭和中頃の山間部。設定として、教師と学生なのですが、この学生がどういう学生かを明確にすることをFC2の表現既定で許されないので、曖昧に表現しています。が、小の学生です。そんなことだと思ってお読みいただければ幸いです。あんぷらぐど(荒縄工房)

 これから恥を忍んでお話させていただくことは、いまからかなり前、私が小○生の頃に起きたことでございます。
 あれは、昭和という時代のもっとも華やかな頃でしたでしょうか。高度経済成長期と呼ばれ、人々は仕事や新しい近代的な生活に夢中になっていたのでございました。
 いまでこそ少子化であるとか高齢化は大きな問題となっておりますけど、その頃、地方の貧しい山村から若者たちが都会へ出て行ってしまうことは、さほど大きな問題にはなっていなかったように思います。
 私も大人になったら都会で働くことを夢見ておりました。田舎暮らしは好きではありませんでした。
 世の流れに押し出されるように、あるいは吸い寄せられるように都会へ出たのです。
 あれは都会での仕事や生活にも慣れ、夫に出会った頃だったでしょうか。ニュースであの村がダムの底に沈むことを知りました。実際に沈んだのはそれから十年ほどあとで、その頃には子育てで必死だったと思います。
 いずれにせよ、「あの九斗村が消える」と思うとうれしくてなりませんでした。その後の私の生き方はすべて正しかったのだ、おかげで忌まわしい過去も水の底に沈むのだ、と。
 村を出てからは一度も帰りませんでしたし、同級生たちと会うこともありませんでした。せっかく薄れかけてきたおぞましい記憶を、あえて鮮明にすることは、誰も望んでいたなかったのです。
 九斗村は、古い歴史がありながら、判然としないことも多々ありました。源平時代の落人が拓いたとの伝承、その後の朝廷への反乱軍の隠れ家だった説、さらに徳川の世になってからは忍者に与えた土地だと言う話まであって、いずれにせよその地域でも「他とは違う」と、あまり近隣と交わらない村ではありました。
 気位の高さと、なにか後ろめたいことでもあるのか、探られたくない警戒心があったように思います。
 明るい緑色のペンキに塗られた木造平屋の村役場も、医院と隣接した黒い板張りのこじんまりした学校も、代々村長となる大きな藁葺き屋根の屋敷も、よく遊びに行って怒られた水車や洞窟、祭りやお正月のときに行く薄暗い社も、すべてダムの底に沈んだのです。
 このまま記憶は消えるに任せ、私は人生をまっとうするつもりでした。重い病気になるまでは。
 こうして自分の人生の終わりがはっきり見えてしまうと、昼といわず夜といわず、頭の中に浮かんでくるのは、若い女性の苦悶の表情なのです。
 美しいあの顔が歪むとき、あの頃の私たちはめくるめく快感を得たのでした。
 だからこそ封印し、忘れ去るべきことなのです。それを求めたら最後、二度とまともな生活には戻れなくなる……。
 その人の名前は、木暮亜衣子といたしましょうか。「あいこ先生」と呼んでおりました。正確な文字は思い出せません。若く溌剌とした女性の出現によって、九斗村は災厄の扉を開いたのでした。
 いまでも、彼女は被害者であると同時に、彼女さえ来なければあれほどのことは起きなかったのではないかとも思えてしまいます。
 死を前にしたいま、ますます鮮明になってくるあの頃の記憶を残したい欲望に突き動かされ、自分でも信じられないことにこのお話を書き残すことといたしました。
 時代も昭和、平成そして令和と変わり、あの頃のことを綴るにはいい頃合いに思えたのです。
 話を最後まで書くことができるかはわかりません。命のある限り書きましょう。
 鮮明になったとはいえ、記憶が正しいものかも判然とはしません。以前、治療のときに受けていた強い薬のせいでおかしくなっている可能性も否めません。
 それでも不思議なことに、こうして思い切って書きはじめてみると、私の心はいままでになく平穏に満たされています。勝手なことだとは思います。誰かに迷惑がかかるかもしれません。それでも、死にいく者の祈りとして書かせていただきたいのです。
 秘密と一緒にダム湖に沈んでいるはずのあいこ先生のためにも。

