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インサイドアウト 第一話(その1) 六人揃えてよ

★こんにちは。あんぷらぐ(荒縄工房)です。今日からしばらく新作「インサイドアウト」をお楽しみいただければと思います。短編を書いていて、この作品もその構想でしたが、主人公にいつも以上に興味がわき、連作的に書き綴ってみることにしました。その第一話を4回にわたって連載します。お楽しみに。


「幸田さんって働く必要ないってウワサですよ」
 幸田真津美は、いまも半年前にはじめて内窪直人にかけられた言葉を覚えていた。
「ウワサじゃありませんけど」
 職場は明るいタワービルの三十五階で、ときどき雨雲に包まれることもあった。スカイツリーが遠くに見えている景色は、いつもならすぐに見飽きてしまう。雨雲は、白から薄い墨を溶かし込むように曖昧な明暗を描き、窓に水滴をつけるようになるとゾクゾクしてくる。
 遠くの雨柱に雷光が走るときなど、フロアにいる社員たちの中には窓にへばりついて、子どものように騒いだりもする。真津美はそれには感心はない。だが、自分たちを包んでいる雲の中を稲光が走るところはぜひ見たかった。
 全裸になって錆びた長い鉄の棒を持ち、雷雲を求めて荒野を歩く自分──。それは、かなり幼い頃から抱く暗い願望だった。
 直人に声をかけられたとき、真津美はそのトーンにゾクッとしていた。イヤな感じに聞えてもおかしくないのに、嫌悪よりも先に体の芯が反応していた。
 報告書を作っていた手を止めて、冷めてしまったカフェモカを口にした。甘ったるい。
「どうして、こんな会社に?」
 直人は日焼けしていた。笑顔はセールスに有効そうだ。そして若い。真津美の好みよりわずかに若すぎる。この男と関係するところを想像したが、クリスマスシーズンに放送する高級ブランドのCMじみたいやらしさがあった。
「仕事が好きだから、ですよ」
 直人は目を大きく開き、白い歯を見せて、真津美のウソを受け止めた。
「こんな小さなネット広告会社で、おもしろい仕事なんてないですよ」
 直人が先週、三十人ほどの客にセミナーを開いていたところを目撃した。そのときはこんな声の感じではなかった。むしろ新人アナウンサーのように感じた。マジメ、体育会系、お坊ちゃん。真津美のこれまでの人生で、うんざりするほど見て来た連中のうち、比較的目立たないグループに属する。
 それでも合コンをすればモテるに違いない。育ちの良さをこれほどあからさまに表に出しても平気でいられるのだから。
「修業、ですかね」と真津美はつぶやく。
「修業? ファーストクッキー対策についてのレポートを作るのが?」
「大事でしょ、ファーストクッキー」
「うち程度の規模じゃ、そんなことに興味のあるクライアントは来ませんよ」
 一般的に多くの人たちのブラウザに表示される広告は、その人たちの閲覧記録などによって表示される広告が左右される。個人情報保護法のため、手軽に個人の情報を扱うことが難しくなってきたこともあって、どうやって広告と結びつけるか、その技術についてもいろいろと工夫しなくてはならなくなった。
 少しでも興味を持っている人に、クライアントの広告を出せるようにしたい。とはいえ、費用対効果から考えて、あまり費用をかけられないクライアントとしては精度もさることながら、露出度などのわかりやすい数値だけで満足しているケースもある。
「部長はそうは思ってないみたいですよ。クライアントを育てることも大事だって」
「幸田さんはどう思うんです?」
「育てるなんてことは難しいと思うけど、より精度の高いプランにも需要はあると思う。少なくとも私の知っているクライアントの数社は興味あり、です」
「うちから知識だけを得て、他社に発注するんですよ、そういう人たちは」
「構わないでしょ」
「構いますよ。うちの利益にならない」
「部長に言ってあげて。利益を考えるのは彼女だから」
「うー」
 中途半端に濁す。女性の上司が苦手なのだ。生意気だと目をつけられたくない。そして優秀な部長から辛辣な反撃を喰らいたくない。
 気持ちはわかるが、真津美にはどうにもならない。彼のセミナーで見込み客が二件しかなかったと聞いている。それで腐っているのだろう。
「修業って、なんの修業です?」
 話は終ったのだと思い、PCに向かっていた真津美に、なおも直人が話しかける。
「人生、ですよ」
 返事をしない直人に、追い払うことができたのかと思ったら、「これ」と彼がスマホ画面を突きつけてきた。
 よく知っている。いま住んでいるマンションからクルマで二時間ほどで行ける森の中の別荘だ。それほど大きくはないが、真津美はそこが気に入っていた。曾祖父のものだった。古い建物を真津美は気に入っていたが、いつの間にか父は建て直してしまっていた。それでも窓から見える景色は幼い頃と同じだ。聞えてくる森の音も同じだ。
「幸田さんの、でしょ?」
 ため息をついて真津美は直人に向き合った。
「なんでしょう。いま仕事中ですけど」
「こんな別荘を持っている人、うらやましいですよ」
「ありがとう。だけどそれは個人情報よ。どうしてそんなことを?」
「簡単ですよ。幸田さんの学友と共通の知人がいただけです。たまたまです」
「ああ」
 数人の顔が浮かぶ。合コンに行きそうな友達。
「今夜とか、あいてます?」
 直人は独り言のように言う。彼の出したパンチはすべて外れている。
 働く必要のないほどの財産を相続している。別荘など不動産をいくつか持っている。簡単に個人情報をバラす大学時代の友達がいる。手強い部長に対抗するために、仲間を求めている若い男が同じセクションにいる。
「あいていたら、どうするんですか?」
「食事でも、いかがですか」
「もう予約してるんじゃないですよね?」
「へへへ」
 女の子ならそのくったくのない笑顔に心を開いてしまうかもしれない。いわゆる末っ子の人たらし。きっと出世することだろう。
「すっごくいい店があるんですよ、この近くに」
 真津美はそのイタリアンレストランの名を一発で当ててみせ、一緒に食事をした。それが直人との出会いだった。
「どうしてぼくと付き合ってくれるんですか」と数回、食事をしたり飲みに行ったあとに直人に聞かれた。肉体関係はゼロだった。そういう方向に行きそうにないことを、最初の夜に直人は察したはずだ。
 おそらく男が苦手なのか、年下に興味ないのか、あるいは同性愛者かと思っていることだろう。
「直人は、友達が多そうだし、人を集めたりするのが得意そうだから」
 そう答えていた。
「ええ。学生時代からそんなことばっかりしていましたよ」
「じゃ、うちの別荘にふさわしい、スケベそうな男を六人揃えてよ」
 すんなりそんなことが言えたのは、真津美にも不思議だった。弟のような直人をからかいたい衝動もあった。生意気そうで人好きのする若い男に、恥部を見せつけたい気持ちもあった。



