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小説 官能アドレセンス 1 誘い

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★こんにちは。最新作の1話を掲載します。『恥辱まみれ』が終了すれば土日に掲載する予定で書いています。それまでは月曜日に連載予定です。
 8年目の荒縄工房は、とうとう「官能小説」に取り組むことになりました。
 主人公の「私」は、30代の編集者。森山大空(そら)。男性にも間違えられる名ですが女性です。年下の男・立川紀里夫と同棲して3年。そこに、緊縛師・川北芳純の写真集が送られてきたところから話ははじまります。タイトルにある「アドレセンス」は、青年期、思春期、年ごろ、といった意味。30代の女性のどこが思春期なのか? それはお読みになってのお楽しみ。
 SM小説、フツー小説と書いてきて、ついに「官能」です。SM小説は官能小説のひとつのジャンルでしょう。が、荒縄工房ではこれまで正面から官能小説を掲載したことがありませんでした。SM小説から官能小説へ。なにがどう違うのか。お楽しみに。 あんぷらぐど(荒縄工房)


 ゲラを読みながら、私はどうもしっくり来なくて、ややイライラしていた。このところイラつきが多くなってきている。そのこと自体にイライラする。三十代。年齢を気にせずにここまで来たのに、いまさらか。
「大空(そら)さん、お茶でもどう?」
 編集長の田上良昭の細い体が、陽炎を思わせる。私の周辺には、過剰な熱風が舞っている。竜巻注意報発令中だ。
「あ、ごめん」
 編集長はすっと居なくなる。
 気を使われて、さらにイラッとする。
 六人の机がある狭いオフィスに、男は彼だけ。しかもいまは私しかいない。ほかに誘う相手はいないのだから、私に声をかけてくるのは自然なことで、いつもなら「行きましょう」となる。
 私の目つきがヤバかったのだろう。
 彼は結婚二十年、三人の子持ち。それだけに、女たちの気まぐれや反発を警戒して慎重に生きているので、サッと引いて消えるのが得意だ。
 そんな彼の「わかってます」な態度にもイライラしてしまう。
「はあっ」
 まさか更年期じゃないよね。人によっては早く来るらしい……。
 引き出しを開くと、乱暴に破かれた厚紙の封筒が目に入る。
 またまた、ため息が出る。
 封筒を取り出し、机の上にバンと音を立てて置いた。重い。指先で引き出すと、中から真っ黒な本が現れた。B5版を横にして、しっかり装丁された写真集は、贅沢な紙を使っていることもあって重いのだ。
 差出人は出版社で、編集者の名がある。知らない人だし、正直、その出版社も知らなかった。これが机の上にあったときは、なんともなかったのだが、さきほど気まぐれに封を切って、中身を見たとたん、周囲を見回してからそっと引き出しに仕舞っておいた。
 このドキドキはなんだろう。イライラにドキドキが追いついてきた。
 ため息をつきながら、「しょうがないな」と心でつぶやきつつ、本を取りだして、開いた。
 真っ黒でつやつやのカバーには「NAWA JAPAN 2011-2019」と控え目に白抜きの文字が添えられていた。
 真っ黒だと思った表紙は、ぼんやりと人の輪郭が隠されていた。胡座をかくような姿勢で、顔を下に向けている。タイトルにかかっているが、そこに頭頂部がある。肩と膝の輪郭がうっすら見えている。首のあたりから組まれた足へ、一筋の縄が見えている。
 いかにも苦しそうな姿勢。体の硬い私にはムリだ。
 その足元に「緊縛師・川北芳純」と小さく白抜き文字が自信なさげに刻まれていた。
 表紙を開くと、そこに「緊縛写真家 川北芳純」と自筆のサインが入っていて、「森山大空様へ」と添えられていた。
 上手ではないものの、意外にも温かみのある丸みを帯びた文字だった。
 扉をめくると、そこには、真っ白な壁を背景に、カバーに使われた写真の鮮やかなバージョンが現れた。
 息が詰まり、誰もいないオフィスを確認した。
 腰のあたりは、真っ赤な襦袢がまとわりつき、腕は背にねじ上げられている。ポニーテールにした黒髪までも縄が絡みつき、微かに乳房が見えている。
 艶やかな肩や膝からすると、かなり若い。
 モデルの顔は見えない。
 なにひとつ、得をしない写真。
 それでいて、ドキドキはついにイライラを追い越していく。
 早めに退社すると、恵比寿の駅には向かわず渋谷方面に歩きはじめた。