 木暮亜衣子が九斗村にやってきたのは、大風で桜の散ってしまった頃でした。里よりも村はやや桜は遅く、年によっては桜と雪が同時に見られることもありました。
 深い谷に囲まれた地域で、鉄道駅は遠く、明治時代から鉄道の計画だけはあっても立ち消えになったままでした。地形の厳しさから道路の整備も遅れていました。これは近隣と距離を置いていた村の意固地な性格の影響もあったことでしょう。
 里とつなぐのは一本の道。バスは一日に三便か四便。村の中にバス停はなく、20分ほど歩いた峠に行かなければ乗れません。
 やや強い風で煽られて、砂埃が舞うバス停に、鉄道駅からやってきたバスが到着したのは、夕方近くでした。途中で乗客はみな降りてしまい、亜衣子ひとり、ブザーを押してここで降りると運転手に告げたのです。
 降りるバス停によって運賃が変わりました。
 不安を感じながらも、運転席の横にある運賃箱に乗車時に受け取った券を落とし「八百九十円です」と言われ、お札しかないのでそれを機械に入れると、釣り銭を運転手が渡してくれました。
「ここで降りるんですか」
 中年の運転手は驚いたようでした。
「はい」
 彼は亜衣子の顔を見ようともせず、運賃表をセットし直しながら、プシュッとエアの抜ける音を立ててドアを開けたのです。
 ホコリっぽい空気が入ってきました。ちょっと嫌な臭いがします。山合いの峠というのに、新鮮な空気ではありません。
「九斗村は、ここから行くんですよね?」
「ええ。十五分か二十分ぐらいかかりますよ。誰か迎えに来ないんですか?」
「はい」
「旅行に来るようなところじゃないですけどね」
「ご心配なく。知り合いがいるのです」
 運転手は黙ってしまい、はじめて亜衣子の顔をマジマジと見ました。
「学校がありますよね、九斗村って。そこで教員をしている人がいて……」
「降りて」
 冷たく言い放ちます。「早く。これからまた駅まで戻るんですから」
「あ、すみません」
 峠には山肌を荒く削り取った広場があり、バスはそこでぐるっと回るようでした。いま来たところを戻っていくのでしょう。
「あの村に知り合いかよ。驚いたね」
 重いバッグを持ち上げてステップを降りて行く亜衣子には、運転手がそうつぶやいたように聞こえました。
 なんだか差別されているみたい……。
 閉鎖的な地域なのかもしれないと感じた亜衣子は、むしろやる気が出てきたのでした。
 バスがぐるっと回って、誰も乗せることなく去って行くのをじっと眺めていました。
 女子大を出て教師になりたいと思っていたのに、なかなか職に恵まれず、家庭教師や塾の講師をしていたところ、大学の先輩から誘いの手紙が届いたのです。
 NTTドコモはまだ誕生しておらず、大型のポータブル電話機は業務用に開発されていたものの、一般の人たちの手に携帯電話が普及するのはもっとあとのことでございます。
 だとしても手紙での誘いは、やや堅苦しく、古風な印象を持ったのですが、「一度、遊びに来てみては?」の文言を頼りに、ハガキで今日から数日、休暇を取って遊びに行くことを告げたのでした。その返事もまた手紙で、丁寧な挨拶文と道順などを書いたものが送られてきたのでした。
 家庭教師や塾講師はこの時代、専業の人もいましたが、彼女のようにアルバイト感覚の人もいて、いつまでも続けるものではないと思われていました。亜衣子の姉はすでに嫁ぎ、両親も「働かないなら見合いをしろ」と縁談を持ちかけてくるようになり、それも疎ましかったのでしょう。
 休暇といっても、もしすぐにでも働けるのなら、このまま帰らずにしばらく九斗村に居続けるつもりだったようでございます。
 手書きの地図を頼りに、峠からバスが消えたのとは反対側へ下りていきます。道は急激に細くなり、小型のクルマしか通れない道幅になりました。
 砂利道は、凸凹で、ところどころにえぐられたような大きな窪みもあり、歩きにくいので、スニーカーに履き替えてヒールはバッグに突っ込んでおきました。
「こんなにいっぱい荷物、持って来なければよかったな」
 働けるのではないかとの期待から、当面は困らないようにいろいろと持ってきたことを少し後悔していました。
 道がやや平坦になったところに、「九斗石油」とペンキで書かれたドラム缶が3本ほど置かれていました。それが村のある印のような気がして、亜衣子は少し明るくなって、とにかく村へ急ごうとしたときでした。
「こんこん」と声がしました。
「えっ?」
 振り向くと、半ズボンを穿いた男の子が立っていました。
「こんこん、こんにちは」
「こんにちは」
「ぼぼぼくは、はやみ、たたた、たけし」
 吃音というのとは違い、その子はふざけて歌でも歌うように、妙な言い回しで名乗るのでした。
「お姉さんは?」
 九斗村の子に違いないと感じたので「木暮亜衣子です」と答えたのでした。
 速見武は、私の同級生です。学校では頭がよくて誰もかなわないのですが、喋り方や行動にはちょっと普通の人とは違うところが多すぎました。

