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荒縄工房短編集 1 別れの儀式(1)

★こんにちは、あんぷらぐ(荒縄工房)です。これまで主に長編の連載を中心にしてきた荒縄工房ですが、今期から短編の書き下ろしをはじめます。すでに「許諾ください」の後日談を短編で「奈々恵の百日」としてスタートしていますが、今回から「荒縄工房短編集」として、いずれ短編集に入れるであろう作品の書き下ろしもしていきます。こちらは毎回、登場人物もシチュエーションも表現のスタイルも異なる1話完結形式。1話は1万字以内で、だいたい3回の連載で完結します。内容はこれまでのようにSM小説およびSM周辺の話、性愛の周辺の話などです。お楽しみに。

 美奈は窓の向こうに沈んでいく夕日を見ていた。もう一年にもなる。というのも、やや西を向いたこのマンションの部屋から、まともに夕日が見えるのは冬至の頃だけなのだ。
 去年はクリスマスを絹恵と一緒に過ごしたいばっかりに、この部屋に誘われるがままに泊まりに来たのだった。
「痛いっ!」
 わき腹を絹恵にガブッと噛まれた。反射的に体や腕に力が入ると、拘束具のアソビが少し拡大したような気がして、美奈は自ら動きを止める。
「痛いです」
 一年前。クリスマスツリーにしてあげようね、と絹恵が言い、居間の壁に頑丈な磔台が運び込まれたときも、好奇と喜びで迎え入れた。
 それから毎日のように、そこに磔にされてきた。目隠しをされることもあるし、猿ぐつわをされたり、頭をすっぽり覆うゴムマスクを被らされたり、首を絞められたり、鼻フックで泣かされたりした。
 磔台の組み立ても手入れも奴隷の美奈がずっとしてきた。組み立てるときに使い慣れていない電動ドライバーでネジを回転させすぎたのか、最初からいろいろなパーツがちょっと頼りない状態だった。
 しかし、そこに磔にされるのはいつも美奈自身なので、壊してしまわないように加減して扱ってきた。
 この磔台が壊れたら、絹恵との関係も壊れそうで怖かった。
 だいたい、これまでは美奈が音を上げると絹恵はすぐに許していた。SMプレイを求める美奈だったが、痛いのは苦手なのだ。
 それが最近、「痛い」と言ってもなかなか許さない。意地悪くなった。その原因は美奈にも心当たりはある。
 いまも、しっかりと歯型が残るまで深く噛んで離さない絹恵の執着に恐怖を感じつつ、哀れにも思えた。
「ね、お願い。仕事でなにがあったか知らないけど、そんなに強く噛まないで」
 ハアッと息を吐きながら、やっと絹恵が離れる。唾液がべったりとついた肌。でこぼこした歯型を指先でなぞる。その表情は無だ。
「生意気になってきたじゃないの、奴隷のくせに」と絹恵は取り繕うように言う。
 確かに、彼女に請われるままに美奈は奴隷誓約書を自分でプリントアウトし、サインした。それもプレイの一つだからだ。お互いに大人のオンナとして、そうしたことをすべて了解した上で同棲し、プレイしてきたつもりだった。
「かわいいわ」
 絹恵はキスが上手だ、と美奈は痛みを忘れてうっとりする。
 それも最近は、以前ほど長くはしてくれない。ご褒美は少なく。痛みは大きくなるばかり。美奈はそれが不満だった。
 磔台から解放された美奈は、戸惑っていた。いつものようにベッドへ行くのかと思ったのに、絹恵はキッチンに行ってビールを飲み始めたのだ。
 全裸のまま、美奈は所在なげに消えていく夕日を感じながら、わき腹の歯型を見る。絹恵がなにかを自分に残したいと思っているのだろうか。
「美奈」と暗い声がした。
「本当に出ていくつもり?」
 別れを切り出したのは絹恵だったはずだ。奴隷誓約書はプレイの一つではあったが、美奈はそれにサインしたときにすべてを絹恵に委ねたつもりだった。
 別れる、と絹恵が言い出したとき、それは戸惑いでしかなかった。
「田舎に帰らなくちゃいけなくなったの。母親に認知症が出ちゃって」
 キャリアウーマンとしてそれなりの地位を築いた絹恵。中年の域に達していたが、ペーパー上のバツイチで職場では押し通してきた。性癖を知るものは職場にはいない。彼女が仕事のために似たような動機のゲイと共謀して戸籍を汚したのは、一生、男とは交わらない決意でもあった。
 美奈はその話を聞いて、興味を持ったのだ。絹恵が週末にやってくるバーでアルバイトをしていた美奈は、自身で女性が好きなことを公言していて、マゾ体質だと冗談っぽくしゃべっていた。
「絹恵さんのこと、興味があります」と告白すると、「奴隷になりたい?」と絹恵が持ちかけてきた。
「ソフトなSMなら」と美奈は商売抜きで応じ、何度かSMルームのあるホテルでプレイを重ねた。そして、「飼育してあげようか」と絹恵が言うので、真剣に考えた上で店をやめ、ここで奴隷として暮らしてきた。
 絹恵は忙しかった。帰宅が深夜になることも多く、タクシーで帰ってくることも珍しくなかった。