 私の務めている会社は、ネット広告やプロモーションからスタートし、いまはゲーム制作なども進めている。経営者の親族のやっていた出版社を買収し、自社の部門に取り込んでいて、そこで私は編集をしている。
 他の部門では派手な出版をやっているのだが、それは大手出版社と組んでのこと。私のいる部署とは無関係だ。
 地味で堅実な、他部門の邪魔にならないガチガチに固い出版しかしていない。
 山手線の恵比寿と渋谷の中間付近にある、ガラス張りのITビルには似合わない仕事だ。
 他部門の人たちと同じ社食や休憩室などを使っているものの、交流はあまりない。話も合うことが少ない。
 ただ、他部門の人の中にも、物理だとか化学(ばけがく)、珪藻土だとかに興味のある人もいて、たまに「あれ、いい本ですね」と言われることもある。いや、あった。五年ほどここにいて、あとにも先にも一度だけだ。
 渋谷駅の南口に近い白い小さなビルまで歩いた。入り口は二つあり、一方は明るい受付で写真学校の入り口。もう一方はギャラリー階へのエレベーターホール。
 そのエレベーターホールには、さっき見ていた本と同じ真っ黒な中にぼんやりと映像の浮かぶ写真を使ったチラシが貼られていた。
 三階が受付だと確認し、狭いエレベーターに乗り込むと、「すみません」とリュックを担いだ大柄な男たち二人が駆け込んできて、息苦しくなった。
 緊張する。狭い。男二人と自分だけ。しかもこれから行く先は三階。彼らも点灯しているボタンを確認しただけだから、同じ目的地を目指している。
 三階に着くと男たちはさっと出ていく。
 ガラス張りの外壁に面した細い廊下には、いくつもの花が飾られている。
 男たちは受付に行くと「代わりますよ」などと声をかけていた。関係者らしい。
 私がそこに向かうと、リュックをおろしながら、「いらっしゃいませ」とさっきの男のうちの一人が声をかけてきた。
 ドキッとするほど美しい少年だった。
 少年と言っては失礼なのかもしれない。こういう写真展の関係者なのだから成人しているはずだ。
 だが、勝手にドキドキしてしまうほどの美少年に見える。ふわっとした髪は明るい茶色で、目はくっきりとし、唇も魅力的だ。
「五百円です」
 支払うと、「ごゆっくり」と言われた。「よろしければ、ご署名ください」とも。
 真っ白な芳名帖。今日はまだ誰も記入していないようなので遠慮する。あとで名刺を置いていけばいいだろう。
 失礼にならないように頭を軽く下げて、会場に入る。
 思ったよりも多くの人が来ていた。
 写真集の最初にあった写真が壁一面に大きく引き伸ばされていた。乳首まではっきり見えている。女性だ。若い女性を窮屈に縛りあげている。
 見ている私はぎゅっと締め付けられるような苦しさを覚える。
 口元から涎が下がっていることもわかった。
 それから数分、いや数十分だろうか。数百枚の写真を眺めて、ヘトヘトになって帰宅した。
「行ったの? 教えてよ、向こうで待ち合わせればよかった」
 エプロンを外しながら立川紀里夫が、私を引き寄せた。手慣れたしぐさでキスを交わす。
「どうだった?」
「ドキドキしちゃったわ」
 それは緊縛写真という世界だけではなく、受付にいた美少年の印象にもだったが、後者について紀里夫に言う気にはならなかった。
「食事にする? お風呂にする? それともセックスする?」
 彼の冗談。
「お風呂でセックスしてから食事」と私。
 それも私の冗談であり、本気でもあった。
「いいですよ。そうしましょう」
 私たちは新婚ではない。付き合いはじめて十年ほどになる。同棲三年目。
 ふと、あの写真集のタイトル「2011-2019」を思い出す。ほぼ同じ期間だ。
 服を脱ぎ捨てると、先に風呂に入った。
 すぐに彼も入ってきた。
 十年前。彼は成人になりかけていた。私はすでに仕事をしていた。あの出会いと、今日の受付の美少年との出会いは、よく似たドキドキだ。
 紀里夫の体は美しい。最初に出会ったときに動揺するほど理想的な男と感じた。言葉をかけるのもおこがましいほど。そんなこちらの動揺をわかっているのか、彼から声をかけてくれた。
「写真に興味、おありですか?」
 違ったかな。
 そんなような言葉だった。
 体を洗って浴槽に入る。このマンションはかなり高い賃貸物件で、私のような低収入な者はとても住めないのだが、オーナーは父親なので管理費程度で住めている。
 なんといってもガラス張りの浴室は素晴らしく、大きすぎるバスタブは足を伸ばしてしまうと、頭まで沈んでしまうほどだ。
 適当に洗った彼がすぐに横に入ってくる。
 見上げると彼は私の首に手を回して、キスをしてきた。