(協力:エピキュリアン ラバーレオタード



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エピキュリアン1

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伝奇SM「牛頭伝説」 2 亜衣子の胸を

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「なんで、怯えてるの?」
「怯えてなんていないわ」
「怯えてる。子ヤギみたいだ。どうして?」
「怯えてません。それより、九斗村の子?」
「もちろん。こっから先は九斗村だからね」とドラム缶を指さすのです。
「九斗村は石油が取れるんだよ」
「え? ホントに?」
 日本で石油の採れるところなどあっただろうか、と亜衣子は疑います。この子は勘違いをしているのかもしれない、と。九斗石油というお店か会社があって、灯油などを販売しているだけなのではないか。それを自分たちの村で石油が採れると勘違いしているのではないか。
 だいたい、もし石油が出るのなら、もっと知られていてもいいはずだ。亜衣子の知識でも新潟の方でわずかに産出している地域があるものの、このあたりではまったく話題にもなっていないのでした。
 ええ、もちろん、九斗村には石油がございました。わずかな量ではありましたけど、小型の発電機を回せるぐらいのことはできたのでございます。知られていなかったのは、これもまた村の秘密のひとつだったからですし、人が減ってしまったので誰も顧みることがなかったからでもあるのでしょう。
「牧村美枝先生、知ってるかな?」
「もちろんだよ。きれいな先生だったから」
 だったから? なぜ過去形?
「そうか!」と武は叫びます。「かかか、代わりの先生なんだね! すすすごいぞ、大変だ。みんなに知らせなくちゃ。美枝よりぜんぜんきれいな先生が来たら、みんな大喜びしちゃうよ、バホバホ!」
 笑顔はないのに、武は喜んでいるのか、興奮して踊るように飛び跳ねます。
「まだ決まったわけじゃないの。遊びに来ただけなのよ」
「決まりだ決まりだ、先生に決まりだ。美人で若い先生に決まりだ、バホバホ」
 バホバホって何? 亜衣子は思ったものの、子供たちの間で流行っているのかもしれないと受け流しました。おかしな言葉遣いは、男子によくある照れ隠し、妙な言い回しは子供たちの流行。それは実際、よくあることだったのです。
 亜衣子は、むしろほんの一瞬、西日を反射してキラッと光った武の目に注意を向けるべきでした。猫の目を思わせる強い反射。それは私たち、九斗の村で生まれた子によくある現象だったのでございます。
 あの村は呪われている、気持ち悪い、なにかおかしい……。
 村を出て気づいたのですが、ずっと九斗村は近隣からそう見られていたようでした。分校ではなく、別に村専用の学校を設けたのも、石油などお金があるからというよりも、こうした近隣からの冷たい視線を避けるためだったのでございましょう。
「案内するよ。近道がある。荷物、貸して」
「えっ? いいわよ、自分で持つ」
「村長さんに怒られちゃうよ。美人の新しい先生を案内するんだから、荷物は僕が持つ」
 強引に武はバッグを持ちました。
「うっ、なにが入ってるの?」
「重いでしょ。だから私が」
「いいって」と武は引きずるようにバッグを両手で持ちながら歩いてきます。子供ながらに慣れているからか、かなり速く、亜衣子は追いつくのがやっとでした。
 靴はスニーカーに履き替えたものの、ジーンズが重く感じられ、厚手のシャツの下で肌も汗ばんできました。
 武は砂利道から逸れて、急な細い道を下りはじめました。
「こっちでいいの?」
「うん。大丈夫。近道だから」
「あとどれぐらい?」
「十分」
 きれいな水の流れる小川を渡り、今度は斜面になりました。
「あとどれぐらい?」
「十分ぐらいだよ」
 いつまでも十分なのです。亜衣子は騙されているのではないかと心配になりながらも、汗だくで荷物を持ってくれている武に、ついていくしかありませんでした。
 再び急斜面を下ります。周囲は深い森ですが、確かに踏みならされた道ではあるものの、一列で進むのがやっとの細さです。
 しだいに暗くなっていき、道は湿った土になっていきました。滑りやすく、亜衣子はときどき木の枝につかまって歩かなければなりません。
「あっ」
「どうしたの!」
 かなり先を行っていた武が荷物ごと消えたと思ったら、案の定、すべって転んでしまっていたのでした。
「ちくしょう」
 武は足首を痛そうに抱えています。
「大丈夫?」
「失敗した! まいったな。荷物が重すぎるんだよ」と、元気な方の足で亜衣子のバッグを蹴りました。
「いてててて」
 武は立ち上がれません。
 いま来た道を戻るのは論外です。振り返ると険しい道があるだけ。ここは武を信じて村へ行くしかありません。
「荷物はここに置いていきましょう。はい、背中に」
「ええっ」
 亜衣子はそれが最善だと判断したのです。道を知っている武をおぶって、彼の言う通りに村へ行く。荷物はあとで取りに来ればいい。とにかく教え子になるかもしれない武を、早く治療させなければ。
 武はしぶしぶ、亜衣子の背に抱きつきました。
「よいしょ」
 思った以上に重いものの、彼女は責任も感じていて、なんとかおんぶして歩きはじめました。
「あとどれぐらい?」
「十分」
 道は再び上っています。すでに一時間近く歩いているのではないでしょうか。
 先輩の牧村美枝の手紙には、そんなことは書いてありませんでした。バス停から歩ける距離で、一本道を辿るだけだと。
 手紙にあった簡単な地図は、バス停から少しの曲線で村になっていました。あの道をあのまま行けばよかったのだ、と思うものの、いまさら戻れません。
「んん?」
 必死に登り道を進んでいて、突然、武の手を感じました。その手は、亜衣子の胸を触っていたのです。
「どうしたの?」
「なんでもない」
 武は指をしっかり盛り上がった乳房の上あたりに置いています。
「その手、どけてくれる? お姉さん、苦しいの」
「柔らかくて気持ちいい。美枝先生のオッパイも大きいけど、亜衣子先生の方がいい」
「な、なに言ってるの。ダメよ。やめて」
「早く行かないと日が暮れちゃうよ」
「本当にこの道でいいの?」
「もうすぐだから」



★『隷徒1 聖香の章』★
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シリーズ1作目。荒縄学園に転校してきた聖香。その性癖を暴かれ、退学が嫌なら隷徒として卒業を目指せと命じられる。だが隷徒は全裸で教員や生徒たちのあらゆる要望に応えなければならない……。表紙とイラスト1点・月工仮面。



