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メロー・マッドネス 50 いやあ、大変だったな

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 遠い。思った以上に遠い。のんびり歩いて10分ほどの距離のはずだが、フルマラソンのように遠く感じる。
 藤崎は利満や警官たちを連れてくることを想定していたが、ドローンを連れてくるとは思っていないかもしれない。気づいてくれるだろうか。
 高層ビルが壁に建ち並ぶ。渓谷の底を走っているようだったが、ついに左手に緑の茂る一角が現れた。
「ああっ」
 梨々花は赤信号で止まったのではない。
 絶望して止まったのだ。
「おい、逃げるな」
 腕を利満に掴まれた。簡単に追いつかれるぐらいの速度しか出ていなかったのだ。刑事の荒い息は臭かった。
「だって」
 公園を囲むように、ずらりと色とりどりのヴィッツが並んでいる。その多くはシルバーだ。その意味が利満にはわからないのだろう。
 先を越されたのではないか。
 梨々花は愕然としながらも、自分たちを追い越してドローンが公園の上に向かっていくのを見ていた。
 木々の間から数十のドローンが浮上する。
 オリンピックの開会式のように。または、群れをなす鳥のように。
 その甲高い羽音は梨々花にはただ恐怖でしかなかった。
 西に黒い雲が接近している。荻窪方面は雨になっているのではないか。
 公園にはすでにたくさんのドローンが集結している。
 そこに藤崎は潜んでいる。
 自分もそこに行かなければならない。行くのは嫌だった。
 上昇したり下降したり、旋回したり。戯れるようにドローンは動く。
 行くしかない。
 信号を無視して梨々花は交差点に飛び出した。クラクションが鳴り、ブレーキ音が響く。
「なんなんだよ!」と利満が叫ぶ。
 彼も公園の上を乱舞するドローンに唖然としていたのだ。それが自分の仲間を殺傷した連中で、徒手空拳の刑事1人で立ち向かえる相手ではない。彼はスマホでどこかと連絡を取っている。彼は信号が青になるまで歩き出さないだろう。
 梨々花は公園に沿って南へ向かう。高い壁に囲まれている。普段ならきっと穏やかな空気が流れ、ここを通る人たちはみなゆったりとした気分になっていることだろう。
 いまは、殺気立った蜂の大群に襲撃されたようなもので、公園にいたらしい人たちもみな逃げはじめていた。
「いいのかよ、ドローン禁止だぜ」とか「落ちてきたら怖い」と口々に文句を言っている。
 サイレンを鳴らしてパトカーが駆けつけてきている。消防車もだ。いずれにせよ道路は封鎖され信号は無意味になっていた。
 ドローンがときどき木々の間に沈んでいくのは、そこにいる人たちを脅して遠ざけようとしているのかもしれない。
 そしてきっと藤崎を見つけようとしているのだ。
 梨々花は堂々と、ヴィッツが縦列駐車している横を走り抜け、都庁から伸びてくる歩道橋を潜り、中央の広場へ向かう。壁は終わり、公園はそこで平たく口を開けている。その奥はナイアガラの滝を模した噴水だ。
 そこで死ぬのだろう。
 全身を銃弾で粉砕されて。
 激しく鞭で叩きのめされるよりも、きっと痛くはないはずだ。一瞬のことでわけがわからないうちに、煙のようにこの世から消えていくのだろう。このどこもかしこも痛いばかりの肉体を終わらせることができるかもしれない。
 つまらない一生だった。誰の役にも立たず、望んだ快楽もいまから思えば大したものではなかった。
 自分から奴隷になったのだ。その時点で、こんな終わり方もあることをわかっておくべきだった。
 自転車を捨てた。
 震えながら、梨々花は広場を奥へ進んでいった。右足は引きずるしかない。
 そこにいたはずの人たちはすでに逃げている。近くに大型の観光バスが停止していたものの人影はない。
 広場はしだいに雨滴で色が変わっていく。