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今日のSMシーン
【VR】恥辱BEST 尊厳無視された 徹底的に理不尽な辱めの果てに…6名
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テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

小説 官能アドレセンス 2 彼が上手なのか。私が淫らなのか。

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 そのまま二人とも湯に沈む。
 これを最初にやったのは私だったので、やり返されても文句は言えない。
 かなり長くなり、息が続かない。目を開くと、彼も湯の中で目を開けていた。
「ぷふぁああああ」
 私は彼を押しのけて上体を起こす。
「笑わせないでよ、もう」
「ごめんごめん」
 少し湯を飲んでしまい、縁に顎をのせて呼吸を整えていると、彼が背後からごく自然に股間に手を伸ばし、体を密着させてきた。
 彼は準備が整っていて、私のコンディションを指先で確認している。
「熱いよ、大空」
 興奮している。
「写真展のせいかな?」
「違う」と一応、拒否する。
 そうなのか、と思ったからだ。
 彼とよくやっているこのことと、あれが結びつくとは、気づかなかった。
 とたんに、受付の美少年との出会いが、いけないことに思えた。
 自分の仕事場で写真集を見入ってしまい、そこにはさまれていたチラシを見て、帰宅前に写真展を見に行ったのだが、すべては、女の体に組み込まれた衝動のせいなのか。
 そんな衝動を味わったことがないので、信じがたい。
 お風呂とセックスを両方選択できたのも、同じ衝動なのか。似て非なるものなのか。それを知ってどうする。
 知ってどうする……。
「ふっ」と彼が息を吹きかけながら入ってきた。熱い。湯よりも熱い。この三年、数え切れないほど体を合わせてきたのに、飽きることはなかった。
 彼が上手なのか。私が淫らなのか。
 少なくとも彼の前では、私も素直になれた。
 学生の頃から数人の男と付き合ってきて、エッチなことも一通り経験しているものの、ここまでのめり込めて、恥ずかしくないのは彼が初めてだった。
 心が通じた気がしたのは彼がはじめてだった。
 それに、経験で私も少し進歩したのかもしれないし、彼が手慣れていて扱いが上手だったのか。
 年下の男は彼がはじめてだった。
 そのせいかもしれない。
 彼に押されるように促されて、つながったままバスタブから出た。これって、恥ずかしい行為。誰かに見られたら耐えられない。だけど彼とならできる。恥ずかしくないわけではないが、できる。
 犬のように彼に背後から突かれていると、まぶたの裏に苦しい姿勢で縛られた女の姿が浮かんだ。
 彼女はあれでエクスタシーを感じるのだろうか。そんなことがあるだろうか。苦しいだけだろうに……。
「はあ、はあ」
 二人で夏の犬ように荒い息をしながら、つながる。
 写真から発散されていた濃厚なエロスを浴びて、私は発情した。
 認めてしまおう。その方が楽だし、体の中に秘めた衝動が、それに呼応しているから。
 あの緊縛写真によって、いま私は発情している。
「あああっ」
 ちょっと獣っぽい声を出してみる。出てしまう。衝動の叫び。
「久しぶりだね、大空があんな声出すの」
 裸のまま食卓についた。
 つまらなそうな顔をなんとか作る。女は衝動で生きているから、獣のように叫ぶのさ、と心でつぶやく。
 ニヤリと彼が口元を崩したので、通じたのかと思った。
 彼が用意していたのは、野菜スープと野菜サラダと鶏の胸肉の蒸し料理だった。彼は白米や食パンを嫌っていた。このところ、胸肉をどうおいしく食べるか、チャレンジし続けている。
「なに、この香り」
「ああ、それはね、ローズマリーと……」
 香草とスパイス、そして黒糖かなにか私の知らないものでやさしい甘みを加えている。
 一緒に暮らすようになって、お互いにプロテインは飲んでいないものの、サプリメントを飲んだり、健康をすごく気にしはじめた。
 信じること。通じること。つながること。それはいまをもっと先へ引き伸ばしたい欲望だった。
 彼の目の届かないランチや飲み会などで、チャーハンやクッパ、カレーライスはもちろん、グラタン、ローストビーフ、餃子などを食べている私は、彼が期待するほど痩せてはいない。
 下腹には脂肪がつき、太ももはむっちり。お尻が大きく、胸は肩幅の割りに小さい。
 オバサンっぽい体型。
 いや、私はオバサンなのだ。
 彼は三歳下でまだギリギリ二十代。ムキムキではないものの、腹筋もちゃと見える。
 これでカメラマンなのだ。モテモテだろうと思うのだが、なぜか物撮り専門なのだ。かわいい女子とか撮ればいいのに。ブツドリはカメラマンにとって貴重な収入源だ。とはいえ、専門でやりたい人は少ないのではないか。
 三十個の腕時計を三パターンずつ完璧に撮影する。それのデータをパソコンで現像し、九十カットを丁寧に違和感のない色調に揃えていく。
「ガラスとかあるやつは、けっこう面倒なんだよ」
 彼は楽しそうに愚痴を言う。ぜんぜん、面倒そうじゃないから、きっと気に入っている仕事なのだろう。
 それでも、もしもっと自分の作品を作って、それが売れてくれたら、と願うこともある。
 年下の彼は、売れたら私を捨てるだろう。
 それも含めての願望だ。
 いや、衝動だ。
 最初に彼と出会ってから、私は彼になら捨てられたいと思った。その気持ちはいまも変わらない。
「芳純(ほうじゅん)、川北芳純と会った?」
「たぶん、会ってない」
「そうか。残念。すっごくきれいなヤツなんだよ」
 彼の言い方にひっかかる。男に対して男が「きれい」と表現することは希だ。
 まさか、あの美少年が? 女を縛って写真を撮る?
「ああいう変態っぽいことばっかりしてるんだけどね。写真学校の同期」
 紀里夫と同期なら、芳純はあの美少年よりはわずかに老けているはずだ。それに私の中ではあの美少年はそういう人じゃないほうがうれしい。
「会社の住所を教えたの?」
「うん。いけなかった? 出版関係者だから、彼も喜ぶと思ったんだよ」
 ありがとう、と言うべきか。
 素直な気持ちにはなれなかった。
 横溢するエロスに圧倒されて、名刺を置いてくるのも忘れ、逃げるように帰ってきてしまった。
「明日もやってるから、紹介しようか?」
「なぜ?」
 思わずそう答えていた。紀里夫の気持ちがわからない。緊縛師で写真家の芳純を私に紹介して、どうしようというのか。
「友達なんだ」