 絹恵のために、美奈は尽くすと決め、ネットでレシピを眺めては毎日、違う料理に挑戦してきた。掃除もきちんとしていた。さまざまな道具や器具の手入れもだ。
 絹恵がいつまでも、ご主人様として輝いてくれていることを祈っていた。
「ついて行っちゃダメですか?」と絹恵に聞いたこともあった。
「うーん」と絹恵は彼女らしくもなく、煮え切らない笑みを浮かべた。
 うちの田舎はね、ものすごく住みにくいところなの。美奈は都会育ちだからわからないだろうけど、閉鎖的で監視し合う仲だから、お互いの冷蔵庫の中身まで知っているぐらいよ。おまけに唯一の楽しみがお茶を飲んでお菓子を食べながら話すこと。毎日毎日、飽きもせずおしゃべりをするから、すぐネタが尽きる。だけどおしゃべりをしないわけにはいかない。共同体はおしゃべりで維持されているのね。だから自分のことだけじゃなく、親兄弟親戚友達、祖先やとっくに死んでる人、よく知らない人まで話のネタになる。そんなところに私があなたを連れて行ったらどうなると思うの。親の介護どころじゃないわ──。
「八分にされたら生きていけないのよ」
「そんな……」
 江戸時代じゃあるまいし。
 絹恵は大げさなことを言う。だが美奈は納得できない。この一年間、二人の関係は深まるばかりでお互いの間に紙一枚入る隙間もないほど、ぴったりに合わさってきた気がしていた。その充実度はなにものにも替えがたい。美奈の幸福は絹恵の幸福でもあったはずだ。
 親の介護で田舎へ帰る。本当にそれだけが理由なのだろうか。美奈は疑ってしまう。ほかにも理由があるに違いない。美奈に飽きた、美奈とのプレイでは物足りなくなった、田舎にはそもそも彼女が好きな相手がいる……。
 同窓会で昔の恋が再燃する話は、珍しくない。中年となった絹恵にとって、若すぎる美奈よりも同世代のパートナーの方が楽なのではないか。昔話もできるし、もちろん地元の者同士なら、狭い町内でのウワサ話としても、都会から娘ほどの年齢の奴隷を連れて来るよりはずっとマシなのではないか。
 嫉妬に狂いそうになった美奈は、こうなったら自分から別れるしかないと思い詰め、「出て行っていいですか」と先週、絹恵に告げていた。
 この部屋に誰もいなくなるところを見たくない。絹恵が地元に戻るからとタクシーに乗り込む姿を見たくない。冷たく冴えた冬空に白くポツンと浮かぶ機影に気づいて、もしかしたら絹恵が乗っているかもしれない、などと思いたくない。
「ちゃんと行くあてがあるの? もしよかったら、私が引っ越したあとも、しばらくここに住めるようにしてあげようかと思っていたんだけど」
 絹恵がいないのなら、ここで寝たり起きたりできるはずがない。どうして絹恵はいまになって、そんなこともわからないフリをするのだろう。
 美奈は憤り、怒り、それでもおかしなことを口走ったりはしない。そもそも、美奈は会話による意思疎通が上手ではない。子供の頃から美奈がしゃべると笑われバカにされてきた。反論されねじ伏せられ無視された。
 言えば言うほど自分が傷つくだけだ。
 言葉は信用できない。美奈はいまも、ときどきそう思う。
 絹恵と上手にさよならを言える気がせず、「出る」と言い張って、そのままケンカ別れして消えてしまいたい。
 ビールを飲んでため息をつく絹恵のシルエットは、どこか祖母に重なった。美奈は、おばあちゃん子だった。母親は水商売で忙しく、恋愛で忙しく、パチンコやギャンブルで忙しかった。
 祖母はあの頃、せいぜい五十代ぐらいだったはずで、まさか六十ほどで急逝するとは思わなかった。
「どうしてこんなになるまで放って置いたんですか」と医者になじられた。救急車で大学病院に運ばれたときには意識もなく、そのまま数日で亡くなった。
 放っておくもなにも、祖母は具合が悪いとか痛いとか一度も言ったことはなく、医者嫌いだった。医者が嫌いなのはお金がかかるからだとあとで知った。祖母は健康保険に入っていなかった。年金にも入っていなかった。
「早く死にたかったんでしょ」と母は火葬場で言ったのだが、本当にそうかもしれない。
 祖母は寂しそうに台所でサッポロのロング缶を飲んでは、それをグシャッと潰すのだった。美奈にはやさしかったが、セールスとか近隣の人とはよく怒鳴り合っていた。
 祖母にはよくパチンコ屋に連れていってもらった。そこには託児所が併設されていて、女性の保育士もいた。帰りには必ずたくさんお菓子を祖母がくれた。母は滅多になにも買ってくれたことはなかった。
 美奈の想像する「実家」とは、その程度のものだった。それは都会で生まれ育ったせいではなく、美奈の家庭の問題だった。
 絹恵はきっと田舎で恵まれた生活をしていたに違いない。だから、美奈のような者を連れて戻るわけにはいかないのではないか。
「介護だったら、私、資格取ります」と美奈が言ったとき、「だめよ。私の母なのよ」と言われた。奴隷なら、なんでもする。美奈はそのつもりでサインをし同棲したのだ。しかし母親の世話はさせられない。頑なな絹恵は、美奈には理解できなかった。
「ねえ、本当に出て行くの?」



