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インサイドアウト 第一話(その3) ヤリ部屋

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 複数の男と一度に交わること。真津美にはそれしか生きている目的はなかった。
 お世辞もあるにせよ、そろそろ三十代が見えてきたいま、「若鮎」と喩えられているうちしかできないことだろう。
 人間性の欠けた女とのセックスは、そのうち彼らも飽きる。次の土曜日に何人集まるか。最後に直人だけが残るようなことは避けたい。
 過去にもあったのだ。
「君の体が心配だ。こんなことをしていたら破滅しかない。ぼくに任せてくれないか」
 預からせてくれ、だったかもしれない。どっちにしろ他人の物になるのはイヤだった。
「ぼくだけのものにしたい。奴隷になれ」と言ってきた中年男もいた。不動産経営者だったはずで、いまは破産して離婚してどこかへ消えてしまった。
「私は奴隷でもしもべでもない。自由な女なの。好きなことを好きなだけしたいだけ」
 そう突っぱねても、理解されなかった。
 私はストックじゃない、フローだ、と真津美は感じている。流れていき、どかで朽ち果てる。または、雷に肉体を引き裂かれる。
 鮎というのは、どこかに流されていくのか、それとも人の食卓に供されるのか、ともかく真津美は悪くない喩えに思えた。
 若い医者と関係して、ムリを言って卵管を電気で焼き切る手術をしていた。生理はあるが軽くなり、妊娠はしなくなった。妊娠できるように戻すことは困難で、卵巣を残したのは医者が「それは絶対にできないから」と主張したからだった。
「なんの異常もなく妊娠経験のない女性から卵巣を摘出したら、ぼくは……」
 医者の資格がないのだと言う。
 長くピルを飲み続けるぐらいなら、卵巣をなくせばいい、子宮を取ればいいと簡単に考えていた真津美には、彼の態度は滑稽だった。しかし、職業にはそれぞれに倫理があり、いまも真津美はネット広告の仕事ではそれに従っている。
 いまなら、あの医者の言葉は理解できる。
 もっとも彼も真津美を独占しようとしたことで破局したのだった。
「おかしいでしょ? お医者さんの奥さんが卵管焼き切って、不特定多数の男とセックスしているなんて」
 彼は結婚という武器によって、真津美の淫らな行為を破壊できると思っていたのだろう。
 そういう思考を、真津美は受け付けない。
「育ちの悪いお嬢様」と真津美のことを評した男もいた。お嬢様なら育ちがよくなければ。育ちが悪いならお嬢様ではない。
 育ちのせい、親のせい、と思ったことはなかった。恵まれていたのは事実で、そこに不満を持ったこともなかった。そのおかげで、真津美の性癖をカネに替えようとする人たちの手に乗ることもなかった。
 十代から望んだことがあり、それがあるとき思いがけなく実現した。妄想と比べれば不十分だったが、現実とはそういうものだと諦めていた。
 それから十年近くも断続的に続けてきて、命にかかわる危険に陥ったことのなかったのは恵まれていたからだろう。おカネとかお嬢様風という飾りは、案外役に立ってきたのだ。
「おまえ、売られそうになっていたんだぞ」とあとで忠告されたこともあったが、真偽はわからない。ただ、それからは相手のことをさらに選ぶようになっていったので、妄想とは遠ざかってしまう。
 それでもやらないよりはマシだった。本当はこんなものじゃないはずだ、もっとすごい何かがあるはずだ、それを確かめたい……。
 仕事をしてみようと思い、いまの会社に入ってからは過去の関係は清算し、知らないふりをして毎日を過ごしていたのだが、悪い虫はすぐに頭をもたげる。へそに紛れてついた小さな内視鏡の痕跡から、いつか悪い虫が食い破って飛び出すかもしれない。
 おもしろさで比較すれば、仕事もおもしろい。誰かが世の中を動かしているのは政治だと言っていた。真津美はゲラゲラと笑ってしまった。世の中を動かしているのは、日々、退屈と戦いながら目の前の仕事をこなしている人たちだ。政治なんかのわけがない。
 ただ、真津美の知り合いの中でも政治に邁進している人たちもいて、それは政治を仕事として扱っているからおもしろいのだろうと解釈していた。
 セックスはそうしたおもしろさとは比較できなかった。真津美は明確にそれを分析していたわけではない。ただ、男たちにもみくちゃにされて、口やヴァギナやアヌスに挿入されて、ザーメンや小便を浴びて得られる悦楽は別格なのだった。
 それも、しっかりとした男たちでありながら、真津美となんの関係もない見知らぬ人たちばかり。できれば過去の体験のような二人、三人ではなく、その倍以上の人数で……。