(協力:エピキュリアン ニップルデンジャー



★共用淫虐妻・千春★

DLSiteのみで販売しています。小説『十二階』一部、二部を改題・改稿した作品です。
十二階に住む達也に頼まれ、千春の調教を引き受ける。彼女の奥底にある危ういまでの被虐性を知り、厳しい調教を行う。さらに達也の提案でマンション全体の「共用」として千春を住人に貸し出す。特殊なペットとして改造にも踏み出す。語り手の調教役を男性にし、一部の表現を変更。ストーリーは小説『十二階』一部、二部と同じです。



★小説『十二階』第一部★
十二階第一部
DMM.R18でのみ販売中。とあるマンションで人妻を徹底調教する。千春は夫の決断で同じマンションに住む敏恵に調教を委託することになった。激しくも甘美な調教で、昼夜を問わず若妻は被虐にどっぷりと染まる。



★小説『十二階』第二部★
十二階第一部

DMM.R18でのみ販売中。調教はマンションぐるみとなり、千春には衣服もプライバシーもなくなってしまう。住人に貸し出される人妻は、さらに苛烈な運命が待っていた。



エピキュリアン1


今日のSMシーン
拷虐の潜入隷嬢 Episode-1:素顔が暴かれた瞬間に女はイキ狂う 森沢かな
拷虐の潜入隷嬢 Episode-1:素顔が暴かれた瞬間に女はイキ狂う 森沢かな




テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

小説 官能アドレセンス 3 なんか、いい関係ですねえ

前回はこちらへ

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 そういえば、紀里夫に友達がいることさえ、知らなかった。彼は少なくとも同棲をはじめてからひとりで遊びに行くことはなかった。仕事や打ち合わせの外出はウソではないと信じていた。
「ぼくも何年も会ってないんだけどね」
「ふーん。いいわよ」
 もう一度あの場所へ行ってみて、紀里夫と一緒に見れば、もう少し客観的に写真を眺めることができるかもしれない。芳純という男と話をすれば、いま感じているモヤモヤしたものは解消されるかもしれない。
 美少年が芳純ではないことを確かめたい。
 紀里夫と私の間に共通の友人がいないことは、すがすがしくもあり、不安でもあったのだ。芳純を通して紀里夫の側面を知ることができれば、私は素直にうれしい。うれしいかもしれない。
 側面といえば、余計なお世話かもしれないが、緊縛師のモデルになっている女性たちに、モヤモヤしたものを感じてもいた。仕事とはいえ、手足の自由を奪われ、薄い服のままだったり、全裸にされてしまう。なにをされても逃げられない状況に、自分から飛び込むのはなぜなのだろう……。
 怖くないのだろうか。危険ではないのだろうか。
 あんな格好をさせられたら……。
 とても受け入れられない。紀里夫がもし、私を縛ると言ったら大喧嘩になるだろう。そういう人に彼にはなって欲しくない。料理が上手でセックスの上手なかっこいい彼でいてくれればそれでいい。ほかになにを求めるというのだろう。
 そもそも私のような三十過ぎの贅肉のついた、体の硬い女には縄は似合わない。紀里夫もそれは知っているはずだ。
 あれはちょっとエロい女子にこそ似合うものだろう。もしくは、舞踏家のように鍛え上げた肉体にこそふさわしいのではないか。ふんわりとしたとらえどころのない女体を固定化するための縄。もしくは強靱な肉体を押し殺すための縄。ほかになにかあるだろうか。
 翌日、残業をせずにオフィスを出て、写真展の会場前で紀里夫と待ち合わせた。
 もうすぐ夏なのだ。夜が明るく、風が甘い。渋谷界隈は、大勢の人たちが暖かい夜を楽しんでいた。
「お待たせ」
 彼は約束の時間に遅れたことはない。はじめて会ってからずっとだ。驚異的なことだと思う。その心地よさに私はすっかり馴らされてしまっていた。
 女をダメにする男かもしれない。
「彼、来てるって」
 彼、つまり緊縛師、芳純。あの彼だろうか。だったら私は挨拶さえもぎこちなくなりそうだ。
 エレベーターは私たちだけだった。微かに紀里夫から濃い目のオーデコロンを感じた。いつもとは違うスパイシーな香りだ。
 彼は私のプレゼントしたオーデコロン以外に自分の趣味でときどき、新しい香りを手に入れる。それは「次はこういう感じがいい」と意思表示しているのか、それともなにか別の意図があるのだろうか。
 私が気づくに決まっているのに。
 お互い、こういうことを話し合ったことはなかったし、たぶん、これからもしないだろう。
 受付にいたのは、昨日の男ではなかった。紀里夫の同級生として、年相応だ。少しホッとするものの、芳純もなかなかの美形で、女性的でさえあった。
「はじめまして」
 なまめかしい言葉遣い。体も細い。ヨガでもやりそうな黒いズボンに黒い長袖のシャツ。長い髪をまとめている。
「彼女、昨日も来たそうですよ」と紀里夫。
「ありがとうございます」
 お互いの圧を減らそうとするかのように、私に対してちょっと体を斜めにする。その結果、紀里夫と正面に向き合う。
「元気そうだね」と声をかけられ、紀里夫はニコニコしながらうなずいた。
「なんとかね」
「こいつはね」と芳純は私に顔の半分だけ向ける。「メンタルがめちゃくちゃ弱いヤツなんで、大空さんと出会えてほんとによかったと思いますよ」
 私のことを紀里夫は芳純にどう話しているのだろう。
「結婚、しちゃえばいいのに」
「いやあ」
 紀里夫はただニコニコしている。結婚はしてくれないのかな。私はしてもいいのに。この年齢になると妊娠がだんだん大ごとになっていくから、子供を作るならいますぐにでもそっちに切り替えてもいい。子作りは人生の仕事だから、いまやっている仕事を犠牲にしてもかまわない。
「相変わらず、優柔不断だね。ま、それが紀里夫のいいところでもあるから」
 優柔不断のどこがいいのか。ツッコミたくなるものの、まだ芳純という人とそこまでわかりあっていない。
 若い男性と同棲している、少しキツイ女、みたいなイメージを避けたくてただ微笑むしかない。こういうとき、いつも頭を「父兄会」という文字が横切る。紀里夫は私の男。私の子ではない。私は母ではない。もし母性で紀里夫を愛していたら、近親相姦になってしまう。
「いらっしゃいませ」
 会場から出てきた男が声をかけてきた。
 あの美少年だった。
 膝から力が抜けそうになり、一歩、下がって誤魔化す。靴の具合が悪い、みたいなしぐさ。
 その男子は今日も輝くばかりに美しかった。透き通った白い肌。ピンクの唇。化粧もなにもしていないだろうに、こんなに美しく艶やかでいられるとしたら奇跡だ。
「紀里夫、久しぶりだよね。弟の芳清(ほうせい)」
 あらためて私たちは挨拶を交わす。
「こちらは紀里夫の彼女の森山大空さん。大空って書いてソラって読ませるんだ」
「素敵ですね」
「同棲、何年目だっけ?」
 知っているはずなのに芳純はあえてそんな話題をふる。
「三年ぐらいかな」と紀里夫が爽やかに答える。
「へえ。結婚、されないんですか?」
 弟。兄に似ている。芳純もいまの弟の年齢だった頃、このように性別を越えた美しさを放っていたのかもしれない。
 いろいろなものを経験し、見たくないものを見てしまった兄に比べて、弟の瞳はキラキラ輝いていた。彼のこれからの成長をすべて見たい、と一瞬思い、同時にそれはどうでもいいことではないかと退ける自分もいた。私とは関係のない人たち。
 だけど、芳清を傷つけたくない、と強く思う。
「どうだろう」と紀里夫は謎めいた笑みを浮かべて私を見る。
「どうかしら」と私も答える。
「なんか、いい関係ですねえ」と芳清はスワロフスキーのように輝く。
 下半身にしっかり力を入れないと倒れそうだ。
「芳清君も?」と紀里夫は会場を指さす。
 緊縛師なのか、という意味だろうか。
「いやいや」と兄が答える。「こいつはこれですよ」とギターを鳴らす仕草をした。
「へえ。すごいね」
「バンドやってます。見に来てください」
 抜け目なく、受付に置かせてもらっているらしいフライヤーを私たちに配る。新宿のライブハウスの告知。
「このxzoses(エクゾッセス)ってのが、こいつのバンドなの。ロックだよね。ちょっと前の西海岸風だっけ?」
「そういう曲もあります。メロディー重視でコーラスもがんばってますから、ロックでも聴きやすい方だと思いますよ」
「ま、古くさいわけだ」と兄に言われて「そんなことないですよ」とむくれる。
 かわいい。
 紀里夫、芳純、芳清と、私にとって美しいと思える男たちに囲まれたのに、芳清はダントツのセンターだ。
 彼に抱かれる女は幸せだろうな。そしてものすごく不幸でもある。
 私もときどき、不幸な女に憧れている。たとえば太宰治の女たちは、それぞれにきっと幸せだったに違いない。不幸であるはずはない。それでも、不幸なのだ。不幸でいるから幸せなのだ。

(協力:エピキュリアン ボンデージ3点セット



★縄味1★


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若き人妻は「なわみ」というハンドルネームで緊縛写真をネットで見るようになり、写真展に立ち寄ります。そこでカメラマンにモデルに誘われる。顔出しNGで緊縛モデルのテスト撮影をしたところ、唯一顔の写っていた写真がネットに流出。義兄の目に止まってしまう。



★縄味2★


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「縄奴隷なわみ」として義兄に脅され恥辱にまみれたデビューを強要される。野外での撮影会で人妻奴隷の限界を超えてしまい、残酷なショーに出演することに。哀しくも完全奴隷化されていく。



