インサイドアウト 第二話(その2) 儀式のように
それをいまは、すでに。
「こんにちは」
背後の男に声をかけられ、直人はびっくりしてしまった。
傘が傾くと、柏田だった。
「あ、どうも」と直人は頭を下げた。
真津美が微笑んだ。
気は確かなのだ。そこにいるのはいつもの真津美だ。
「そこのドブ川に突き落としてやろうかと思ったんですが」と笑う柏田。フェンスを越えるのはムリだったのだろう。それとも冗談か。
「まあ、ゆっくりしていってください。時間はおありですか?」
「はい」
「あなたに誘っていただいて、感謝していますよ。こんな経験はなかなかできませんのでね」
道端でごく普通に会話をしている。
真津美は小刻みに震えている。怖さというよりは寒さだろう。
「行きましょうか」
真津美は自らアパートの門を潜る。二階へ上がる鉄製の階段。プラスチックの屋根は数カ所が破壊されたままだ。そのまま二階への外廊下へつながっている。
一階はその下なので薄暗く、一段高くなったコンクリートの上に各戸の薄っぺらな茶色いドアが並び、洗濯機、プロパンなどが置かれている。
雨はかなり降り込んでくる。土砂降りというわけではないが、細かく軽い雨粒はしっとりとコンクリートを濡らしている。
一階角部屋だ。すぐ手前の部屋だけドアが全開になっていて、汚い靴がはみ出している。ドアノブにビニール紐がかかっていて、閉じないようになっていた。
そこへは行かず、真津美たちは庭に回って進む。
濡れた砂利の上を裸足の女が歩いて行く。そして庭側へ行くと、門から続く目隠し程度に積み上げられたブロック塀があり、真津美の背はぎりぎり隠れるが、もし直人が向こう側にいれば、おそらく彼女もアパートも丸見えだろう。
庭とは名ばかりで、人が手を広げるほどの幅もない。泥と雑草の地面の上に、コンクリートの台がついた古い物干しがその塀にもたれるように放置されている。誰も使っていないし、竿は渡されていない。
角部屋のサッシは開け放たれていて、部屋の中には男たちがいた。そこから漂う異臭に直人は顔をしかめる。
二階の窓を開けて、老人が見下ろしている。いつもそうやってタバコを吸っているらしい。
惨めな姿を晒している女が、このアパートとこのあたりの敷地の持ち主だと知る者などここにはいない。聞かされても信じないだろう。
頭がおかしいのか、それともわずかなカネが目当てか、柏田に弱味を握られて脅されているのか。
どう思おうと自由だった。
「さっき、向こうの空き地で写真を撮りましてね」と柏田は直人にスマホを見せる。それは真津美のスマホだ。オフィスでは机に置かれていたので見慣れている。
淫らな彼女の姿。背景のわびしい空き地。ストロボに反射する雨滴。
「これを?」
「彼女自身が、私の指定したSNSに上げる予定です」
そんなことをしたら……。
直人の心配をよそに、真津美はサッシに近づき、中の男たちに「ようこそおいでくださいました」と声をかけた。
「真津美と申します。このような淫らな体ですので、思うぞんぶん、お好きなようになさってください」
そして、彼女は大きく口を開けて、彼らに喉の奥まで見せる。部屋から手がのび、真津美の顔や濡れた髪、乳房を触る。
「フェラ、イラマなどもちろん、喜んでさせていただきます」
さらにさっきの空き地のように、陰唇を開いていく。
「マゾの膣です。たっぷりとナマで中出ししてください」
そこにも薄汚れた黒い指が這う。
お尻を向けて、さきほどのように真津美は自分の指を入れて見せる。
「アナルセックスも壊れるまでしてください」
しばらく男たちはその尻を撫で回す。雨で濡れた白い肌に黒い跡がつかないのが不思議なぐらいだ。
先ほどまで用意されていた弁当や酒を飲んでいた男たちの、どんよりとした目がしだいにギラギラと光りはじめる。
「今日は、みなさまの前で、最初に浣腸ショーをお見せします。お尻の中をきれいにして、たくさんのオチンチンを入れていただきたいからです」
その声は、稚拙で上ずっている。会社で耳にする冷静な声ではない。
なにかに取り憑かれたように、真津美は自分の首にかかった縄の末端を軒下にあるフックに引っ掛けた。縄尻で八の字状の輪を作り、そこに両手首をネジ込んで引っ張ると傷ついた手首に食い込む。
簡単な自縛だが、真津美自身で解くにはかなり苦労するに違いない。
「口を開けろ」と柏田。
従順に口を開ける。
「どなたか、靴下を貸してくれませんか」と室内に声をかける。
「こんなんでいいか」
穴の開いたどす黒い靴下が差し出される。
真津美は自ら顔をそこに押しつけ、口の中へ入れていく。
「ふうううっ」
苦悶の表情に、室内から薄ら笑いが起こる。
「パンツを貸してくれる方はいませんか?」
「おれのはどうだ」
黄ばんだパンツ。
「頭に被せてやってください」
男はうれしそうに真津美の頭から、それを被せてやった。
「おれのもあるぞ」
都合、三枚のパンツで、真津美の顔の鼻から上は覆われた。白かったかもしれないパンツ、鮮やかな柄があったかもしれないパンツ、そもそもどんな布きれかよくわからないパンツ。
化け物だ、と直人は感じた。真津美は恐ろしい。得体の知れないものに変身してしまった。
確かにこれで、真津美は直人にとっての恋愛対象ではなくなった。それどころか、職場の同僚としても今後は距離を置くことになるだろう。
「ぐううううう」
儀式のように浣腸と排泄が繰り返される。柏田の用意した青いポリバケツの中にある水を、両手で支えなければ使えないようなガラスの大型浣腸器で吸い上げては、真津美の中へ注ぎ込む。
窓から手を出した男たちも交代で、それをやり続ける。
見る見る下腹が膨らんでいき、何本入れたのかわからないが、バケツの三分の一ほども減ったあたりで、柏田は排泄を許す。

★便所虫の歌★

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父母を香港のゴミ焼却所で惨殺された風夏は、大金持ちから一転して逃げ回る生活に。最後に学生時代の女友達を思い出して訪ねる。卒業前に奴隷になると誓っていたのだ。だが女友達は風夏に過酷な指令を出し続ける。ノワール風味の漂う作品。

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