★小説「亜由美」第一部★
亜由美第一部

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女子大生となったばかりの亜由美。剛介との出会いから、自らのマゾ願望がいっきに開花。理不尽な辱め、処女喪失、輪姦からはじまってタップリ、被虐を味わうことになります。



★小説『亜由美』第二部★
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メス豚女子大生となった亜由美への本格的な調教が繰り広げられます。大学でも便所でも商店街でも……。苦悶と快楽が彼女の日課になっていきます。


★小説『亜由美』第三部★


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メス豚女子大生・亜由美の完結編。壮絶な輪姦合宿から同じ大学の女子を巻き込んでの拷問実験へ。連載時にはなかったエンディング。


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今日のSMシーン



テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

荒縄工房短編集 2 別れの儀式(2)

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 二本目のビールを開けた絹恵は、冷蔵庫から食べかけのキムチを出して、パックのままテーブルに置く。美奈の仕事を増やすように、絹恵は平気で汚す。これもちょっとしたプレイなのだ。
 コンビニで貰って使っていない割り箸を出し、乾いた音を立てて割ると、水分が増え始めた甘口のキムチを口に運びはじめた。
「お皿、出しましょうか。なにか、作りましょうか?」
「いいの。座りなさいよ」
「はい」
 磔台や道具を片付けると、美奈は絹恵の足元に正座しようとしたが、「あっち」と言われて、向い側のイスに座った。冷たく固い木の座面に尻を浅くのせる。背もたれは使わない。
「飲んでいいのよ」
「はい」
 絹恵は遠慮を嫌う。だから提案は命令と同じと思って、飲みたくなくても飲む。美奈は冷蔵庫からレモンの絵柄の缶チューハイを取り出した。
「いただきます」
 炭酸が強く、開けるといい音がした。
「私のこと、嫌いになった?」
 思いがけない絹恵の言葉に、飲みかけた酒が逆流してむせた。
 口からあふれた冷たい液体が肌を濡らす。
「そうよね。私だってまさか家に戻ることになるなんて思わなかったもの。いまの仕事、定年まで続けるつもりだった。あと十年はいられるはずだったから」
 すでに退職届けは出している。年末に向こうへ行く予定になっていた。
 介護はいつまでなのか。介護が終ったら戻ってくるのか。そんな失礼な質問が頭に浮かんでも、美奈には言葉にすることはできなかった。介護の終わりとは絹恵の親の死を意味していたからだ。
 五年、十年、十五年……。介護の終わりはまったくわからない。
「美奈はまだ若いから、いろいろ楽しいことが待ってるよ」
 他人事のように言う絹恵に、食ってかかることもできない。頭の中にはたくさんの言葉が浮かんでは消えていく。
 絹恵のいない日々なんて興味ない、楽しいはずない、これ以上幸せな時間が持てるわけがない、私はもうそれほど若くはない……。
 年の差があるとはいえ、お互いに一年、歳を取ったのだ。わずか一年、とは美奈自身でも思えない年代になってきた。二十過ぎてからの時間の加速は想像以上だった。
「出て行くなら、なにかしようか。思い出になるようなこと」
 ポツンと絹恵が言葉を置いた。
 美奈はその言葉がテーブルの上にあるかのように、じっと下を向いている。
