奴隷未満(期間限定Ver) 9 オブジェ
剥き出しの肩を店員がぴしゃっと叩きます。触らないでよ、と言いたいですが、貴史様とお友だちのようにしているので、下女としては失礼なことをしてはいけません。
ちょっと耐えます。
わたしの服は彼が紙袋に突っ込んでくれましたが、パンツは売られてしまいました。店員が大切そうにジップロックに入れて封印しました。
「行くぞ」
またカバンを持たされます。紙袋は手首に通します。
なにがなんでも、貴史様に気に入ってもらわなければ。ここまで恥ずかしいことをしたのです。
わたしは必死でした。
厳しい修行は、オブジェになることからはじまりました。
貴史様は都内のマンションにお住まいですが、そこでは独身らしく一人で暮らす感じがありながらも、随所に女性の影も感じるのです。それでいて、生活感があまりなく、ホテルのような印象もあります。ホントにここに貴史様がお住まいなのでしょうか。
「掃除はプロに任せている。おまえは手を出すな。料理もだ。おれの食べ物や飲み物に干渉するんじゃない」
「なにをすればよろしいのでしょう」
「これから考えるが、とりあえずは、黙ってじっとしていることだ。そこのスタンドのように」
華やかな傘のついた背の高いフロアスタンド。じっとただ立っているだけ。
「自宅から通ってるんだろう? 住み込みは許さないからな。時間が来たら帰るんだ」
「はい」
「朝は十時から夜は七時まで。それでいいか?」
「わかりました」
「試用期間中は土日も休みもない」
「はい」
「一週間の試用期間で気に入らなくなったら、即クビだ。なんの保証もしないぞ」
「わかっています」
「それから、もう一つ。使用期間中に得た日当は、期間終了後まで手をつけてはいけない。守れるか?」
「守ります」
親にはバイトしていると言えばいいのです。七時までなら、まったく怪しまれないでしょう。実際、一万円ももらっているのです。愛菜さんのお金だとしても。
これは、わたしへの報酬ではありません。貴史様と愛菜さんのプレイでしょう。彼女が汗水垂らして稼いだお金を、見も知らぬ小娘に与えてしまう。彼女はハードに調教され、自分の捨てて奴隷として働いているのに。
それでいて小娘は下女という名目ですが、なにも仕事らしい仕事はしないのです。電気スタンドです。
愛菜さんは貴史様と会える時間は限られています。追い返されます。わたしは朝から夕方まで、ずっと一緒にいることができます。
愛菜さんに嫉妬させ、狂わせ、惨めな思いをさせるために、わたしを利用しているんだろうと想像していました。
それは、わたしにとっても、一種の快感でした。
オブジェとして、ただじっとしているのはとても苦痛です。だけど、想像や妄想を巡らせているのは楽しいので、耐えられないほどではありません。なによりも、貴史様の近くにいられる。同じ空気を吸っていられる。話ができる。
こんな幸せはありません。それも、独占です。
まあ、恋人だとか、奴隷の愛菜さんのような意味での独占からはほど遠いでしょう。ぜんぜん、独占になっていないような気もします。それでもこのポジションを獲得したのですから大事にしたいし、幸せなんだと思いたいのです。
貴史様は、書斎に入って長時間、お仕事をされ、冷蔵庫から缶ビールを出して飲み、クラッカーをつまみ、音楽(よく知らないピアノ曲)を流し、電話をしたりもします。
きわめて事務的な電話が多く、相手は特別な関係の女性とかではなさそう。
あっという間に一時間ほどが過ぎて、七時になってしまいました。
「今日はこれで終わり。着替えて帰るんだ。その衣装はここに置いていくこと」
「ありがとうございました」
ノーパンのまま。貴史様が見ているかどうかわかりませんが、生着替え。いったん、全裸です。ソックスだけ。
「さっさとしろ、貧乳下女」
うれしい……。ひどい。でもうれしい。だけどひどい。意地悪。だからうれしい……。
追い出されました。
一緒に夕食とかあるかも、なんて期待したのが間違いでした。下女と食事をするなんて、あり得ないでしょう。それに、わたしは貴史様の夕食を用意する許可も得ていません。信頼度ゼロですから。どうせ、手料理はできませんし。
貴史様はどんな料理が好きなのでしょう。知りたいです。そしてマスターしたい。
思い焦がれても、今日はなにもできません。課題としましょう。
ファイト!
外に出て、駅に向かいながら、一人で歩き、適当にしていることが、なんだかまるでつまらなくて、頼りない感じがしました。
やっぱり貴史様の目の届くところにいたい。そしてお言葉をかけていただきたい。命令していただきたい。
どんなつらいことでも、できるような気がするのです。
駅の改札まで来たときに、ハッとしました。
愛菜さんが、「今夜十時」という約束を貴史様としていた……。
どこでしょう。
もう間に合わないかもしれませんが、わたしは急いで貴史様のお部屋近くへ戻りました。出かけてしまっていたら、どうにもなりません。
近くの建物の陰で、しばらく待ちました。十時まで待って出てこなければ、もういらっしゃらないのです。
それとも、ここに愛菜さんが来るでしょうか。
いけないことのようですが、確かめたい。貴史様のすべてを知りたいのです。
しゃがみ込んで、ぼんやりと待っていました。オブジェよりは楽です。睡魔が襲ってきます。なんとかはねのけようとしますが、数秒、もしかすると数分は寝てしまっていたと思います。
ドアが開いたのを見て、人影が路上に出ました。あのシルエットは貴史様だ。そう思って、慌ててあとを追います。いえ、気付かれてはいけません。これは単なるいけない好奇心。
駅とは逆の方向です。なにがあるのでしょう。
タクシーに乗られたらあきらめるつもりでしたが、ずっと歩いています。
路地を入って、ちょっと帰り道はわからなくなりました。かまうもんか。ビルとビルの間を抜けて行くと、小さな公園があって、その横にコンクリートの三階建ての建物がありました。白い外観。暗いのでよくわかりませんが、民家にしては大きい感じ。一階はシャッターばかり。店舗かガレージでしょうか。
その横の扉。テンキーがあってそれを操作して中に入って行きます。
さすがに、これ以上はムリ。
スマホを見ると、ちょうど十時でした。ヤバイ、愛菜さんが来る。わたしは慌てて隣の公園に入ったのですが、そこには人影があったのです。
「きゃっ」
叫んでしまいました。その人とぶつかってしまって……。
「あっ」
なんて、ドジなのでしょう。愛菜さんです。
「あんた、なにしてるの、こんなところで」
愛菜さんこそ……。
わたしは言葉が出ません。だって、愛菜さん……

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