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インサイドアウト 第一話(その2) 体の芯に

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 あとで真津美は、このままデートを重ねて、普通の男女がするようにホテルで一夜を過ごしでもしたら、そのうち直人は親兄弟を紹介しはじめたり二人の将来を語ったりし始めるのではないか、という恐怖から逃れたかったからだと思った。
 もっともイヤなのは子供とか家庭とかの話だった。好きな人とそんな話をしたくない。自分がそんなものに関わると思ったらゾッとする──。
 そこに理由とか理屈とか精神分析的なこじつけは必要なかった。パクチーが嫌いな人がいるように、真津美は自分が子供を持つことや家庭を持つことを嫌悪しているだけだった。
 自分はどうせ雷に肉体を焼かれて死ぬ運命なのだから。
「仕組みとしては完璧でしょ」と直人は自慢する。小器用で爽やかなな若者は、とても疎ましい存在だと真津美は思うのだが、恋愛対象ではないので「ありがとう」と素直に言える。
 直人が数か月かけて集めた人たちは、全員が身元を晒している。別荘にはロッカーを設置し、各人が私物をそこに預けることができる。スマホなどは室内に持ち込めない。そもそも大きな風呂が二つもある別荘で、真津美が使うようになってから使っていなかった風呂も掃除して使えるようにした。正確には清掃の会社に委託したのだが。
 これまでの駐車場は四台が限界だったので八台置けるように広げ、さらに裏手の空き地(曾祖父はそこに天体観測用の別棟を建てるつもりだったらしい)の雑草を刈って、高級車に傷がつかない程度には整地して、そこだけで十五台ぐらい置けるようにした。
「道の駅じゃないんだから、そんなにいる?」と直人はあきれていたが、真津美は大真面目だった。自分が果たしてどこまで耐えられるのかわからなかったのだ。
 この駐車場にクルマが一杯になることなど、あるのだろうか。
「真津美です」と、全員が集まったとき、ウエルカム用に用意したシャンパンで乾杯した。男たちは二十代から四十代までの六人。ゴルフ、テニス、登山、ドライブに行くようなかっこうでやってきている。
 自己紹介をし合うような会ではない。いや、会ですらない。
 全員が直人の作った書類に同意している。
 酔っ払ったあげく、ふしだらに交わるようなデカダンスな会合ではない。昼間から意識を明瞭にしたままやり遂げたいのだ。
 それでも男たちはシャンパンを飲んで、男どうしの微妙な値踏みをし合ってから、四十代の男が年長者であることからリーダー格になっていくのが見て取れた。
 真津美にはどうでもいいことだった。直人の案内で、全員が下着まですべて脱ぎ、私物とともにロッカーへ仕舞って風呂へ。
「あなたも参加するんでしょ?」
 直人は彼らが風呂へ行ったあとも、しばらくぼんやり立っていた。
「本当に?」
 すべてを具体化した直人だが、いまになって躊躇っていた。
「私がしたいことをする。それだけ。すごく助かっているわ」
 真津美は本心から思っていた。自分ではとても実現できなかった。SNSを使う、夜の町に出る、その道のプロを活用する、などなど考えたことはあったが、まったく具体的にはならなかった。
 いまはじめて、見知らぬ男たちを集めることができたのだ。このためだけに。
「行って」
 二つの風呂。男たちは好きな方へ向かった。直人も裸になると私物をロッカーに入れ、暗証番号を自分で設定して風呂へ行く。
 真津美自身、裸になって体に真っ白なバスタオルを巻いた。どうするか考えたのだが、最初はテレビなどで温泉紹介をする番組のように、タオルを巻く方がむしろわかりやすいような気がしたのだ。
 庭に近いいつも使っている風呂へ真津美が行くと、そこには直人と三人の男がいて、「おおっ」と声を上げた。
 真津美は意を決して、タオルを外し、あえてしゃがんで、シャワーを浴びた。男たちの視線を感じる。慣れ親しんだ浴室なのに、男湯に紛れ込んだようなスリルがある。
 なんといっても風呂場だというのに、男臭い。乾杯したときにはあまり意識しなかったのだが、ここに来て男の髪や肌からたちのぼるなんとも言えない獣臭に、真津美は興奮していた。
 男たちの前で体を洗い、シャワーですっかり流したあと、タイルの上に正座をし「本日、どうかよろしくお願いいたします」と深々とお辞儀をした。
 タオルを巻いて、隣りにあるもう一つの浴室へ行く。外を見るような窓はなく、高い場所に明かり取りがあるだけで、狭いこともあって使っていなかった。そこに三人の男たちがいて、もう上がろうとしていた。
 二度洗う必要はないので、真津美は浴室のドアを開けて、脱衣場のマットの上でタオルを落とす。
 ゆっくりと正座して、ここでも挨拶をした。
 すっかりニオイに敏感になっていたが、ここでは急いで洗ったために、浴室洗剤の香りがまだ強く残っていて清潔な印象しかなく、真津美は物足りなかった。
「いつでもいいんですか?」と浴槽に浸かっている若い男。
「はい。これから寝室へご案内いたします」
 二つの風呂場から出てきた男たちは、裸のまま廊下にいる。真津美もタオルを捨てて裸のままで、奥の寝室へ案内した。
 昔の建物は和室がいくつもあり、庭に面した廊下を含めて複雑な構造だった。真津美はそれが好きだった。かくれんぼにうってつけの魔窟だった。
 建て直してしまったため、洋室が中心になっている。真津美がいつも使っている二階は洋室しかない。
 唯一残されたのが、この奥の座敷だった。床の間があり、こじんまりとした日本庭園風の庭に面して、短い外廊下がある。池には鯉のいた時期もあったが、かなり前から枯れ池にしてある。手入れができないからだ。
 そこに布団を敷いていた。白い新品のシーツ。敷き布団だけを二枚。目的が明確すぎるほどだ。
「どうぞ」
 直人を含め七人の男たちが入ると、あの獣臭がたちのぼり、真津美は体が熱くなった。
 その熱さは、どこかで冷めてしまうかもしれない。それならそれで、終わりにできる。
 ところが、月曜の朝、いつものように出勤するときもなお、これまで感じたことのない熱さが体の芯に残っていた。
 不思議なことに、その熱によって自分は生きているのだと真津美は感じることができた。いままで得たことのない実感があった。肉体のあちこちに残る痛みや疼きさえも、その熱があれば気にならない。
 むしろ、痛みや疼きは、熱の発生源になっているのかもしれない。
 真津美は自分で長く思い続けて、部分的に試してきた仮説が、遂に実証されたすがすがしさの中にいた。
 これからは、この熱と共に生きるのだ。
 IDカードをかざしてビルの入り口を通過する。そのとき真津美は、横に立っていた警備員に微かに見覚えがあった。
 エレベーターに乗ると、直人が駆け込んできた。知らないふりをして三十五階で降りる。軽くみな挨拶をして、それぞれの職場へ去っていく。
「なんで返事をしてくれないんですか」
 直人が囁くように背後で言う。
 週末は一切、携帯に出なかった。真津美は悦楽を振り返り、全員の同意のもとに撮影されていた動画を見た。音量を大きくし、外にまで聞えるほどにして。
 自分の声はみっともない。フェラをするときにはもっと丁寧にしなければ。何人もに挿入されたときよりも、連続のクンニは死ぬほどの悦楽だった。そのときの声は、恥ずかしくて耳をふさぎたくなる。
 でもこれが自分なのだ。真津美はそれを目に耳に焼き付けた。
 今朝通勤中に直人からメッセージがかなり入っていた。中には「会名は『若鮎の会』となりました」とあった。
 あの別荘地は鮎の産地に近く、あの日も全員に地元にある老舗旅館からケータリングした鮎を含めた御膳をふるまった。
 昼の明るいうちから淫らな行為にふけり、だるい体で食事をし、夜も果てしなく狂った。
 三々五々、彼らは帰っていき、真津美は日曜日もそこで一人で過ごして今朝、出勤したのだ。
 次回、つまり今度の土曜日も「若鮎の会」は開かれる。そのことについて、いくつかの要望や提案があった。
 真津美は仕事に集中していたが、直人は落ち着かないようだった。なぜ彼がそんなにそわそわしているのか真津美にはわからなかった。セックスをした相手がそこにいるからか。今週も一緒に淫らな行為にふけることがわかっているからか。
 今朝目が合った警備員もそうなのだろうか。



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完結編。休む間もなく徹底した調教の果てに辿りついたものとは……。恥辱にまみれた公開調教から東欧の古城で繰り広げられる拷問ショーへ。