エピキュリアン1


今日のSMシーン
小悪魔女王蹂躙地獄 Episode-4:圧倒的な拷虐に陥落する覇者は痙攣の哀歌を奏でる 新村あかり
小悪魔女王蹂躙地獄 Episode-4:圧倒的な拷虐に陥落する覇者は痙攣の哀歌を奏でる 新村あかり



テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

小説 官能アドレセンス 4 女の衝動を感じて

前回はこちらへ

「おはようございまーす!」
 甘い声がエレベーターホールから響く。
「うわあ、お花、いっぱい来てますね!」
 ドキッとするほど短いミニスカートからナマ足を惜しげもなく晒し、胸の谷間が見える赤いトップスを合わせた女性がやってきた。化粧が濃い。そばかすの散る白い胸にスパンコールが光る。
 甘い香りが彼女から漂ってくる。風呂上がりにお気に入りの香りを身にまとっている全裸の彼女を想像できてしまう。いやらしい女。
「やあ。お疲れ様。アキちゃんにいっぱい花が届いているよ。会場にも飾っている」
 芳純が、彼女を私たちに向き合わせる。
「波野亜希江さん。今回のモデルをしてくれたんだ」
「よろしくお願いします。女優をやっています。波野亜希江です。アキちゃんと呼んでください。でも、みんなナミスケって呼ぶんです。ひどいですよね」
 若い。
 化粧が濃いので最初は気づかなかったが、彼女はまだ十代ではないか。小柄で、まさにお人形さん。アイドルっぽい。
 この子があの緊縛の……。
 それは芳清の美しさに次ぐ衝撃だった。写真展の映像ではもっと年上の女性に見えたのだ。
「ナミスケのスケは、スケベのスケだよ」と芳純が笑う。
「えー、やだー」
 思わず芳清を見ると、いやな顔をしていた。兄のそういうところが芳清は好きではないのかもしれない。弟の熱中している音楽を、ギターをかき鳴らす仕草だけで片付けた兄。
 兄弟の確執は、姉妹の確執とはまた違うのだろうが、いずれにせよ、ただ「仲がいい」では済まないものを抱えていたりする。
「芳清君、来てたんだ」と彼女ははにかむ。
 それが彼女の普通の態度なのか。
 男をドキドキさせる悪い女の仕草を、彼女はすべて身につけているようだ。そんな風にできる女性を嫌悪しつつ、自分にはないものを過剰に持っている彼女の不幸を祈る。芳清、こんな女に捕まったらダメよ。
「先生、今度、週刊ガンボにグラビアが載るんです」
 彼女はすぐさま芳純に切り替える。
「へえ、よかったね。誰が撮ったの?」
「松井さん」
「え、あの? すごいじゃん。巨匠じゃん」
 彼女は兄が「巨匠」と評したカメラマンに自分はモデルとして選ばれたことを、弟の芳清に伝えたかったらしい。芳清がちゃんと聞いているか、チラッと確認する。
 芳清はさきほど一瞬見せた嫌な顔ではなく、受付に立っている時の当たり障りのない表情に戻っている。
 そのまま芳純は彼女を連れて受付の奥にあるドアを開ける。控室につながっているようだ。
「じゃあ、ここで」と紀里夫。
「うん。ありがとう。今度」と酒を飲む仕草をする芳純。彼女に気遣っているようだが、その和んだ表情には、私も一瞬、笑顔になった。
 私もその場にいていいですか? 思わず女の衝動を感じていた。
 この兄弟はなかなかの女殺しだ。