★『隷徒2 姉妹の章』★
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シリーズ2作目。隷徒・聖香の恥ずかしい姿を目撃してしまった姉の翔子も引きずり込まれ、本性を暴かれて特別隷徒にされていく。捌け口として肉体をいじめ抜かれる姉妹。表紙とイラスト1点・月工仮面。


★『隷徒3 母娘の章』★
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シリーズ3作目。隷徒となった姉妹。その母の過去が明らかになり、母娘は暴虐の渦に突き落とされる。表紙とイラスト1点・月工仮面。


★『隷徒4 栄子の章+黒穴女学園編』★
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シリーズ4作目。最終章。サディスティックな新任教師栄子。その実態は……。さらに栄子と聖香は荒縄学園のライバルである黒穴女学園へ潜入。悲鳴とあえぎ声、そして阿鼻叫喚の結末へ。


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今日のSMシーン
のど射ごっくん涙目鬼イラマチオ! 梨々花
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伝奇SM「牛頭伝説」 3 痛いじゃないの

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 武を振り落とすこともできず、亜衣子は乳房を揉まれながら歩き続けたのです。悔しいだけではなく、その大人びた指使いに恐怖も感じていました。
 純朴なのか。子供ならではのストレートな表現なのか。それとも……。
 牧村美枝に会ったらこのことを相談しておかなければ、と心に記したのです。
「ふー」
 歩きにくい斜面に突然、石で組まれた階段が現れ、それを辿ると砂利道に出ました。確かにこの道はバス停からの道のように思えました。
「着いたよ」
 そこには、トーテムポールを思わせる丸太を削ったオブジェがありました。
「牛頭峠」と彫り込まれ、牛の顔がいくつも彫り込まれていたのでございます。
 みなさま、牛をご覧になったことはございますでしょうか。愛らしい目。大きな口。そして短い角。大きな体で悠々と動く姿は、優しいイメージを持つことでしょう。
 ですが、そこに彫られた牛たちの目は、優しさの欠けらもなく、見た者をただ不安にさせるばかりです。三日月のような角は大きく、鋭く尖っています。
 闘牛に出る牛のようでした。
「ぎゅうとう?」
「そうだよ。昔からここは牛頭峠。ここを下ると牛頭村」
「九斗村、よね?」
「うん。同じ。本当は牛頭村なんだけど、昔、地図ができるときに九斗村になったんだって」
「聞き間違い?」
「どうかな」
 一角が見通せました。遙か遠くに鉄道駅のあたりが見えます。そこまではほとんどが森また森。山深く、その谷が襞のように幾重にも連なっているので景色がいいとも言えません。
 亜衣子は想像しました。おそらく、バス停からの道はこの山襞をくねくねと続いていたのではないか。武はアップダウンの激しいものの、そこを直線的に突き切ったのではないか、と。
 たぶん、昔は武の使った道だけだったのでしょう。獣道を人が通って馴らした険しい道。その後、山襞に細い道路が作られ、遠回りでも安全な道となったのです。
「こっちを通ればよかったのね」
「だけど、完全に日が暮れちゃうよ」
 それも怪しいものだと亜衣子は思ったのでした。
 砂利道は緩い下りになり、山を回り込んだところで、煙が見えてきました。村です。やっと見えてからも、なおたっぷり十分は歩いたでしょうか。
 太陽は山の向こうに消えて、空は深い青色に染まり、たくさんの星が見えています。
 すごいところに来ちゃったな、と思ったものの、もうすぐ武を誰かに預けることができる、先輩に会えるのです。足取りは少しだけ軽くなりました。
 道が平坦になったとき、目の前に峠にあったよりも高く太い丸太が両脇に立っていることに気づきました。
 てっぺんに険しく睨む牛の頭が彫られ、そこからくねくねとした入り組んだ曲線が続いています。風雨にさらされて、最初は判然としませんでしたが、それは組みあった人の姿にも見えました。
「えっ?」
 よく見ると、男女の裸体が蛇のように連なっている姿なのです。
 ここが古い文化を展示する施設なら、亜衣子も冷静に眺めることもできたでしょう。ですが、ここは村の入り口なのです。
 警告はしたはずだ、と見下ろしている牛の頭に言われたような気がしました。
「おりる」
 武が背中で暴れました。
「だめよ、まだ」
 しかし、激しく腰を蹴られ、武の体はすべり落ちていきました。
「あっ」
 亜衣子はぶざまに膝をついて、蹴られた腰をさすっています。
 ですが、武はそこに立っていました。
「武君、大丈夫なの?」
「治った!」
 笑っています。
「ねえ、亜衣子」
 武の瞳がギラッと金色に光ったのを、亜衣子はこのときはっきり見たのです。
 彼の手が亜衣子の頬、そして顎を撫でました。ビリッと電流が走ったようで、体がしびれたのです。
「かわいいね」
 少し開いた唇を武の汚れた指が無造作に触ります。上唇の少しめくれ上がったところから、口角に。さらにぽってりとした下唇では、すっと指先が中に入って真っ白に輝く歯とピンク色の歯ぐきに触れました。
 ふっと我に返った亜衣子は「あっ、なに」と声をあげ、その手を払い除けました。
 金縛りにあったようでした。急激に不快感が全身に駆け巡ります。
「あそこが役所だよ」
 武は緑色に塗られた木造の建物に走っていきました。
 亜衣子は呆然としていたのです。なにか、自分にとんでもないことが起きたのです。おぞましく、それでいて甘い。
 あんな子供になにができるのか。彼女の理性は一笑に付すのです。疲れているだけよ、と。
 それでいて20年間感じたことのない、おぞましいトキメキを感じてもいたのでした。
 彼女の中に巣くう負の因子が、武に触れられた瞬間に活性化して、全身を駆け巡っていったような気がしたのでございましょう。
 武がガラガラと引き戸を開けたところ、「あれ、誰もいないや」と言い、戻ってきました。
「学校に行ってみよっか」
 大人に会えばなんとかなるかもしれない。もし、それでもこの村の様子がおかしいのなら、逃げだそう。荷物を探して、そのままバスに乗って帰ろう……。
 体は疲労と奇妙な感覚でだるいものの、このときまでは、まだ亜衣子の頭はハッキリと物事を考えることができたのでしょう。残念ながら、いくら正しい結論を出しても、行動には移せないのですが……。
「来いよ」
 なかなか立ち上がれない亜衣子に、武は腹を立てたのか、地面に落ちている枝を握り締めると、それを振り上げたのです。
「あっ、ダメ!」
 ビュッと枝は亜衣子の耳元を掠りました。
「なにするの!」
「立てよ!」
 見回しても誰も助けには来てくれません。亜衣子はなんとか立ち上がると、武から棒を奪い取ろうと手を伸ばしました。
「ひっ!」
 棒の尖端は、ジーンズの股間に突きつけられました。それも深くえぐるように。
「痛いじゃないの」
 棒を握りしめ、亜衣子は叫びます。
「ハハハハ。バホバホだな!」
 武は突然、走り出しました。
「待ちなさい」