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インサイドアウト 第一話(その3) ヤリ部屋

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 複数の男と一度に交わること。真津美にはそれしか生きている目的はなかった。
 お世辞もあるにせよ、そろそろ三十代が見えてきたいま、「若鮎」と喩えられているうちしかできないことだろう。
 人間性の欠けた女とのセックスは、そのうち彼らも飽きる。次の土曜日に何人集まるか。最後に直人だけが残るようなことは避けたい。
 過去にもあったのだ。
「君の体が心配だ。こんなことをしていたら破滅しかない。ぼくに任せてくれないか」
 預からせてくれ、だったかもしれない。どっちにしろ他人の物になるのはイヤだった。
「ぼくだけのものにしたい。奴隷になれ」と言ってきた中年男もいた。不動産経営者だったはずで、いまは破産して離婚してどこかへ消えてしまった。
「私は奴隷でもしもべでもない。自由な女なの。好きなことを好きなだけしたいだけ」
 そう突っぱねても、理解されなかった。
 私はストックじゃない、フローだ、と真津美は感じている。流れていき、どかで朽ち果てる。または、雷に肉体を引き裂かれる。
 鮎というのは、どこかに流されていくのか、それとも人の食卓に供されるのか、ともかく真津美は悪くない喩えに思えた。
 若い医者と関係して、ムリを言って卵管を電気で焼き切る手術をしていた。生理はあるが軽くなり、妊娠はしなくなった。妊娠できるように戻すことは困難で、卵巣を残したのは医者が「それは絶対にできないから」と主張したからだった。
「なんの異常もなく妊娠経験のない女性から卵巣を摘出したら、ぼくは……」
 医者の資格がないのだと言う。
 長くピルを飲み続けるぐらいなら、卵巣をなくせばいい、子宮を取ればいいと簡単に考えていた真津美には、彼の態度は滑稽だった。しかし、職業にはそれぞれに倫理があり、いまも真津美はネット広告の仕事ではそれに従っている。
 いまなら、あの医者の言葉は理解できる。
 もっとも彼も真津美を独占しようとしたことで破局したのだった。
「おかしいでしょ? お医者さんの奥さんが卵管焼き切って、不特定多数の男とセックスしているなんて」
 彼は結婚という武器によって、真津美の淫らな行為を破壊できると思っていたのだろう。
 そういう思考を、真津美は受け付けない。
「育ちの悪いお嬢様」と真津美のことを評した男もいた。お嬢様なら育ちがよくなければ。育ちが悪いならお嬢様ではない。
 育ちのせい、親のせい、と思ったことはなかった。恵まれていたのは事実で、そこに不満を持ったこともなかった。そのおかげで、真津美の性癖をカネに替えようとする人たちの手に乗ることもなかった。
 十代から望んだことがあり、それがあるとき思いがけなく実現した。妄想と比べれば不十分だったが、現実とはそういうものだと諦めていた。
 それから十年近くも断続的に続けてきて、命にかかわる危険に陥ったことのなかったのは恵まれていたからだろう。おカネとかお嬢様風という飾りは、案外役に立ってきたのだ。
「おまえ、売られそうになっていたんだぞ」とあとで忠告されたこともあったが、真偽はわからない。ただ、それからは相手のことをさらに選ぶようになっていったので、妄想とは遠ざかってしまう。
 それでもやらないよりはマシだった。本当はこんなものじゃないはずだ、もっとすごい何かがあるはずだ、それを確かめたい……。
 仕事をしてみようと思い、いまの会社に入ってからは過去の関係は清算し、知らないふりをして毎日を過ごしていたのだが、悪い虫はすぐに頭をもたげる。へそに紛れてついた小さな内視鏡の痕跡から、いつか悪い虫が食い破って飛び出すかもしれない。
 おもしろさで比較すれば、仕事もおもしろい。誰かが世の中を動かしているのは政治だと言っていた。真津美はゲラゲラと笑ってしまった。世の中を動かしているのは、日々、退屈と戦いながら目の前の仕事をこなしている人たちだ。政治なんかのわけがない。
 ただ、真津美の知り合いの中でも政治に邁進している人たちもいて、それは政治を仕事として扱っているからおもしろいのだろうと解釈していた。
 セックスはそうしたおもしろさとは比較できなかった。真津美は明確にそれを分析していたわけではない。ただ、男たちにもみくちゃにされて、口やヴァギナやアヌスに挿入されて、ザーメンや小便を浴びて得られる悦楽は別格なのだった。
