インサイドアウト 第二話(その4) 引き裂かれそうに
爪が伸び、垢のたまった指先でいじくり回し、つねり、引っぱたく。
唾を飲ませ、浴びせ、精液をふりかけ、髪の毛を引っ張り、体を裏返したり表にしたり、人形のように扱っている。
「参加すればいいじゃないか」
直人を試すかのように柏田が言う。
「柏田さんは?」
「もちろん、参加する。ただし最初のラウンドが終ってからだ。明日の昼までだからね。いまここにいるのは溜っているやつらだから、一人で二発とか三発やって気が済むまで楽しませないとな。そういう約束だからね」
どこから連れてきたのかもわからない人たち。彼らにどんな約束をしたのかも直人は知らない。
飢えていることだけは確かだった。
彼らを見ていたら、直人たちが感じていた渇望など大したものではなかった。
真津美は、二度と、若鮎の会には戻って来ないだろう。それどころか、会社も辞めてしまうかもしれない。
ごく普通の日常を完全に踏み外してしまったのだから。
柏田について、直人は開けっぱなしのドアから部屋へ入った。とんでもない臭気だった。ドアを開けっぱなしにしているのも、窓を開けっぱなしにしているのも、真津美の羞恥を煽るためというよりも、空気を絶えず循環させなければならないからだ。
薄暗い部屋には、すでに十二人もの男たちがいた。みな服を脱ぎ捨てて、真津美と交わり、酒を飲み、メシを食う。欲望を満たすためにここに来ているのだ。
真津美はそのための道具にすぎない。
以前、彼女は直人に「私は奴隷でもしもべでもない。自由な女なの」と言ったはずだ。そんな彼女の欲望の行き着く先がこれなのだろうか。
彼女に群がっていた男たちが徐々に減っていく。
最後に、後背位でしつこくアナルセックスを続けている大柄の男だけが残り、「ふー」と彼が離れていった。だらっとした巨大なペニスの先からザーメンがどぼっと畳に落ちた。
服を着てふらっと部屋から出て行ってしまうものが数人。柏田や直人の姿に脅えたのかもしれない。なにか要求されたらいけないと逃げたのだろう。
ふてぶてしい連中が六人ほど、飲み食いをしている。
柏田はうつ伏せでのびている真津美の髪を掴み、「おまえの好きなものだ。飲め」と畳に点々と落ちている誰のものとも知れない精液を舐め取らせる。
暗い中ではっきり見えないが、ギラギラと彼女の瞳が光っているのはわかる。乱暴されてくたくたになっているはずなのに、むしろ覚醒している。
恐ろしいまでの真津美の姿に、直人は声も出なかった。
彼女は欲しかったものを得ているのだ。
一番、飢えていたのは彼女自身だった。
それを見せつけるように、真津美は重そうな体をゆっくり起こし、膝をつき、そしてしゃがんだ。
「うううう」と腹に力を入れた。
ぼたぼたと膣と肛門から大量の精液が畳に落下した。
茶碗一杯分ぐらいありそうに見えた。
それを彼女は飲み干していく。
それを見ていた男が、彼女を膝の上にかかえて、口移しで焼酎を注ぎ込んだ。
とろんとした目になる。先ほどの殺気は消え、かわいいまでの彼女の表情に直人は勃起していた。
その直前まで帰ろうとさえ思っていた直人だったが、これだけの男たちの欲望に応え続けた真津美の肉体を自分も味わってみたくなった。
柏田は服を脱いできれいに畳んで、開けっぱなしになっていて、新聞紙だけが敷かれている押し入れの上の段に置いた。服は汚したくないのだろう。革靴までそこに並べていた。
直人は自分の靴を慌てて探すが、もちろん、無くなっていた。先に逃げるように帰った連中の中の誰かが、履いていったに違いない。
残されたのはボロボロの靴ばかりで、そのどれかを履くしかないのだろうか。
「ちくしょう」
なにに腹が立つのかわからないのだが、直人も服を脱ぎ、柏田に習って畳んで置いた。服まで盗まれたくはなかった。
柏田はニヤニヤしていた。やりたくなっただろう、汚れた真津美を抱いてみたいんだろう、と言っているようだ。
彼は縄を手にしていた。