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あんP(荒縄工房)著。フツー小説。エロなし。奴隷として生きることを選んだ梨々花は、工藤に買われた。だがその工藤を裏切って破滅させた藤崎に売られてしまう。闇カジノをはじめようとした藤崎を何者かが襲撃。「正義の味方」を名乗る者が現れ、梨々花は血なまぐさい狂気の世界に巻き込まれていく……。



★『変態は承服しかねる』★
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変態的作家あんぷらぐどが、まじめに考察した「変態」論。まじめです。
毎年、無料キャンペーンをやりますので、そこでDLすることをオススメします。購入されても責任は負いません。


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エグエグモンスター 佐川はるみ
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伝奇SM「牛頭伝説」 4 恐ろしい体躯に見えるのでした

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 亜衣子は彼を追いました。すると森が突然開けて真っ黒な建物が出現しました。
「ここが学校」
 漆で丁寧に黒く塗られた外壁、白い漆喰。古い建物なのに、いま完成したばかりのように艶々としているのです。とっくに薄暗くなっているというのに、そこだけはぼんやりと明るく感じるほどです。
 パッと黄色い電灯が教務員室に点りました。人影があります。
 もはや武はどうでもよく、そこにいるであろう先輩、そのほかの教員に助けてもらえばいいのです。
 学校なのに曇りガラスの入った引き戸がピッタリと閉じていて、確かに「牛頭村学校」と墨で書かれた古ぼけた看板がかかり、戸口のすぐ横には白い張り紙で「医院の入り口は反対側です」と書かれておりました。
 この頃、医院に医者も看護師もおりませんでした。ただどうやって入手したものかわかりませんが、たいがいの薬品は揃っていたので、村人はこの医院にやってきて薬を貰うのが常でした。滅多に里の病院にまで行く者はいませんでした。
 ガラガラと武がその戸を開けます。
 亜衣子は、まるで安心できないままそのあとに続きます。
「先生! 新しい先生が着いたよ!」
 武が大声で暗い廊下に叫びます。靴を脱いで磨かれた廊下へあがると、武は「この電灯、全部、ここの石油で発電してるんだよ」と自慢げに、ぼんやり点るオレンジ色の電球を示すのでした。
「石油?」
「そうだよ。この奥へ行くと温泉と油田があるんだ。お湯と黒い石油が出るんだよ。僕たちのおじいさんの時代からずっとそれで発電しているんだ」
 亜衣子は信じられない思いでした。
 この村の妖しさは、自給自足というだけではなく、周辺の村に隠れて石油を自由に使ったり、いろいろとなにかをしてきた結果なのではないでしょうか。
 その中には、悪いことも含まれているのでは?
 そう、亜衣子がずっと感じていたのは、悪の気配でした。暗い中でも誰かに見られているような気もしていました。その視線は斜め上あたりで、もちろんそこを見ても薄暗い天井が見えるだけなのです。
 ガラガラと奥で戸の開く音がし、廊下に白っぽい光の枠が出来ました。そこに人影が現れたのです。
 武が先生と呼んだ人物は、亜衣子をここに誘った先輩の牧村美枝ではありませんでした。ぷーんと獣のようなニオイが漂っています。
 怖いと感じていても、武が平気なので、亜衣子も靴を脱ぎ廊下に立ちました。影は動きません。近づいていくと、ケモノ臭はさらに強くなり、その影がとても巨大に見えました。
「ようこそ」
 深く低い声が響きました。
 その音圧に亜衣子は思わず後ずさったほどでした。
「木暮亜衣子です。牧村さんから……」
「ああ、うかがっていますよ!」
 声は快活ながらも、優しさは微塵も感じられません。
「どうぞ、こちらへ。明るい方にいらしてください。そっちは寒いでしょ」
 そのとき、すっとうなじを撫でるように冷たい風を感じ、亜衣子ははじめて山間の村の夜は冷え込むのだと知ったのでした。
 正常な感覚はバスを降りた時点から歪んでいたはずです。石油がどうとかいうよりも、この村の持つ妖気を周辺の人々は怪しみ恐れていたのでございます。それは、村の中で育った者にはわからない不気味さなのでした。
 武が職員室に入るあとから、亜衣子も光の中へ入りました。