「よく、行く気になったね」
 翌週の金曜日、私たちは新宿にいた。
「興味あるじゃない?」
「音楽はそれほど……」
 紀里夫は私のわがままに付き合う。遅刻しないのと同様、これもずっと続いていて、本当にありがたいと思う。こんな男、滅多にいないから。
 私のプレゼントした香りを使っているし。
「そういえば、初めてかも。一緒にライブとかって」
「うん。初めて」
 そう言って、彼は紐でつながったイヤホンのような黒い耳栓をくれた。
「マジで?」
「うん。鼓膜が弱いから」
 彼は自分用のものを耳に入れている。
「あの、バーンってのがいいのよ」
「よくないよ」
 日常とはまったく異なる音の空間をはじめて体験したのは、中○生の頃だった。その頃付き合っていた高○生に誘われてダブルかトリプルのデートで行った野外のライブ。高校生や大学生のアマチュア主体で、司会者はテレビでも知られている人だったが、そこで演奏される曲も歌も、なにひとつ知らないものばかりだったのに、私にとっては強烈な体験だった。
 音楽ってスゲエな、と。
 それから吹奏楽をやっている友人から、「ギターなら簡単だよ、3ヵ月で弾けるよ」と言われて少しギターを教わったりしたものの自分には舞台に立つ側の素養がゼロと気づき、もっぱら応援する側に回った。
 学生時代は同級生たちの参加している大人数のバンドの手伝いもした。みんなでマイクロバスに乗って他県に演奏しに行くのに同行した。女子ばかりのバンドだったが、ホーンセクションも入って派手でカッコよかった。ギターの練習はしなくなったが、チューニングと弦の張り替えはできるようになった。ドラムセットの組み立てもできるようになった。
 世の中には歌謡曲以外にジャズやロックやR&Bやソウルがあることを知ることは楽しかった。
 その体験を文章で表現するしかないと感じて、作文コンクールに出したら、そこそこの賞を貰い、自分は作家になれるかもしれない、いや、エッセイストか、と勘違いした。
 その結果がいまだ。
 音楽ってスゲエからはじまって、地味な出版社の編集者に至る。
 そのことを彼はまったく知らない。そういえば、そんな話をすることもなかったかもしれない。私も彼の過去を知らない。物撮り専門カメラマンになる前に、なにをしていたんだろう……。
 だから、過去を知っているらしい友人たちに紹介されてうれしかった。
「大空もやったほうがいいよ」
 お言葉に甘えて耳栓をして、重い扉を開け会場に入った。
「聞こえるだろ?」
「ええ」
 会話はできる。
 音も耳に痛いほどではない。かといって迫力がないわけでもない。足元から伝わる重低音は、私の魂を震わせる。これこれ。
 最初、バンドが違うのかと思った。芳清が見当たらないからだ。
 しかし、それは、xzosesだった。芳清は後ろを向いて弾いている。舞台の上手の端っこで。
 曲によってそういう演出なのかと思ったが、いつまでたっても前にも中央にも来ない。
 うつむいて、ただギターを鳴らしている。
 耳栓をしていても、彼のギターは聞き分けられた。バンドはギターが3人、うち1人がメインボーカル。ベースとドラムスは連んでいて、大人しい曲なのに難しくて激しいリズムを叩き出している。
 そのグルーブ感に客たちは酔っている。
 3人もギターがいるのに、ギターソロはない。リードギターらしき音がしない。みんなでかき鳴らしている。
 そして何曲か、おとなしめの曲ではコーラスも聴かせる。ギターはよく響くのに、彼の歌声はよくわからない。裏声がそれだろうか。
 昔のロックのようだが、ビートルズとはかなり違い、カントリーのようなメロディーだ。とくにギターの1人がボトルネックを指につけてブルース調の曲をやると、泥臭くなる。
 西海岸な感じはあまりない。



★隷獣 郁美モノローグ版★
隷獣
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女子大生がケモノとして飼育される 山ガールを楽しんでいた郁美は、同級生の有希恵に「隷獣」としての素質を見出され、山小屋でケモノに堕ちるための調教を受けるのだった……。伝奇SM小説『隷獣』は、郁美のモノローグに書き改められ、ブログにはない結末が追加されています。


★妹は鬼畜系★
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義理の妹に調教される兄「ぼく」。義妹のケイに、さらに義母に調教される。男の娘として男性たちのオモチャに、トーチャー・クラブの生け贄として拷問へとエスカレートしていく。コメディ要素あり。


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妻が他人に抱かれてる…。 ~ねとりネトラレ寝取らせて~ 神宮寺ナオ
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小説 官能アドレセンス 5 少しお話をしたいな、お姉さんと