 それも、しっかりとした男たちでありながら、真津美となんの関係もない見知らぬ人たちばかり。できれば過去の体験のような二人、三人ではなく、その倍以上の人数で……。
 真津美の妄想から生まれた仮説は、実証された。人数が多いほうが熱い。まさかいつまでも冷めない熱だとは思わなかった。想像以上だ。
 仕事のおもしろさは失われても生きていけそうだった。楽しみにしてたイベントが中止になっても死ぬことはないのだから。
 でも、セックスが失われたら、おそらく生きていないような気がしてならなかった。
「あのとき、売り飛ばされていたら」と思うと、ゾクゾクするほど悪い虫がたくさん目覚める。もう一人の真津美は、言葉のわからない暑苦しくて不衛生などこかに流れ着き、腐り果てていたに違いない。それも、この得たいの知れない熱を感じながら。
 若鮎の会は、メンバーを変えながら六回ほども続いただろうか。
 秋になっていた。
「飽きないですね」
「飽きないわね」
 直人は世話役を続けていた。彼に抱かれている意識は真津美にはない。多数のペニス、多数の舌、多数の指。それでいて、直人はすべての会に顔を出しているので、他の人たちとはやはり少しは違う。
「別の世界も欲しくなってきたんだけど」
「別の?」
 もっと下品で危険な世界。売り飛ばされていたら味わったに違いない、熱い世界。
 直人に、ある場所を教えた。それは都内にある物件の一つで、いわゆる事故物件でもあった。といっても怪奇現象はなく住人たちは平気で生活をしている。
 取り壊し期限が設定されているアパートだ。
 一時、利用していたことがあった。バイト先からタクシーで近くまで行き、川沿いにある空き地で着替える。仕事をしていたときの服や下着はバッグに入れて、全裸の上に薄汚いスモックを被る。ブランドのパンプスは紙袋に入れて安物のビニールサンダルを履く。
 いま思えば、もっとも興奮したのは、薄暗い空き地での着替えだったかもしれない。そこでオナニーをして帰宅したってよかったのだが、真津美はそれでは満足できない。
 かなりの資産家である女が、安アパートの一室で殺されている……。そんなイメージが当時はお気に入りだった。
 鮎の甘露煮もなければ、松茸や栗をあしらった上品な食事もない。通り道にある焼きトンの店で串焼きとモツ煮を仕入れる程度だ。
「汚いドブ川みたいなのが横を流れていて、ひどい場所でしたよ。畳もじとっとして、なんかイヤな臭いがしていました」
 直人は嫌悪していた。そのイヤな臭いの多くは真津美と男たちから溢れ出たものによるのではないか。
「そこにふさわしい人たち、用意できそう?」
「これまでのようにはいかないですよ。あっちの会はどうするんですか。解散?」
「放っておけば。会費を取っているわけじゃないし、約束はなにもしていない。お互いに同意しただけだもの」
 これまでもそうだった。男の多くは、なにか「確かなもの」を求めるようになる。真津美を確かなものにしたくて、縛っておきたいのだ。
 それができないことを知ってしまうと、しだいに足が遠のいていく。飽きていく。どうせどこかで、真津美の悪口でも言っているのだろう。ただのエロ狂い、誰とでも寝る女、壊れたダッチワイフ、冷たいオナニーグッズ……。
 まれに「愛」で縛ろうとする男もいるが、複数の男と肉体を合わせている女への愛は、真津美の思う愛とはほど遠い。十八世紀とか遙か昔に、娼婦に恋をする育ちのいい若者、といったストーリーがもてはやされていたかもしれない。真津美は娼婦ではない。淫らなだけだ。淫らさの向こうにある熱を求めているだけなのだ。
 直人は先日の「若鮎の会」に参加していた柏田という人物に協力してもらうことを真津美に了承してもらった。
「そのかわり、ぼくは行きませんから」
「あ、そう」
 柏田は、以前に別荘で何度か会っている壮年の男だった。肌はほどよく焼けていてゴルフか釣りかその両方をやっているような男。健康そうで家庭を大切にしカネ儲けもほどほど上手そうに見えた。
 アパートは一階の角部屋で、土曜の昼というのに薄暗い。古い丸い蛍光灯の入った四角い行燈が天井から下がっている。紐は茶色くなってよれよれだ。白いつまみは、少し欠けている。なにかが激しくぶつかったせいだ。
「まさにヤリ部屋ですね」と男は言った。その顎とこめかみ付近には、古い傷跡が影を生み出していた。
「若鮎の会みたいに上品にはいかないですよ」
「ええ」