 まぶしいほどの蛍光灯。そこに立っているのは大きな人でした。黒づくめの服。柔らかそうな素材は、古ぼけたウールなのでしょうが、その男にぴったりと合っていてまるで皮膚のようでした。私自身、その男がほかの服装でいるのを見たことがありません。上着を脱ぐこともありません。暑い夏でも同じ姿ですし、真冬ではその上に分厚い革のコートを羽織るのです。そうなると、ますます野牛のような恐ろしい体躯に見えるのでした。
「はじめまして。村長兼校長の肝貝です」
 手を差し出したので、亜衣子は恐る恐る手を半ばまであげたところに、肝貝はその細い右手をごつい両手でがっしりと握り締めたのです。
「はっ」
 思わず引っ込めようとしても、まったく動かすことができません。
 年齢は手と首筋によく出ると言われます。それなのに、肝貝の手の甲は艶々と蛍光灯の光を反射し、太い首筋にも年齢を感じさせる皺はありません。皮膚は分厚そうで、いつも艶々していました。
「美しいですね」
 亜衣子は失礼にならないように手を振りほどこうとしても、肝貝はそれを許しません。
「あ、あのう」
「牧村先生のことがご心配なのですね。牧村美枝先生。聡明で美しい方。あなたほどではありませんけどね」
 そうだよ、ぜんぜん違うよと武がつぶやくのが聞こえる。
「とにかく、いい先生が来てくれて、みんな喜ぶと思いますよ」
「まだ決めたわけでは……」
「そうなんですか?」
 ようやくそこで、肝貝は手を離しました。それはとても優しく、小鳥を放すように。
 そのため、振り払おうとしていた亜衣子は、自分が恥ずかしくなりました。人のちょっとした態度や、村の雰囲気だけで決めつけてはいけないと感じたのでしょう。
 もしこの村が周囲から孤立して、差別を受けているのなら、それを是正するのが自分の役目ではないかとすら感じたのではないでしょうか。
「牧村先生は?」
「ちょっとお忙しくてね。いずれ会うときがきますよ。楽しみにしていてください。これから学生に会っていただきましょうか」
「えっ、いまからですか? 実は荷物を……」
 亜衣子は事情を説明した。
「なるほど。それはあとで誰かに取りに行かせましょう。夜、あそこを通るのは危ないですからね。慣れた者に行かせます。ご安心ください」
「すみません」
 そのとき、トントンとノックがあり、開かれた戸の向こうに髪の長い少女が立っていました。
「おそれいります」と彼女は頭を下げました。
「おお、どうしたんだね」
 背が高く、短いスカートから伸びた足はすらりと長い。すでに女の色気を感じるほどだ。
「はじめまして」と亜衣子にも挨拶をする。「速見菜穂子です」
 はにかむような笑みを浮かべる美少女に、亜衣子はハッとしました。この子も速見。
「武君とご兄弟ですか?」
 すると肝貝が笑うのです。「ハハハハ。紛らわしいですよね。この村のほとんどが速見なんですよ。それに、遠縁に当たる者も多いので、顔立ちもどことなく似ています」
「はあ」
「ご安心ください。この学校の生徒は7人しかおりません。上級生は武とこの菜穂子。それに続いて、二郎、善彦、絵里、佐恵子とおります」
 たった7人なのに分校ではなく学校を名乗っているのは、当時としてもおかしく、いま思えばこれは正式な制度に則った学校ではなかったのでございます。九斗村では義務教育を近隣の学校に不登校扱いのまま卒業してしまうのでした。
 少なくとも、私がいたあの頃はそういうことが続いていたのです。自分の名、佐恵子ですが、それをここに記するとかなりドキドキしてしまいます。私はあのとき、あそこにいたのです。
 もっとも年齢が下で、よくわかってもいない頃でした。そして私の世代があのおぞましい村の学校生活を知っている最後となったのでございます。
「これ、どうぞ」
 菜穂子は、瓶に入ったジュースを手にしていました。それを亜衣子に渡したのです。
「ありがとう」
 少女の優しい笑顔に誘われるように、亜衣子はそれをいっきに半分ほども飲みました。険しい道を歩かされて、喉がカラカラだったようです。残りも飲み干しました。
「こっちを見なさい」



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少しドジなお嬢様・丸木戸恵梨香(20歳)がマゾの衝動にかられてじわじわと屈辱的な「ドMのゴキ」となっていきます。ブログ公開版に未発表の2エピソード追加。



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お嬢様として育てられた恵梨香は、M性に目覚め執事の息子の遠隔調教を受けることに。執事夫妻、代理として屋敷に入り込んだ男、巨根の運転手、そして調教のプロたちから日夜、心身の限界まで責められていく。さらに大学の友人たち、婿候補の子息たちにも……。 未公表部分追加。