 真津美の妄想から生まれた仮説は、実証された。人数が多いほうが熱い。まさかいつまでも冷めない熱だとは思わなかった。想像以上だ。
 仕事のおもしろさは失われても生きていけそうだった。楽しみにしてたイベントが中止になっても死ぬことはないのだから。
 でも、セックスが失われたら、おそらく生きていないような気がしてならなかった。
「あのとき、売り飛ばされていたら」と思うと、ゾクゾクするほど悪い虫がたくさん目覚める。もう一人の真津美は、言葉のわからない暑苦しくて不衛生などこかに流れ着き、腐り果てていたに違いない。それも、この得たいの知れない熱を感じながら。
 若鮎の会は、メンバーを変えながら六回ほども続いただろうか。
 秋になっていた。
「飽きないですね」
「飽きないわね」
 直人は世話役を続けていた。彼に抱かれている意識は真津美にはない。多数のペニス、多数の舌、多数の指。それでいて、直人はすべての会に顔を出しているので、他の人たちとはやはり少しは違う。
「別の世界も欲しくなってきたんだけど」
「別の?」
 もっと下品で危険な世界。売り飛ばされていたら味わったに違いない、熱い世界。
 直人に、ある場所を教えた。それは都内にある物件の一つで、いわゆる事故物件でもあった。といっても怪奇現象はなく住人たちは平気で生活をしている。
 取り壊し期限が設定されているアパートだ。
 一時、利用していたことがあった。バイト先からタクシーで近くまで行き、川沿いにある空き地で着替える。仕事をしていたときの服や下着はバッグに入れて、全裸の上に薄汚いスモックを被る。ブランドのパンプスは紙袋に入れて安物のビニールサンダルを履く。
 いま思えば、もっとも興奮したのは、薄暗い空き地での着替えだったかもしれない。そこでオナニーをして帰宅したってよかったのだが、真津美はそれでは満足できない。
 かなりの資産家である女が、安アパートの一室で殺されている……。そんなイメージが当時はお気に入りだった。
 鮎の甘露煮もなければ、松茸や栗をあしらった上品な食事もない。通り道にある焼きトンの店で串焼きとモツ煮を仕入れる程度だ。
「汚いドブ川みたいなのが横を流れていて、ひどい場所でしたよ。畳もじとっとして、なんかイヤな臭いがしていました」
 直人は嫌悪していた。そのイヤな臭いの多くは真津美と男たちから溢れ出たものによるのではないか。
「そこにふさわしい人たち、用意できそう?」
「これまでのようにはいかないですよ。あっちの会はどうするんですか。解散?」
「放っておけば。会費を取っているわけじゃないし、約束はなにもしていない。お互いに同意しただけだもの」
 これまでもそうだった。男の多くは、なにか「確かなもの」を求めるようになる。真津美を確かなものにしたくて、縛っておきたいのだ。
 それができないことを知ってしまうと、しだいに足が遠のいていく。飽きていく。どうせどこかで、真津美の悪口でも言っているのだろう。ただのエロ狂い、誰とでも寝る女、壊れたダッチワイフ、冷たいオナニーグッズ……。
 まれに「愛」で縛ろうとする男もいるが、複数の男と肉体を合わせている女への愛は、真津美の思う愛とはほど遠い。十八世紀とか遙か昔に、娼婦に恋をする育ちのいい若者、といったストーリーがもてはやされていたかもしれない。真津美は娼婦ではない。淫らなだけだ。淫らさの向こうにある熱を求めているだけなのだ。
 直人は先日の「若鮎の会」に参加していた柏田という人物に協力してもらうことを真津美に了承してもらった。
「そのかわり、ぼくは行きませんから」
「あ、そう」
 柏田は、以前に別荘で何度か会っている壮年の男だった。肌はほどよく焼けていてゴルフか釣りかその両方をやっているような男。健康そうで家庭を大切にしカネ儲けもほどほど上手そうに見えた。
 アパートは一階の角部屋で、土曜の昼というのに薄暗い。古い丸い蛍光灯の入った四角い行燈が天井から下がっている。紐は茶色くなってよれよれだ。白いつまみは、少し欠けている。なにかが激しくぶつかったせいだ。
「まさにヤリ部屋ですね」と男は言った。その顎とこめかみ付近には、古い傷跡が影を生み出していた。
「若鮎の会みたいに上品にはいかないですよ」
「ええ」



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1970年代からのSM小説を読み、書き。「仲ゆうじ」などのペンネームで「SMセレクト」などに小説を書かせていただいておりました。
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2019年「あんぷらぐど」表記から「ど」を取って「あんぷらぐ」へ改名。

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