★小説『堕ちる』特別編★
堕ちる1

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OLが自虐の果てに見たものとは? ブログ連載を加筆修正の上、未公開の原稿を追加しました。主人公は壮絶な自虐癖から拷問ののちに人間ですらなくなっていく……。



★小説『堕ちる』Part2 シークレット・バージョン★
堕ちる2

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OLが拷問地獄に堕ちる『堕ちる』の別バージョン(「小説『堕ちる』特別編」の続編ではありません)。初出時にあまりの描写に小説掲示板から削除されてしまった部分などを復活。お読みになる前に「体験版」などにある「ご注意」をご確認ください。


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縄レーベルコレクション 真性M牝獣たちの咆哮

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インサイドアウト 第一話(その4) 犬釘

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「最悪の事態とならないようコントロールしますが、基本は成り行き任せになります。それでいいですか?」
「はい」
「ふう」と彼はユニットバスを眺めてため息をついた。トイレとシャワーだけだ。浴槽はない。そもそも風呂なしで設計された部屋に、あとから無理やり取り付けたもので、それも二十年以上前のことだろう。
「いいんです、汚いままで」と真津美は言う。
「なるほど」
 真津美は以前に使っていたスモックワンピースはもう捨ててしまっていたので、似たような古いワンピースを着ていた。茶色っぽいのだが、部屋の中では黒く見える。
「明日の昼まで、二十四時間ってところか」
「はい」
 段ボールに缶やペットボトルの飲み物、酒、ハイボール、スナック菓子などが大量に入っていた。
「手を出してごらん」
 子どもにお菓子でもやるように言う柏田。真津美は素直に手を出す。手の平を上に向けて、手相でも見ようというのか、がっちりと両手首を掴む。細い女の手首だ。柏田の手は大きい。その左手だけで彼女の両手首を重ねて握る。
「な、なに?」
 ガチャリと音を立てて、手首に黒い艶消しの手錠が食い込んだ。その手錠に、柏田は黒い鉄の杭のようなものを通した。
「こうしてあげましょう」
 足をかけて仰向けに真津美を倒し、畳の上に寝かせる。
 左右の手錠の鎖はほとんどないほど短く、そこを通した杭を畳へグサッと刺し、いつの間に用意したのか、大型の金槌でガンガンと打ち込んだ。
 真津美は柏田の平然としたその姿もさることながら、ここに手錠や金槌などの道具を持ち込んでいたことにショックを受けていた。
 こうして殺されていくんだ──。
 これまで死体となって発見されている女性たちをネットニュースなどで知っても、自分のこととして考えたことはなかった。
「犬釘ってやつです。その姿勢じゃ、抜けないですよ」
 手は頭の上でびくともしない。
 叫ぼうと口を開いたとき、待っていたように黒っぽい布が押し込まれた。
「よーく、味わってください。あなたのために一週間も履いていた靴下ですからね」
 柏田の靴下を口に押し込まれ、その気持ち悪さと臭さに、吐き出そうとするが、なぜかできない。彼の手が押さえつけている。その手が一瞬離れた。
 しかし真津美はなにもできなかった。男の手は、イヤな臭いのする粘着テープにとって代わった。念入りに口を塞ぎ、顎までテープを貼り付けられてしまった。小刻みに動かし続ければ、いつかは唾液などで粘着性も弱まり、外れていくかもしれない。だが、それまでになにをされてしまうのか。
「へえ、いいですね」
 男は巧みだった。体重をかけて足の動きを封じながら、足首もサドルバンドと呼ばれるパイプを固定する金具と犬釘で畳に打ち付けていく。
 腐って柔らかい畳とはいえ、それを突き通ってしまうと真津美にはなにもできなくなった。畳には真津美と柏田の体重がかかっているので、少し揺らぐ程度なのだ。足の筋力は大きいので、膝を曲げて思いきり蹴れば外れただろうが、そもそも柏田は、百八十度近く真津美の足を開いて打ち付けたので、うまく力が入らない。
「痛いか? 体、柔らかいよね」
 別荘で彼女の肉体を味わって、柏田はその柔軟さを知っていたのだ。
 服はへそまでまくられ、肌が剥き出しになっていた。ワンピースの下は全裸だ。
「いい眺めですよ」
 男は一眼レフのカメラを手にし、念のためなのか、趣味なのか、真津美の目に細く黒い布をあてて縛ってから撮影をした。
 それは黒いパンストだった。光は通るが、ほとんどなにも見えない。
「こんにちは」
 別の男の声がした。聞き覚えがない。
「ああ、ちょうどよかった」と柏田がそちらへ行く。玄関に大勢の人の気配。靴を脱いでいる。タバコ臭、体臭がいっきに部屋を満たしていく。
 声は出せないが、真津美は「ああ、これだ」と感じた。このむせるような男たちのニオイ。すえたようなニオイ。風呂にあまり入っていないのか。汗や皮脂や頭髪につけたなにかだろうか、さまざまなニオイが真津美を熱くさせる。
「へえ、すげえなあ」
 笑い声。男たちに見られている。
「ゆっくりやってください。いまは元気がいいからこうしているけど、そのうちぐったりしてきたらまたやり替えますから」と柏田が説明している。
「それから、余興として、これね」
 真津美は冷たく固いロープが首に二重にかけられたのを感じた。やっぱり殺されるのだ。
 ぐっと首が絞まる。最初は皮膚が捻れてそれがピリッと痛かったが、やがて息ができなくなり血液も止まる。
「一分ね。一分以上はやめてくださいよ」
 へらへらと笑いながら返事する男たち。三人とか四人ではない。もっと多いようだ。
 布が擦れる音がし、ニオイがさらに濃くなっていく。ズボンや下着を脱ぎはじめた。
「そこにシャワーとトイレがあるけど」
 トイレを使う者はいても、シャワーはいない。
 首を絞めながら犯されるのだ。見ず知らずの汚い男たちに。
 そう気付いたとき、真津美はのけぞった。これまでにない熱さに、早くも溶けてしまう。
 ハサミでザクッザクッと服を切られていく。男たちの口臭も酷い。その口がいま、剥き出しにされた乳房に向かっている。腹部も、太ももも、そして聖域にも……。
 べちゃべちゃと舐める音。甘噛み。乳首を引っ張られる。吸われる。クリトリスを舐められ、いじられる。
 精液を注がれるよりも、その臭い唾液を注がれるほうが、真津美には恐ろしく、かつて感じたことのない屈辱だった。屈辱もまた熱さになることを知った。
 これはひどい、いくらなんでも、こんな状態で殺されるなんて……。
 飽きてきたからといって若鮎の会で満足していればよかった。もちろんそれだって危険だったはずだ。
 しかしこの熱さはなんだろう。いままで感じたことのない溶ける熱さ。
「じゃあ、いきますよ」
 男たちがジャンケンをしている。「ああ、負けたー」とか「おまえの腐ったチンポのあとはイヤだよ」などと笑いながら騒いでいた。年齢はかなり高いかもしれない。
「よーし、じゃ、オレ様のぶっといのを入れやろう。悪いな、おまえら。すぐガバガバになるぜ」
「バーカ、そのための首締めだろ」
「なるほどな」
 そんなことを言いながら、汚い唾液で濡らされた陰部に、男は無造作に指を入れてきた。
「おお、熱い熱い! 待ってろよ。天国に行かせてやるぜ」
 ゲラゲラを笑う男たち。
 そしてそれが入って来た。



★妹は鬼畜系R★
鬼畜系R100
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DLSite版はこちらへ前作「妹は鬼畜系」で、トーメンターのマイア様に心酔したケイ。新しい「おにいちゃん」を手に入れたケイは、少しずつ「ぼく」を引きずり込み、逃げられない状態へ。「トーメンター」を目指す!