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奴隷女教師 七年後の貪欲マゾペット 藤野真理
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伝奇SM「牛頭伝説」 5 生贄に……なり、ます

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 肝貝が亜衣子の肩に手をやったのですが、彼女はそれを振り払うこともなく、黙って大きな男に向かい合いました。
「目を見るんだ、私の目を」
 ギラッと光る金色を感じて、亜衣子は体を震わせましたが、足はまったく動きません。力が抜けて、ゴンと音を立てて瓶が床に落ちました。
 菜穂子はそれを拾うと急いで廊下に戻っていきました。
 廊下で菜穂子が瓶を洗っている音が響いています。
「亜衣子。よく来た。おまえは私の子たちの生贄として選ばれたのだ。名誉なことだ。これからこの子たちのために、おまえはさまざまな犠牲を払うことになる。そして、それこそがおまえの真の悦びとなるのだ」
 肩にあった肝貝の手は、首筋、そして顎へと移動していきます。
 亜衣子は魅入られたようにじっとしています。その目はとろんとしています。
 最初に膝がぐにゃりと曲がり、腰から力が抜けていくので、背後に回った武が亜衣子を支えました。彼の腕は脇から乳房にしっかりと回って、その温かくてふくよかな感触を楽しんでいるのです。
「そうだ、亜衣子。武からこの村で石油が湧いていることは聞いただろう。だが、村の電気を賄うので精一杯だ。とても外に売るほどはない。かつては売るほど湧いていたのだが、枯れかかっている。温泉もだ。湯の温度も下がりはじめているのだ。いまこの村を支えているのは、ケシ畑だ。麻酔薬の原料となるアヘンを抽出している。戦時中には軍事用に栽培を許可されていたので、村では誰もがやり方を知っている。いま飲んだジュースにも、そうやって得た特別な薬が入っている」
 亜衣子は体がしびれたようになっているものの、頭の中では危険を感じて、なんとか逃げようとしていたに違いありません。ただ目は肝貝を見つめたまま動かず、表情を変えることさえできず、ただ一筋の涙だけで気持ちを示していたのです。
 その涙を肝貝は指で拭って、舐めたのです。
「美しい女性の涙は私の大好物なのだ。これからもいっぱい流してほしい」
 空気がゆるゆると振動しました。それは肝貝の不気味な笑いなのでした。
「村人の大人たちはケシ畑以外、大して役に立たない廃人同然となってしまった。それでも性欲は旺盛でね。こうして子どもたちを作っている。この子たちが村の財産なのだ。絶対に村の外に出してはいけない。だから、私はこの子たちをここに留めるために、あらゆる手を打ってきた」
 たとえば、以前はあのドラム缶のあった牛頭峠まで来ていたバスを、ずっと手前の峠を終点にさせたりしたのも肝貝によるものです。
 どこの村の村長が、自分たちの便利さを犠牲にするような施策を打つでしょうか。私の親たちは、いつこの村にやってきたのかも忘れた肝貝という男の言いなりでした。肝貝の言う通りに行動すれば幸せでいられると信じていました。
 私もそうやって育てられたので、あの頃は信じ切っておりました。
「はううっ」
 なんとか悲鳴らしきものを出し、再び膝に力を入れて立ち上がった亜衣子でしたが、武の手を振り払うこともできずにいました。
「楽になれるぞ、生贄になると宣言すれば」
「うううううう」
 言えるはずがありません。そんな恐ろしい言葉を口にするなんて。
 武はギュッと亜衣子の乳房を握りしめました。「言いなよ」と亜衣子の耳元に囁きかけました。「生贄になります」と。
「いいいい、生贄に……なり、ます」
 亜衣子はそう口にしていました。
 そこに空き瓶を持った菜穂子が戻ってきました。
 亜衣子の口に瓶を押し込んで、「落としたらダメよ」と命じました。
「うううう」
 肝貝に手を引かれ、亜衣子はヨタヨタと歩き始めました。壊れた人形のようなみっともない姿です。武はわざと「右、左」と足を出すように後ろから押しながら、「右」と言うときに右の乳房を、「左」と言うときに左の乳房をぐりぐりと握るのです。
「この村の生贄になると、この世で得られる最高の快楽の中で過ごすことができる。たとえ短命だとしても、おまえは誰よりも幸せに死ねるだろう」
 うめき声が空の瓶に反響して、不気味な「ぶぶぶぶ」という音になり、廊下を進みはじめたので、そのきしみと伴って隣りの教室にいた私たちを興奮に巻き込んでいくのでした。
 ああ、楽しいオモチャがやってくる。この間の先生以上に楽しいことができるのだ、それが私たちの特権なのだ……。
 なんて素敵なのだろう……。
 本気で私はそう感じていたのでした。
 ガラガラと戸が開いて、そこに肝貝に手を引かれて現れた美しい亜衣子に、私たちは釘付けになりました。武の偉そうな顔。菜穂子の微笑み。
 私たちは肝貝になにかされるというよりは、武と菜穂子に命じられるので、怖いのはむしろこの2人でした。
 亜衣子の目に入ったらしく、彼女は突然、痙攣するように暴れました。武は飛ばされてしまいます。私たちはクスクスと笑いました。武の慌てぶりがおかしかったからです。
 亜衣子は見てしまったのです。
 教壇には、天井から頑丈な縄が数本下がっていて、そのうちの1本は首をくくるのにちょうどいい輪になっていたからです。
「い、いや!」
 瓶が落ちました。菜穂子はそれを予測していたようで、さっと拾い上げました。こういう点は武より何倍も菜穂子の方が素早く恐ろしいところです。
「先生、落としたわね」
「だ、だめ、許して」
 武が私たちに「手伝え」と命じました。
「わー」
 私たちは歓声をあげて亜衣子に掴みかかりました。7人いるとはいえ、力はそれほどないので、肝貝が主にやっていたのですが、亜衣子を担ぎあげて教壇の上にのせたのです。
 武は素早く教壇に一緒に上がると、亜衣子の首に縄をかけました。飛び降りて、さっそくをそれを引っ張ります。私たちもそれを手伝います。
「ぐえっ、ダメ、死ぬ」
 亜衣子は抵抗しました。でも、首を引っ張られて苦しいので、教壇の上につま先立ちになっていました。
 この教壇を誰かが蹴飛ばせば、亜衣子は死ぬでしょう。
 でも、それは私たちの誰もが望んでいませんでした。これは遊びなのです。快楽を伴った危険な遊びであり、この村に生まれた者が味わえる最高の娯楽でもあるのです。
 肝貝は教壇の後ろに机を一つ置いて、そこに土足のまま乗りました。肝貝のすることを咎める者はこの村にはひとりもいません。あらゆるルールを肝貝は自分の都合でどうにでも変更しているのです。
「さあ、生贄らしくしてください。亜衣子先生」
「んんぐぐぐぐ」
 喉に食い込んだ縄にそうとう苦しんでいます。手でなんとか苦しさから逃れようとしているので、肝貝はその手首を掴み、ぐいっと背中でねじりました。
「ぐああああ」
 新たな痛み。それは肩や肘が外れそうで、同時に手首がポキッと折れてしまいそうな痛みでしょう。
 両手首を亜衣子の背中で合わせた肝貝は、天井から下がっている別の縄をそこに巻き付けてきつく縛りあげました。
 これで首の縄を少しでも緩めたいと願っていた彼女の希望は、完全に打ち砕かれたのです。
 激しく泣いていました。大粒の涙がポタポタ落ちてきて、私たちはそれを手に受けて舐めました。
「しょっぱくておいしい」
「甘いよ」
「しょっぱいよ!」
 はしゃぐ私たちのことを、亜衣子は認識もしていなかったでしょう。それどころではないからです。
 手首を縛った縄に加えて、今度は別の縄が肩から脇、自慢げに盛り上がっている胸に回されたのです。
 その縄も武たちと引っ張りました。
「ぐうう」
 これで、首は少し緩くなったのです。
 肝貝はすぐに別の縄を彼女の足首に縛り付けました。
「ああ、いやあああ」
 絶叫。



