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いいなりドール 34 「めします、めします」と唱えながら

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 待てよ。
 あいつらを助けられるかもしれません。
 わたしは、突然、そう思ったのです。
 あの有名なサッカー選手は、シュートの軌跡が光る道のように見えたので、ただ蹴っただけだと言っていました。
 それと同じ。
 わたしにははっきり見えたのです。できる、と。
 だから、階段を駆け下りて、思った通りのルートで源蔵のところへ行きました。
 ロープは太いのですが、大きなフックで止めているだけなので、簡単に外すことはできました。
 源蔵は手足を縛られていて、そのロープまで外す余裕はないけど、丸焼きにはならずにすむでしょう。彼がなにかわたしに怒鳴っていますが、耳がキーンとなったままなので、なにを言っているかはわかりません。
 それにしても酷い有様です。
 指は爪が剥がされているのか、折られているのか、切られているのかわかりませんが乾いた血がこびりついていますし、汚れたままです。足も同じ。このままだと腐ってしまうでしょう。
 それに顔。最後に見たときの彼とはまるで別人のようです。歯がほとんどないのでしょう。口元は以前に増して貧相ですし、鼻は折れ曲がり、目の周辺は痣や腫れて破けて崩れています。鼻血。耳の穴からも出血のあと。頭髪は薄くなっていますが、その地肌もあちこちが破れて出血したようで、髪が血で固まっています。
 ほとんど死んだも同然です。
 なんだか、自然に地面に倒れている彼に頭を下げました。ご愁傷様。
 次は後ろのダンプ。
 そこには逃げ惑う連中がまだいます。そして死体と人間のパーツと気持ち悪いものの海が広がっています。
 わたしはトム・ハンクス。
 ありもしないヘルメットをまぶかに被りなおし、突撃しました。
 ヒュンと耳元をなにかが掠りました。それは音ではなくて、衝撃として骨に伝わる感じ。
 戦場ってこんなんでしょうか。
 健介は目も開けられないほど顔を腫らしていました。ボコボコです。でも源蔵に比べればぜんぜん平気。苦しげな表情も演技じゃないかと思えるほどです。あんまり汚れていないし。靴も履いている。指もある。
 それに、思っていた以上に太っている。しばらく見ていなかったのだから仕方がありませんけど、わが子ながらも、こんなに太ってますます例の宗教団体の誰かにそっくりで気持ち悪いです。
 瞬間、ほとんど忘れていたあの宗教団体のことが頭にリアルに浮かび上がりました。あの不思議な儀式。最初は左の人差し指を立てて、天を示し、それを口元に寄せてキス。次に右の人差し指で同じようにキス。次に左の小指にキス。右の小指にキス。小指へのキスは、左、右、左、右。
「めします、めします」と唱えながら、さらに左、右、左、右。
 そんなことを毎日、早朝に叩き起こされてやらされていました。ええっと、団体の名は、確か……。「まみやづかの会」でした。覚えにくいですよね。漢字ではなく、ひらがな。まみやづか。意味不明。
 もちろん教えを学ぶ時間もたっぷりありましたが、セックス漬けのいいなりドールとしては、それはお休みの時間でしたから……。
 気を取り直します。
 健介。わたしの子。
 かわいそう。昼の太陽の下で見る顔じゃないです。醜いです。反吐が出そうです。
 同じようにロープを引っ掛けるように止めているフックを外せば、とりあえずダンプからは降ろせました。そのダンプは燃えていてとんでもなく熱い。
「爆発するぞ!」
 プールの中に沈んでいて、誰かの声が聞こえたような、奇妙にこもった声がします。
 後ろから、誰かが手をかけてきたので、それを振り払い、またしてもヒュンとなにかが耳元をかすめ、そいつの顔が破裂しました。
 どうでもいい。そこにいるやつらは、みんな、どうでもいいんです。エキストラです。勝手にこんなことして。自分たちがなにに巻き込まれているかも気づいていないのです。
 テロリストの尾を踏んだんです。サイコキラーの双子たちの標的に自ら飛び込んでいってしまったんです。
 健介もわたしになにかを言いましたが、よく聞こえませんでした。
 口の中は切れているらしく、何本か歯がないようです。でも、源蔵ほどじゃない。死ぬほどではないのです。
 だから、自分でなんとかしろよ、健介!
 わたしは縛られたままの健介を引きずり、反対車線へ向かいました。パトカーが中央のフェンスをなぎ倒してくれたので、そこを越えれば簡単です。
 源蔵のことは忘れました。あいつは他人。
 でも健介は、違う。気持ち悪いけど。
 めちゃくちゃ重いんですが。
「ちくしょう、こんなに太りやがって」
 なんとか倒れたフェンスの上を転がして反対車線に逃げると、燃えるパトカーの横を通って血の海から離れることができました。
 見上げると、ホテルのバルコニーに人影はなく、ダンプとトラックの周囲で動くものはありませんでした。
 皆殺し。
 もしくは、どこかに逃げたのです。
 ゆっくりとそこから遠ざかりました。
 現場からは以上です──。
 先のことなんてわからないものです。直後に大勢の制服警官たちに囲まれて、透明な樹脂の盾ではさまれ、なにかを怒鳴られ、わたしたちは手錠をかけられて引きずられていきました。
「息子よ! わたしの息子なの! 助けたっていいでしょ! ダメなの? いけないの? これ、わたしの息子だって言ってるでしょ」
 健介を担ぐように救急車へ乗せていく一団。そしてわたしを数人の婦人警官たちに引き渡し、少し離れて囲んでいる一団。2派に分かれました。
「悪いやつらはあのホテルにいるのよ。あそこ。見えないの!」
 手錠で両手を背中に回されてしまったので、肩でホテルを示すのですが、だれもそっちを見もしません。
 ちくしょう、ミユキってこういうとき、メチャクチャ調子いいっていうか、運がいいって言うか、腹が立つぐらいうまく立ち回る女なんだよなあ。わたしの子ですけど。
 しばらくして、別の一団がやってきました。
「ユキコ―」
 昔の映画かよ。エイドリアーンかよ。
 源蔵は生きていました。ボコボコの顔。歯もないのに。叫ぶのです。
「ユキコ―」
 キモイ。
 彼も警官たちに担がれて別の救急車に乗せられました。
 健介の救急車が発進。ほどなくして源蔵の救急車も。
 わたしはまだ耳がキーンとなっていて、近くでなにかをボソボソ言っている婦警の声がまるで理解できません。
「……ですから……」
 まるでわからないのです。
 源蔵の声は聞こえたのに。
 あ、これって。
 顔の角度を変えたら「これから署に行きますが、体はどこか悪いところはないですか? 痛いところとか」と聞こえました。
 なんだ、聞こえないのは左耳だけか。
 半分、青い。
 大型のバンに婦警と護衛と一緒になって乗り込みましたが、その頃には左耳も回復していました。
 ところが、両方の耳が聞こえるようになったとたん、誰もなにもしゃべらないのです。
 わたしからなにかを言い出すっていうのもなあ。
 しゃべれよ! と怒鳴りたくなりますが、キツイ目をしたメガネをかけた婦警に睨まれると、やめておいたほうがいいなと思いました。
 逃れたと思った運命に、また捕まってしまったような、でも2人の命を助けることができたような、それでいて完全にドツボにはまってしまったような、ニヤニヤしながら絶望するみたいなおかしな感じでした。
 ああ、好きじゃなけど、セックスでもしたい。


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