★妹は鬼畜系★
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義理の妹に調教される兄「ぼく」。義妹のケイに、さらに義母に調教される。男の娘として男性たちのオモチャに、トーチャー・クラブの生け贄として拷問へとエスカレートしていく。コメディ要素あり。


★隷獣 郁美モノローグ版★
隷獣
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女子大生がケモノとして飼育される 山ガールを楽しんでいた郁美は、同級生の有希恵に「隷獣」としての素質を見出され、山小屋でケモノに堕ちるための調教を受けるのだった……。伝奇SM小説『隷獣』は、郁美のモノローグに書き改められ、ブログにはない結末が追加されています。



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インサイドアウト 第二話(その1) 今度の土曜日

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「それで、どうでした?」
 直人は待ちかねたように、オフィスにやってきた真津美に話しかけていた。
「すごかったわ」
 タートルネックの薄いセーター。長袖だ。しかもその手首には袖の色に合わせた濃紺のリストバンドのようなものが見え隠れしている。スーツパンツで足元も見えない。
 少し痩せたのかな、と頬がこけているように直人には見えた。得体の知れない影のようものをいつしか真津美は背負っているようだ。
 真津美は新しい世界を得て、気分は高揚している風だ。
 ヤリ部屋での二十四時間。土曜の昼から日曜の昼まで。あの恐ろしく、とんでもない時間が、またいずれやって来る。そう思うだけで、頭がボウッとなりそうだった。
「若鮎なんですけど。みんな、またやりたいようですよ」
「うーん」
 頭を仕事に切り替えていた真津美は、冷たく「ないなー」と答えた。
 死をも予感したあの時間を経て、元に戻れるとは思えないのだ。
 以前は、先の尖った錆びた鉄棒を握りしめ、雷鳴と雷光に満ちた荒野を歩く自分の姿を夢想していた。そして突然、鉄棒から強烈な電流を受けて体が裂け、焼け焦げて絶命するのだ。
 しかし、新たな経験のあとに、そのイメージは修正された。錆びた鉄棒は、荒野の小高い丘の上に垂直に立てられ、自分はその鉄棒に串刺しになっているのだ。手は後ろ手に縛られ、足は鉄棒の根本に縛られているのだが、がに股にされている。みっともない姿。鉄棒の鋭い先端は肛門から入って内臓を破壊し、喉を抜けて口から飛び出している。その苦悶の姿は雷が落ちてくれるまで続く。
 鈍い銀色だった空が、しだいに邪悪な黒い雲がどこからともなく押し寄せてきて、昼でも真っ暗になる。ゴウゴウと凄まじい雷鳴に地面も鉄棒も振動し続ける。見渡す限り、周辺に稲妻がいくつも走る。いよいよ自分の番が来る。そのとき、鉄棒の先端に稲光が吸い寄せられていく瞬間を、目の前で見ることになるだろう。それが最後に見る光景になる……。
 直人はタートルネックの縁に、かなり赤みがかった真津美の肌を見た。
 傷ついている。どんなことをされたのか知らないが、平気で仕事をしている。楽しい週末を過ごし、気合いを入れて来たように見える。
 それでいて、彼女の肉体はこのフロアにいる誰よりも無惨に汚れ、傷ついている。
 その遊びは極めて危険なものだが、それは一千万円ぐらいするスポーツカーで首都高を走り周り、かつて川の底だった道路で時速三百キロを出すのとそれほど変わりないスリルなのかもしれない。
「あの会のメンバーを集めるのに二ヵ月ぐらいかかったんですよ。大変だったんですよ」
 一応、抵抗はしてみる。
 資産家の考えることはわからない。直人は真津美とその背後にある裕福さを結びつけて考えようとしてみたが、仕事の合間に視界に入る真津美の姿は、どこから見ても、ごく普通の女だった。
 むしろやや小柄で華奢に見える。
 男として守りたい存在に思えるのに、彼女はそれを拒否する。
 このまま彼女の背負う影が濃く深くなっていくのを黙って見ているしかないのだろうか。
 直人は、その夜、帰宅する真津美に、「もし次があるのなら参加したい」と告げていた。下見をしたあのアパートの場所はわかっている。
「そう。でも耐えられるかなあ」
 ご清潔なお坊ちゃまに、と真津美は言葉を自分の中だけに仕舞った。
「食事でも?」と誘ったが、断られた。「疲れているから」
 直人が悶々としている間に、真津美はかなり回復をしているようで、少なくとも仕事中にはなんの問題もなく、影のようなものは薄くなっていった。
「今度の土曜日。お昼の十二時から日曜日のお昼の十二時まで」と真津美に言われたとき、直人は一瞬、若鮎の会だと思ってしまった。
「一週間しか……」と直人は驚いた。
「一週間も、よ」
 回復力を試すかのようだ。