★共用淫虐妻・千春★

DLSiteのみで販売しています。小説『十二階』一部、二部を改題・改稿した作品です。
十二階に住む達也に頼まれ、千春の調教を引き受ける。彼女の奥底にある危ういまでの被虐性を知り、厳しい調教を行う。さらに達也の提案でマンション全体の「共用」として千春を住人に貸し出す。特殊なペットとして改造にも踏み出す。語り手の調教役を男性にし、一部の表現を変更。ストーリーは小説『十二階』一部、二部と同じです。



★小説『十二階』第一部★
十二階第一部
DMM.R18でのみ販売中。とあるマンションで人妻を徹底調教する。千春は夫の決断で同じマンションに住む敏恵に調教を委託することになった。激しくも甘美な調教で、昼夜を問わず若妻は被虐にどっぷりと染まる。



★小説『十二階』第二部★
十二階第一部

DMM.R18でのみ販売中。調教はマンションぐるみとなり、千春には衣服もプライバシーもなくなってしまう。住人に貸し出される人妻は、さらに苛烈な運命が待っていた。



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 表現上、お食事時にはふさわしくないときもありますので、お気をつけください。
 なお本ブログに掲載している作品の著作権はあんぷらぐ(あんぷらぐど、あんP)に、出版権は電子も含めて荒縄工房にあります。無断転載・印刷・流用はできませんのでご注意ください。

 荒縄工房の取説もご参照ください。

 現在の掲載の目安

※2020年10月20日からは下記の作品を掲載します。
『インサイドアウト』
『奴隷未満(期間限定Ver)』
『荒縄工房短編集』
『奈々恵の百日(続・許諾ください)
『お嬢様はドM3(完結編 期間限定Ver)』
『新版 共用淫虐妻・千春(期間限定Ver) 』
 随時、短編、コラム。
 妄想絵物語(イラスト・月工仮面さん)など。

……

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ペンネーム「あんぷらぐ」
1970年代からのSM小説を読み、書き。「仲ゆうじ」などのペンネームで「SMセレクト」などに小説を書かせていただいておりました。
未発表作、新作などを随時、お読みいただきたいと思っています。
2019年「あんぷらぐど」表記から「ど」を取って「あんぷらぐ」へ改名。

あんぷらぐTwitter(メイン)@tokyoindiessun
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