「だってさあ、美奈はこれからもいい女と出会えるかもしれないでしょ? 私はあり得ない」
「そんなことないよ」
 母親が入居予定の施設には、介護の専門家やリハビリの専門家がいるはずだ。中には絹恵と意気投合する女性がいるかもしれない。いや、必ずいるだろう。
 またしても、美奈は勝手に嫉妬する。
「なにしよっか。これまでしたことのないことがいいよね」
 いつもの絹恵になっている。それは軽いアルコールのせいだろうか。それとも美奈に対する気持ちの昂ぶりによるものだろうか。
 美奈は彼女がまっすぐこちらを見てくれていることに気付いて熱くなった。
 なにもかも忘れること。この一年の素晴らしさは、毎日、夢中でいられたことだ。その最後に、なにをすればいいのだろう。美奈にわかるはずがなかった。
「おいで」
 絹恵が立ち上がる。美奈も立つ。
 さっきやったばかりのことだが、美奈は文句も言わずに裸身を再び磔台の前に立たせる。手足をXの形に伸ばす。絹恵が足首を台にベルトで留める。次に手首。これで美奈は自由を奪われる。
「口を開けて」
 棒状のギャグが美奈の口に。芯は金属でゴムが覆っている。美奈の歯型がついている。そこにぴったり歯を置くように、絹恵が調整する。美奈の首の後ろからベルトを回して側面で締める。
 その上から、スポンジが分厚く裏側に貼りつけられた黒いビニールレザーのマスクを被せていく。
「これで悲鳴も、子猫の鳴声ぐらいになっちゃうわね」
 鼻フック。ぐいっと引き上げられる。
「かわいいブタ鼻。息がしやすくなった?」
 口での呼吸がほぼできないので、鼻呼吸だけが頼りだ。
 これまで何度かここまで厳重にしたことはあったが、今日は意味が違っている。なんといっても別れの儀式なのだ。
「美奈。奴隷のくせに、生意気に自分から出て行くなんて言って。許さないわよ。あんたは私に捨てられるの。捨てる前にしっかり名前を刻んであげる。この先、どんなご主人様に出会ったとしても、必ず私の名前を見ることになるわ」
 本気だろうか。ソフトなSMでは何度か苦痛を受けても、美奈が泣く頃にはベッドに移って甘美な時間へと移っていった。
 絹恵が手にしているのは、手の平ほどのレザーケースだった。美奈は最初はそれがなんだかわからなかった。ファスナーをゆっくりと引いて、手品のようにゆっくりとケースを開ける。それは絹恵が使っている爪の手入れの道具だった。爪を切るニッパーや甘皮を浮かして切り取るプッシャーと呼ばれる細い金属の棒状の道具が入っている。
 ゴムで軽く止まっている道具から、絹恵はプッシャーを引き抜いた。
「これ、わかる?」
 美奈はうなずく。しかし、いまから爪の手入れをするわけがない。大きく見開いた目はいつも以上に怯えている。
「この先端、甘皮を切るための小さなカッターになっているの。よく切れる。ほんとにスーッとよく切れる」
 鋭い先端を美奈の頬にそっと当てる。
 美奈のこもった悲鳴に、絹恵は微笑む。
「美奈のかわいいオッパイの横に、私の名をこれで刻むことにするわ」
 美奈は暴れた。ギシギシと磔台が鳴る。重い木製の台と互い違いになった分厚い板の部分からなり、美奈が直接触れる板はしっかりとビニールレザーでくるまれている。中には薄いがスポンジが入っているので、多少のクッションにはなるが、いまのように美奈が激しく自分の腿や腕を板にぶつけると、もちろんそれだけで痛いし、打ち身や痣ができることもある。
「下書きするわね」
 アイライナーで、絹恵は左の乳房の側面に自分の名を書いてみた。震える美奈の乳房を片手で支えながらだったが、ちゃんと読める。文字の大きさは五百円硬貨ほどもあるだろうか。誰が見ても、その印の意味は瞭然だ。
「こっちもね」
 右の乳房の側面にも書く。
「そうだ、ここもいいかな」
 指先で下腹を撫でると、美奈は失禁した。