 真津美は、柏田が男たちを用意してくれたら、なにがあっても断らない覚悟でいた。木曜日の朝、柏田から用意ができているとメッセージが送られてきたのだ。不思議と、それからさらに回復力が増したような気が真津美はしていた。
 今度こそ、殺される……。
 冷静でいられないほど、体の底からこみあげてくるもの。悪い虫たちはより巨大になって真津美を腹の中から食い破るに違いない。
 金曜日は忙しく、直人は真津美が他のフロアで連続してミーティングをしているらしいことは知っていたものの、声をかけることなく帰宅した。
 これほど服装に迷ったことはなかった。
 直人はグレーのスラックスに多少の雨なら弾くスニーカー、紺のブルゾンを着て、捨ててもいい安物の傘を手にアパートに向かった。
 電車を乗り継ぐ間も、雨のせいか憂鬱だった。
 まったく土地勘がない。一度、真津美に言われて見に来ただけだ。ホームを雑多な人たちが降りて行くので、そこそこ人口はある。下町といった風情。都心から時間的にはそれほど遠くはないのに別世界だ。ビルは少なく、マンションも少ない。大型商業施設はない。地図によれば駅から離れた国道沿いは、ショッピングセンターやマンションが建ち並んでいるようだ。
 駅の周辺には小さな商店街の名残りがある。シャッターが降りた店。二階建ての店舗兼住宅がずらっと並ぶ。雨なので人通りもあまりない。どこからか揚げ物の香りがしている。タイ料理の香りもある。
 その中程で曲がると、カーブを描くコンクリート製の背丈ほどの堤防にぶつかる。その向こうはキレイとは言えない川。この先の大きな川へ続くはずだが、このあたりでは、ただ町の発展を阻害している。
 クルマが一台通れるコンクリートの橋を渡ると、右手にアパートがある。その向こうは空き地になっている。工場の塀などに囲まれて、雑草の生えた小さなスペースはそれだけでは利用価値がないので放置されたままだ。
 そこに人影があった。
 直人は心臓がバクバクした。急いで橋を渡ってアパートのブロック塀と川に挟まれた、人と自転車しか通れない隙間のような道とも言えない道。こちら側の堤防の上にはフェンスが張られていて警告文の書かれた錆びた看板がいくつか貼り付いている。その看板には風俗と闇金らしき電話番号の書かれたシールが貼りつけられている。黒いスプレー缶がその上に卑猥なマークを描いている。
 電柱の横から、そっと空き地を見る。
 男が黒く大きな傘をさしていて、顔は見えない。その前で、雨に濡れながら裸になっているのは真津美だ。
 着ていたものはオフィスにいる彼女からは想像できないほど地味で薄汚れたワンピースらしきもので、それは真津美が持って来たビニール傘とともに男の手にぶら下がっている。
 直人が見ている前で、真津美は靴下を脱いでいた。粗末なビニールサンダルが用意されている。艶やかな黒髪は肩までふわっと仕上げてあることが多い。いまは雨でべったりと貼り付いている。かなり長くそこにいるのだ。
 想像したとおり、首には傷跡のようなものが残っている。以前にチラッと見えたときのように赤くはなかったが黒ずんでいる。手首、足首も同じような痕が残っていた。
 それよりも驚いたのは、真津美の陰毛が剃られていたことだ。
 最初に若鮎の会で見たとき、そこは勝ち気な彼女の性格そのままに、しっかりとした毛で覆われていた。ただ直人を含めて七人の男たちに何度も何度もペニスを挿入され、クンニされ、バイブで感度を高めさせられているうちに、たっぷりと濡れて柔らかくなっていった。
 その味を直人は思い出せる。
 しかし、いまはない。剥き出しの陰部。
 声は聞えないが、男になにか言われたらしく、真津美は自らそこに指を持っていき、大陰唇を左右に割った。さらに小陰唇をつまみ、中まで広げた。
 ストロボが光る。
 男がスマホでその姿を撮影していた。
 次に真津美は、後ろを向き体を前に倒してお尻を広げた。広げただけではない。自分で人差し指を舐めると、それをアヌスに深々と差し込んでいく。
 なおかつ顔がはっきり見えるように撮影していた。
 終ったのだろう。
 服を着るのかと思ったが、真津美は、男から受け取ったロープを首にかけた。引っ張れば首が絞まる仕掛けのロープだ。そして自分からロープの端を男に差し出した。
 二人が歩いてこっちへ向かってくる。
 直人は慌てて、アパートの角まで戻った。
 まさか、そのままここまで来るのか。直人は自分のこと以上に慌てていた。全裸の真津美は、手を頭の上にのせ、なにも隠さないまま歩いてくる。脇の毛も処理されている。傘をさした男は首の縄を手にしてそのうしろにいる。
 直人の横を軽トラックが通り、宅配便のトラックが通る。傘をさした人が歩く。土曜の正午近く。ごく普通の町の中を、裸で歩いている。
 真津美はメイクなしのスッピンで、心なしか全体にピンク色なのは上気しているからだろうが、唇に血の気はない。トロンとした目は、若鮎の会で見たままだが、あれは朝までセックスし続けた果ての表情だった。