「やるぞ、首締めだ」
放心状態で酒を飲まされていた真津美を、部屋の中央に引っ張り、仰向けにさせた。
金具と犬釘で両手を左右に広げた状態で畳に磔にする。
左右の足首に一本ずつ縄を縛り付け、その縄を手の平の近くまで引っ張り、新たな犬釘で引き絞る。
真津美はお尻を浮かせて、足を大きく開いた姿になった。
柏田は左右の足首の縄を、左右に離れた犬釘を経由して引き絞り、縄同士を結索するのだが、その縄は真津美の首に回されているのだ。
「こうすると」と彼女のお尻を押し上げると、縄は緩む。その手を離して彼女が弛緩すると首が絞まってしまう。
出来映えに満足したらしい柏田は、人差し指と中指を真津美に舐めさせてから、秘部に沈めていった。
「すごいよ、ドロドロだ」
そして自らペニスをねじ込んでいく。
「ほら、使えよ。遠慮するな」
直人は彼が、深く腰を入れて縄を緩ませ、腰を引いて首を絞める姿をしばらく眺めていた。まんぐり返しのような苦しい姿勢でのセックスで、柏田は左手を畳について上半身を支えながら、右手では彼女の乳房をバシバシと湿った音を立てて叩いている。
「ううう、ううう」と真津美は首が絞まるたびにうめく。
それでいて直人に、口を使えというのだ。
もしも首が絞まるのに耐えられなければ、噛まれてしまうかもしれない。それとも、真津美が本気でこんな酷い状況を楽しんでいるなら、それでもなお求めてくるのだろうか。
直人は、柏田に背を向けて、真津美の顔の上にしゃがみ込み固くなったものを口に差し込むと、真津美は「うげっ」と言いながらも舌を伸ばして愛撫しはじめた。
奇妙なリズム。柏田の腰、真津美の首、直人のペニスが連動していく。
「よーし、いいぞ」
柏田が果て、直人が代わった。柏田に指でアヌスを示され、直人はそこにゴムをつけて挿入した。首が絞まるとき、肛門は強くペニスを吸い込みながら締め付けた。若鮎の会で一度だけアナルセックスをしていたが、その時とは比べものにならない。
最初はいくら体の柔らかい彼女だからといって、繊細なアヌスであり、不自然な体勢であり、首にかかった縄もあるからと、妙に気遣っていたのに、快楽が大きくなるにつれて、そうした心は失せ、彼女のことなどより自分の気持ちよさが重要になっていく。
いつしか激しく腰を使っている。彼女の腰や肛門やそして呼吸がどうなろうと構わなくなっている。
酒を飲んで笑っている柏田。その足元からもっそりと動きだしたのは、見知らぬ男だ。ヘラヘラと笑っている骨太のその人物に、歯はあまり残っていない。かなりの老人なのかもしれないが、股間には皮をかぶっているものの、そこそこの長さのものがぶら下がっていて、さきほど直人がしたように背を向けて真津美の顔の上にしゃがみ込む。
その男に顔がぶつからないよに、直人はのけぞりながらアヌスを突く。
簡単に達してしまいそうで、もう少し味わいたいと思っていたとき、あとからきた老人は先に終えたようで、「ああっ」と声を上げた。
哀れで惨めなその垢の浮いた背中に、苦笑しそうになるが、集中する。
老人は終ったはずなのにむしろ深く下ろしている。どいてくれ、と直人は心の中で罵っていたが、なんとお尻を真津美の顔に押しつけて、こすりあげている。彼女のピンク色の舌が伸びている。
「ふへへええ」と老人は奇妙な声をあげて、腰を浮かせた。
強い異臭が漂う。鼻がおかしくなりそうだ。老人が離れた。
「なんてことを」
真津美の顔の上に、老人がひり出した汚物がのっていたのだ。
直人はちょうど達したときだった。だが、胃がむかむかし、我慢する間もなく嘔吐していた。
直人は真津美に吐瀉物を浴びせかけていた。ジンジンとした快楽の余韻と激しい後悔に直人は引き裂かれそうになっていた。
★第二話はここで終わりです。第三話をお楽しみに。あんぷらぐ(荒縄工房)より。

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