奴隷未満(期間限定Ver) 12 うれしい
朝、予備校へ行く前に、喫茶店に寄りました。カウンターにいる総治に向かって、こう言っておきました。
「今日、夜、お会いできませんか?」
ストレート一発!
土曜日のつまらなそうな芝居のチケットは受け取っていましたが、いまのわたしには時間がないのです。
隣にお盆を持った女性店主がいて、呆然としています。お盆で総治を殴るんじゃないか、なんて思いましたが、さすがにそんなことはせず、肩でぐいっと彼を押したのです。「よかったじゃない」
「は、はい」
彼の心境は複雑です。
わたしがこの間、中二階でなにをしていたのか、知っています。
さあ、どうする。それでも受けるか? 受けないか? わたしの勝負はここにかっているのです。時間がない。土曜日まで待てない。今日会って、今日、わたしを抱いてほしい。そうすればクリアできる。明日それを報告すれば、正式に下女。
ちらっと窓に映ったわたしの顔は、口から火を噴くハードロックバンドのようで、自分でびっくりしました。いけません。これは酷い。
うつむいて恥じらいを装います。
「いいよ」
圧力に負けた彼が了承したので、「ありがとう。七時に」。ホテルで、と言いそうになる自分が怖いです。「このお店に来ます」と言いました。
「いいわねえ、青春ねえ」
朝っぱらからバカみたいですが、その乗りで予備校へ行くとトイレに入って下女のユニフォームになって、職員室の前に待機。
ほかの先生方が、薄笑いを浮かべてわたしを見ます。「来てるよー、こいつ」みたいな顔ですが、平気です。
いろいろなことを考えてしまいます。この奇妙なできそこないのゴスロリ風というか、ボンデージ風というかよくわからないファッションで突っ立ているのですが、これを買ってもらったお店ではからずも、自分が処女だと宣言したのに、まったくそこには価値を見いだされなかった……。
処女なんて、なんの価値もないんだ。なにもしなかったから、そうなっているだけで、それは結果にすぎないわけですよ。少なくとも貴史様的には。
もう少し、男性は処女を喜んでくれるのかと思っていたのに、がっかりです。
だから総治に捧げる(おおげさだわ)のも、わたしとしては特に惜しくはありません。貴史様に捧げたいと思っていましたが、彼はそんなことされたくないのです。彼が求めていないことをするのは下女だろうと奴隷だと、NGってことです。
ああ、余計なことをまた思い出しました。奴隷といえば、あの工場で愛菜さんはあれからどうなったんでしょう。もう、大変なことになったと思うのです。あれやこれや。もしかしたら、半身不随になっているかもしれません。
ステキだわ。彼に激しくされて、入院……。
全身包帯だらけでも、性欲だけは衰えず、彼のところに這っていくのです。ミイラ女のように。
「なんだ。バットマンの新しい悪役か?」
中年の先生にからかわれました。そうか、そうならもっと濃いメイクにしたいところですけど……。
遠くに貴史様発見!
駆けつけます。
「これ」と言われてカバンを受け取り、捧げてうしろを歩きます。職員室に入ると、彼の席の横で待機です。すごい邪魔をしているようにも見えますが、なんとかみなさん、わたしのような異物にも慣れていただかなければ。
「おまえの今日の予定は?」
受ける講義の予定をお伝えします。
「わかった。そのときは行っていいからな。あと、昼前に必ず来てくれ。用事がある」
「わかりました」
うれしい!
用事があるんだ!
なにもないより、あったほうがいい。
「そうだ。あの学生とは連絡を取ったのか?」
「はい」
「どうだ。うまく行きそうか?」
「今夜、こちらが終わりしだい、会う予定です」
七時に終わって、七時に会えるわけがないのですが、七時に約束したけど十分ぐらいの遅刻は女子の特権と、勝手に解釈。わたしの友人で平気で一時間遅刻したり、曜日を間違えてすっぽかしたあげく、逆ギレして「わたしが来ているのに、なんであんたは来てないのよ!」的ないちゃもんを彼に浴びせていた女がいました。
そんな酷いことはさすがにできませんが。
「よかったじゃないか」
先生は講義に行かれます。お供して教室へ行きます。
わたしは用事がないときはここで待機です。立たされた学生のようなのもです。
ですがただ立っているのは、学校にいるのでバカすぎます。ちゃんとテキストを読んで勉強とかするのです。
下女だと思うと、神経が張り詰めているからか、けっこうはかどります。
そしてわたしは自分の講義にも行きます。このファッションで。上はコルセット、下は革のミニスカート。
これだけ派手なかっこうなのに、男が誰も声をかけてきません。悪目立ちし過ぎなのです。それに、すでにわたしが貴史様の下女ということもウワサになっているはずなので、誰もが無視しているのかもしれません。
昼前に職員室に慌ててうかがうと、貴史様が「外のお弁当屋さんで、大江戸弁当とジャスミン茶。おまえの分も買って来い」。
お使いです。用事は用事ですが……。
行列のできる弁当屋。並んでいると、さすがに目立ち、事情を知らない外部の人たちから好奇の眼差し。
「バンド?」とか聞かれますが、あいまいに笑ってごまかします。
お弁当とお茶を買って、予備校に戻ろうとしたときです。
入り口に、すごく怖くて感じ悪い目つきの女子が七、八人。
通ろうとしたら、「ちょっと、あんたさ」と肩をつかまれました。
「すみません、急いでいますので」
「ざけんなよ!」
コルセットの胸のところを別の人が手を入れて掴みました。
「あんた、岡本先生のなんなのよ」
貴史様のことです。
「下女です」
「ゲジョ? なにそれ」
キャハハハと彼女たちが笑うので、わたしもニッコリ。
「あんたねえ」と顎を鷲掴みされました。
「ちょっとぐらいカワイイからって、派手なかっこうして先生につきまとうって、いい度胸してんじゃんよ」
「そういうのではないのです」
あ、でも、「ちょっとぐらいカワイイ」ってフレーズは好き!
「うるせえんだよ。顔を貸せよ」

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自虐の虜となった女子校生が自分の肉体破壊に突き進んでいく。物語はデッドライン(引き返すことのできないところ)に向かって、エンディングと発端から交互に描かれる。結末はわかっているのに、読み進めるしかない破壊的な磁力を発する作品。
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