★縄味1★


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若き人妻は「なわみ」というハンドルネームで緊縛写真をネットで見るようになり、写真展に立ち寄ります。そこでカメラマンにモデルに誘われる。顔出しNGで緊縛モデルのテスト撮影をしたところ、唯一顔の写っていた写真がネットに流出。義兄の目に止まってしまう。



★縄味2★


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「縄奴隷なわみ」として義兄に脅され恥辱にまみれたデビューを強要される。野外での撮影会で人妻奴隷の限界を超えてしまい、残酷なショーに出演することに。哀しくも完全奴隷化されていく。



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 表現上、お食事時にはふさわしくないときもありますので、お気をつけください。
 なお本ブログに掲載している作品の著作権はあんぷらぐ(あんぷらぐど、あんP)に、出版権は電子も含めて荒縄工房にあります。無断転載・印刷・流用はできませんのでご注意ください。

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 現在の掲載の目安

※2020年10月20日からは下記の作品を掲載します。
『インサイドアウト』
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『荒縄工房短編集』
『奈々恵の百日(続・許諾ください)
『お嬢様はドM3(完結編 期間限定Ver)』
『新版 共用淫虐妻・千春(期間限定Ver) 』
 随時、短編、コラム。
 妄想絵物語(イラスト・月工仮面さん)など。

……

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ペンネーム「あんぷらぐ」
1970年代からのSM小説を読み、書き。「仲ゆうじ」などのペンネームで「SMセレクト」などに小説を書かせていただいておりました。
未発表作、新作などを随時、お読みいただきたいと思っています。
2019年「あんぷらぐど」表記から「ど」を取って「あんぷらぐ」へ改名。

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