 滝は真正面だ。ナイアガラほどではないにせよ、水は豊富に落下している。
 ドローンの音さえなければ、きっと穏やかな気持ちになれた場所だろう。たとえ雨でも気分のいい場所だったろう。
「どうなってるんだ」
 利満が追いついてきた。
 梨々花の頭の上で、待機しているドローンは、見上げるとドーナツ状に隊列を組み、3重、4重の輪になっている。30機ほどだろうか。
 藤崎はどこだろう。
 思惑とはかなり違う結果になっているが、少なくともドローンをおびき寄せることには成功していた。
 梨々花は利満に「公園の周辺に停車しているヴィッツを一斉に取り締まってください」と頼む。
「なんでだ!」
「クルマに乗っている人たちがこれを操縦しているんです」
「うん。わかった」
 利満は携帯で指示を出している。パトカーが集結している。ドローンたちは自分たちを守るためにそっちへ向かうのではないか。
 その時、狼煙のように白い煙が宙を横切った。風に煙りはちぎれ飛ぶ。直後に頭上で数機のドローンをまとめて巻き添えにして、爆発が起きた。
「うわっ」と利満はひっくり返る。
 バラバラと破片が広場に落下する。
 蜂の巣に手を突っ込んだようだ。ドローンは隊列を乱した。一斉に勝手な行動を取った。同士討ちをしている。
 ドローンもパニックになるのだ。人が操縦している以上。
 数機は道路へ飛び去る。パトカーに対抗しようとしているのだろう。それとも逃げるつもりだろうか。
 藤崎か誰かがドローンにロケット砲を打ち込んでいる。2発、3発。
 梨々花は機体の破片が体に当たる恐れがあるのに、その光景を真下から眺めていた。
「やれー! やっちゃえ!」
 体が限界で動けなくなっていた。梨々花は叫ぶだけだ。目の前で粉々に砕け、仲間を道連れにして落下していくドローンを見るのは気持ちのいいものだった。
「おい、逃げろ」
 立ち上がった利満が背後から両腕を掴んでくる。思わず彼にしがみつく。
「そこに行きたい。行かないと」
 予定通り、ナイアガラの滝へ向かいたい。
「そっちに行くのか!」と利満は驚く。警官たちが集結している道路に向かうと思ったのだ。
 だが、標的は逃げてはいけない。
「行かせて」
 利満にしがみついて歩きはじめた。すると、痛みは自分が思っていたほどには感じられなくなっていた。気持ちの問題なのか。
 彼から離れ、梨々花は自分で歩き始める。
 梨々花はランウエイを歩くモデルのように落ち着き払って進んでいった。
 狂ったように飛び回るドローンは、梨々花を発見できていない。自棄になって放たれた銃弾はまったく違う方向に飛び、広場のアスファルトを削り、なんの罪もない植栽を痛めつけていた。緑の葉が飛び散り、枝が吹き飛ぶ。
 ロケット砲は2方向から飛んできた。
 藤崎だけではない。鹿尾も協力しているのか。
 長いようでも数分の出来事だった。
 梨々花が滝のほとりまで来たとき、ドローンはすでに壊滅していた。
 破壊を免れた機体は逃げたかもしれない。だが、そこには警察が待っている。ヴィッツに格納できるとは思えなかった。
 気づけば雨が本格的になっていた。もうドローンは飛べない。
「おい、あとで話を聞くからな。消えるんじゃないぞ」と利満は怒鳴って、道路へと走っていく。警官たちと合流するのだろう。
 風と雨と滝の音だけになると、都心とは思えない和みの空間に戻っていた。サイレンは遠くこだましている。続々と警察車両が集結している。
 散発的に発砲があった。
 逃げようとした連中が抵抗しているのだろう。
 彼らは生きて捕まるのだろうか。なにを自供するのか。本当に人間なのだろうか。
「いやあ、大変だったな」
 滝の向こう側から出て来たのは二村六也だった。よれよれのワイシャツ。髪が雨に濡れてカッパのようになっている。ヘラヘラと笑う。


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