★『亜由美 灼熱編』★


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亜由美のその後を追う「外伝」。亜由美が自ら語るパルダ王国へ性奴隷として留学させられた日々。拷問調教での傷を癒すため貨物船に乗せられ、種付けされながら王国へ。そこで待ち受けていたものは……。連載時にはなかったエンディング。



★『亜由美 降臨編』★
ayumi07-100.jpg

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亜由美シリーズ完結編。『一部~三部』『灼熱編』を経た亜由美が帰国。武器を身につけた彼女の復讐がはじまる。『安里咲1、2』の後日談と一体化したストーリーは最後まで目を離すことができない展開です。亜由美と安里咲の有終の美をお楽しみください。


エピキュリアン1


今日のSMシーン
拷問無残6 あずみひな

みひな (あずみひな、永井みひな)

300円~




テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

荒縄工房短編集 3 別れの儀式(3)

前回はこちらへ

「恥ずかしいわね。あとで掃除するのが大変よ。そんなに怖いの?」
 肉体を傷つけるような行為はしたことがなかった。美奈は名を刻まれる恐怖に震え、怯え、暴れた。これほど拒絶しているのに絹恵はやめようとはしない。そのことがさらに美奈を怖がらせていた。未知の世界だ。
「これから美奈は一生、私と一緒。どこで暮らしていても、私の奴隷」
 絹恵はそう言って、塗れた下腹のすぐ上にも、自分の名を書いた。
 数歩下がって、出来映えを確認する。
「いいわねえ、美奈。ステキだわ」
 黒い文字が浮き上がる。文字が息づく。
「じゃ、やるわね」
 消毒液でカッターの刃先を丁寧に拭き取ると、鋭い先端を左の乳房にあてた。
 その時だった。
 激しく暴れた美奈の左手が弾かれたように飛び出し、絹恵の横顔にぶつかった。
 絹恵はそのまま床に崩れた。
 美奈の叫び声は、外の風よりも小さい。
 左手を磔台にくくりつけていたベルトが、完全に外れてしまったのだ。ベルトは四本のネジで磔台に取り付けられていたが、そもそも数本は最初からバカになっていた。そこにもってきて、美奈が激しく暴れたので、とうとう壊れてしまったのだ。
「いったあああ」
 うめきながら立ち上がった絹恵の右の目尻からほお骨にかけてが熱い。そこを右手で押えるとねばねばした血を感じた。
「ああ、ちょっと、これ、痛いわ」
 絹恵はそれでも美奈の残りの手足のベルトを、左手だけで外していった。締め付けるのは両手でも、外すのは片手でできる。遊びの道具として、そうした点だけは考慮されていた。
 自由になると美奈は、急いでマスクと鼻フックとギャグを外した。
「大丈夫?」
「すごく痛い」
「ちょっと見せて」
 絹恵は押さえていた手を浮かせた。
「あっ」
 どうやら左手にまだ残っているベルトから突き出たネジで、ザックリと削ってしまったらしかった。
「これは病院に行かないとダメだわ」
 縫う必要がありそうだった。
 美奈はネットで外科の外来を調べる。
 裸でそんなことをしている美奈を眺めながら、絹恵は痛みを忘れ微笑んでいた。