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 いずれにせよ、日本の新宿でいま彼らが演奏している曲は、彼らだけのもので、この場所だから響くのだ。
 オリジナリティはありそうだし、コアなファンもかなりいるので、私がそれほど楽しめないにせよバンドとしての存在感はしっかりと感じられる。
 楽しめないのは、耳栓のせいだろうか。
 いや、芳清のせいだ。
 てっきり、ステージの中央付近で、バーンときれいにギターを響かせるのかと思ったのに、ぜんぜんそうしないからだ。
 彼ももどかしく、音楽ももどかしかった。私の好きな展開になるのかと思えばならない。繰り返しで盛り上がるのかと思えば、繰り返すばかり。
 足元を見ているのはエフェクターやボリュームペダルを見ているからだ。
 拍手や歓声の中、アンコールはなく、全員が手をつないで一礼する。はじめて芳清の顔が見えた。笑っていた。汗で光っていた。
 その姿にホッとした。彼は満足しているようだから。
 楽屋へ行くと、狭い中で大混雑していた。ああ、この雰囲気。複数のバンドが行き交って、似たような機材がゴロゴロしている。年中、Tシャツの人がいる。
 ちょっと手伝ってあげたい気分にもなる。
 耳栓を外すと、ナマの野蛮な音が耳を襲う。
 確かに一定の効果はあったようで、長時間大きな音を耳に受けたあとに起こりがちな不快さはない。
「ありがとう、よかったわ」と紀里夫の背中に手をやって礼を言う。彼の背中はじとっと汗ばんでいた。紀里夫が私をぎゅっと抱き寄せた。イケメンが大勢いる楽屋だ。きれいに化粧をしたバンドもいる。
 そこに、地味な服装の女性が花束を抱えて入ってくる。濃いグレーの古風なデザインのワンピース。ウエストは高めで、大きなプリーツが入って裾まで滑らかな陰影を描く。
 紀里夫が肘で私を小突く。
「彼女だ」
「えっ?」
 私は会社で使っているメガネをすべきだったと後悔する。ライブハウスに来るためにコンタクトにしたのだが、いまいち合っていないようだった。
 波野亜希江。
「ナミスケ……」
「よせよ」と彼。
 もちろん、そんなあだ名で彼女を呼ぶつもりはない。
 先日会った時は高級娼婦のように見えたが、今日は厳格なお嬢様学校の生徒のようだ。胸元に黒いレースの飾り。エリの先は丸い。
「芳清!」と彼女は、私たちより先に彼を見つけて花束を渡す。
「ありがとう」
 芳清はすがすがしい笑顔でそれを受け取る。バンド仲間は彼女を知っているらしく、軽く挨拶している。
 親しげな空間。
 私はもう帰りたかったが、紀里夫に引っ張られてその空間に割り込んだ。
「ああ! 来てくれたんですね!」
 芳清は花束をギターケースの上に置くと、私たちのところに素早くやってきてくれた。
「最初から見てくれました?」
 紀里夫が「もちろん」と答える。「かっこよかったよ」
 はにかむ芳清は、私が心配になるほど亜希江を放り出し、私たちに対応してくれる。
「このあと近くで軽く飲むんですけど、いかがですか?」
「いいね」
「遠慮しておくわ」
 紀里夫と私は同時に反対の返事をしていた。
 すると、いつの間にか私のすぐ後ろにいた亜希江が、「少しならいいでしょ? ちょっとだけ」と馴れ馴れしく私の腕に指を添えた。
「えっ?」
 眉間に皺が寄ったのではないか。
 汚いものに触られたような気がして、その細い指をはたき落としてしまいそうになっていた。
 どうすれば、これほど変わることができるのだろう。どこからどう見ても清純な女子にしか見えない。
「少しお話をしたいな、お姉さんと」
 ナミスケの神通力は、男だけに通用するものではないらしく、その上手な甘え方に私までも溶けそうだった。こんな妹がいたら……。
 いや、吐き気がするほどネコをかぶる女ではないか。恐ろしい。
「行こう」
 珍しく紀里夫は素早く決め、ギターを担ぎ、エフェクター類をのせたキャリーを引っ張る芳清と親しげに話をしながら先へ行く。
 もたれかかるというわけではないものの、同伴で出勤しようとするちょっとレベルの低いホステスみたいな風情で、亜希江は私の腕に手を添えたまま一緒に歩きはじめる。
「あのう、大空さんて、すてきな名前ですよね」
「ありがとう」と答えた声が、自分の思っていた以上にオバサンで、彼女といると劇的に老けた気がした。
 同伴ではない。介護だ。
 私は自分一人で歩ける、と振り切ってやりたくなる。
 てっきりゴールデン街の方へ行くのかと思っていたら、職安通りを渡って新大久保方面に歩いていく。最近、来ていなかったので気づかなかったのだが、細い路地に面して古い街並みのあった一角が再開発されており、テラス席のあるオシャレなカフェも入っている建物が出来ていた。
 周辺は韓国料理の店や雑貨、古着などの店が並ぶものの、夜は見せたくない部分を隠してしまい、ほどよい賑やかさに感じられた。
「ここ」
 建物の端にある小さな扉だけの店。ほかが派手な電飾などに照らされているのに、ここは薄暗い。店名もわからないまま、続いて入ってしまった。
 中は奥が広くなっており、こじんまりとしたレストランだった。籐のテーブルやイスが並ぶ光景は、東南アジアのホテルのような雰囲気もある。
 芳清は、外国人らしい店員にメニューを示しながらどんどん頼む。
 あとからバンドのメンバーたちもやってきて、テーブル2つをくっつける。見慣れない人たちも一緒で、バンドの関係者なのかファンなのかもわからないが、いっきに静かだった店は賑やかになった。
「飲み物は?」と芳清に聞かれ、迷っていると「これがいいよ」と紀里夫はメニューの中から「メコン」を指さす。「おいしいよ」
 私はうなずく。すると横に座った亜希江も「私も!」と叫ぶ。
「メコンのソーダ割りを3つ」と紀里夫。
 ほかにも各自、変わったビールやカクテルなどを頼んでいると、スパイシーな香りのする料理が運ばれてくる。
「ここは、なんでもありの店なんで。フィリピン、タイ、インドネシアみたいな感じの料理が出ます」
 芳清は自分たちの舞台のときにはあんなに目立たなかったのに、いまは完全に仕切っていた。
「じゃあ、カンパーイ!」と勝手に音頭を取ってみんなで乾杯する。
 芳清を観察したい私としては、じっと黙って聞き耳を澄ませて、いろいろな情報を収集しようと構えていた。
 隣りの亜希江の存在だけが、妙に気になって、鬱陶しい。
 こちらは一片の興味もない相手なのに、なぜか向こうはこちらに多大な関心を寄せている。
 それを隠そうともしない。
「これもおいしいですよ!」と彼女は、大皿に盛られたアボカドかなにかの料理を取り皿によそって私に寄こす。
「ありがとう」



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少しドジなお嬢様・丸木戸恵梨香(20歳)がマゾの衝動にかられてじわじわと屈辱的な「ドMのゴキ」となっていきます。ブログ公開版に未発表の2エピソード追加。



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お嬢様として育てられた恵梨香は、M性に目覚め執事の息子の遠隔調教を受けることに。執事夫妻、代理として屋敷に入り込んだ男、巨根の運転手、そして調教のプロたちから日夜、心身の限界まで責められていく。さらに大学の友人たち、婿候補の子息たちにも……。 未公表部分追加。


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