 明日が、今年最後のゴミの収集日だった。
 管理人から借りた小型の電動ノコで、美奈は磔台をバラバラにしていた。長さ三十センチ以下なら燃えるゴミで処理できるという。引っ越す前に、処分してしまいたかった。
「これでいいの。あなたの印がここに残って、うれしいわ」
 二針ほどの傷だったが、跡の残る可能性を医者に指摘された。大きな絆創膏が顔の右側を覆う。ときどき、痛む。絹恵はそれでもずっと機嫌がよかった。昨日、引っ越していくとき、絹恵は美奈をしっかりとハグした。
「幸せになってね」
 キスをし、美奈は絆創膏のない方で頬と頬としばらく合わせたが、絹恵は絆創膏の側の頬も美奈に押しつけた。そして、その傷が残ることをうれしいと言ったのだ。
「考えてみれば、あなたに私の痕を残すより、私にあなたの痕を残した方がいい。あなたはいつか私を忘れる。私は……」
 忘れてください。いや、忘れないで。美奈はどっちの言葉もうまく言えなかった。
 部屋で外側のビニールレザーやクッションは剥がしておいた。それをマンションのゴミ置き場に捨て、そこで清掃をしていた初老の無色透明な管理人に「材木とか、どうすれば捨てられますか」と聞いたら、「三十センチ以下に切れば明日、出せますよ」と言って、電動ノコを貸してくれたのだ。
 磔台はバラバラになった。それがなにに使われた木材なのか、ちょっと見てもわからないだろう。
「ああ、それなら大丈夫ですね」
 管理人は「あとはやりますよ」と言った。束ねて捨ててくれる。
「引っ越しは明後日でしたね」
 美奈は笑顔でうなずいた。
 氷のような風が頬を軽く叩く。美奈の汗ばんだ顔を一瞬で冷やす。
 見上げると、真っ青な空に、ポツンと白い飛行機が浮いていた。



★このお話はここで終わりです。荒縄工房短編集の第二話は出来上がり次第、お届けします。あんぷらぐ(荒縄工房)



★『安里咲1』★

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亜由美の拷問実験を目撃させられた美しき女子大生・安里咲。後継者として目をつけられ、女子寮のペットに。寮長たちによる過酷な調教が彼女を被虐の快楽に引きずり込みます。


★『安里咲2』★
arisa2100100.jpg
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完結編。休む間もなく徹底した調教の果てに辿りついたものとは……。恥辱にまみれた公開調教から東欧の古城で繰り広げられる拷問ショーへ。


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テーマ : 官能小説
ジャンル : アダルト

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プロフィール

あんぷらぐ

Author:あんぷらぐ
 アクセスいただきありがとうございます。このブログは18歳未満はお読みいだけないアダルトサイトです。
 表現上、お食事時にはふさわしくないときもありますので、お気をつけください。
 なお本ブログに掲載している作品の著作権はあんぷらぐ(あんぷらぐど、あんP)に、出版権は電子も含めて荒縄工房にあります。無断転載・印刷・流用はできませんのでご注意ください。

 荒縄工房の取説もご参照ください。

 現在の掲載の目安

※2020年7月14日からは下記の作品を掲載します。
『荒縄工房短編集』
『奈々恵の百日(続・許諾ください)
『お嬢様はドM3(完結編 期間限定Ver)』
『新版 共用淫虐妻・千春(期間限定Ver) 』
『妹は鬼畜系R(期間限定Ver)』
 随時、短編、コラム。
 妄想絵物語(イラスト・月工仮面さん)など。

……

ホームページ 荒縄工房 オリジナルSM小説の世界
 刊行作品についての解説・目次など。

FBページ「荒縄工房 電子書籍部」
 荒縄工房からのお知らせはこちらで随時お届けしています。

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 ここで取り上げている作品はすべて、フィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。また、特定の団体、宗教、人種、性別などを誹謗中傷する意図はありません。



ペンネーム「あんぷらぐ」
1970年代からのSM小説を読み、書き。「仲ゆうじ」などのペンネームで「SMセレクト」などに小説を書かせていただいておりました。
未発表作、新作などを随時、お読みいただきたいと思っています。
2019年「あんぷらぐど」表記から「ど」を取って「あんぷらぐ」へ改名。

あんぷらぐTwitter(メイン)@tokyoindiessun
荒縄工房公式Twitter(サブ)@aranawakobo

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