新版 共用淫虐妻・千春(期間限定Ver) 65 生かさず殺さず
「ありがとうございます」
「背中を流せよ」
「はい」
微笑みを浮かべる千春の頬を涙が濡らしている。
共有物としてどんな目に遭っても、長谷川との絆を確かめないわけにはいかないのだ。
いや、共有物として過酷な目に遭えば遭うほど、長谷川は千春を宝物のように扱うようになっていくに違いない。
この世に二つとない宝。千春もそれを悦びに感じるようになる。屈折した悦びのためなら、体がどうなってもかまわないと考えるに違いない。長谷川の気持ちに応えようと必死に務めを果たすだろう。
私は朝から不機嫌だった。
松田と管理人の大森に起こされたからだ。
「千春が逃げた」
意外なようで、意外ではなかった。どの段階で千春が逃げるか、私たちは試していたようなものだからだ。
とくに、昨日、あえて住人に火箸を使わせたのも挑戦の一つだった。ほかの通常の責めに比べて、突出して厳しい責めだ。
それをさりげなく、入れてみたのである。
訪問し、扉をあけたとき、千春が予想している範囲の責めだったら、それは単なるルーチンワークになってしまうだろう。
そうなったとき、千春の価値は半減してしまう。
次の扉を開けたとき、とんでもない責めが待っているかもしれない。常にその緊張感がなければ……。
かつて、どこからも相手にされなくなった女郎たちでさえも、毎晩、変態の相手をしているうちに、それがあたりまえの業務になっていった。
ルーチンワークが悪いわけではない。そのような冷めた感情を持ちながら、このような苛烈な境遇を長年にもわたって引き受けることのできる者はめったにいない。耐えきれずに逃げるか、自殺するか……。
気持ちは徐々に変化していく。
「ここまでやったんだから、もう自由にしてくれていいのではないか」と。
自由になったところで、ろくな人生を歩まないに違いないのだが。
どんな変態行為も業務と受け止めることができれば、どこへ行っても同じように業務が続けられると勘違いする。
奇妙な夢を描くようになる。
職や働く場所はたしかに変えることができる。変えたところで、千春のようなねじくれて腐り果てた快楽に染まった者は、その性根を変えることなどできない。
ここから逃げたい気持ちを持つのはかまわない。
どれだけ恵まれた生活をしていても、すべてを投げ捨てたいと思うことがある。ましてルーチンワークにはまってしまったときには、苦しくてたまらなくなってしまう。
それは家畜になりきっていないからだ。わずかでも野性が残っていれば、日々の流れにはまり込むことを恐れる。逃げ出したくなる。
千春がもし自由を手に入れたら、すぐに死んでしまうだろう。
人々から責められ、傷つけられ続けなければ生きてはいけないのだ。
なにが次に待っているかわからない緊張感。死ぬほどの酷い仕打ち。それが終わったときの解放感。そしてふいに訪れる極上の快楽。
そうした予想できない毎日だけが、千春に生きる力を与える。
どれだけ暴力が好きでも、自分で選ぶことのできる暴力は、シンプルで制御のきかないものになる。
ビルの上から飛び降りれば、それで終わりだ。面倒なことをするよりも、簡単に終わらせられる方を選んでしまうだろう。その気はなくとも、加減できずに事故で命を失うことは珍しくはない。
「生かさず殺さず」の世界は自分で作ることはできない。そこまで強い意志のある者なら、こんな腐った快楽に溺れることはないはずだから。
「逃げたって? しょうがないな」
唇を噛みながら、私はそれでもワクワクしていた。内心、うれしくてしょうがなかった。
朝、長谷川が目を覚ますと、千春がどこにもいなかったそうだ。
服は自由に着ることができないように隠されている。身につけられるものは淫具と汚れたジャージ、そして昨日支給したビニールコートだけだ。
ところが、それらは置いたままだったのだ。
「今日の予約は?」
わかっていたが松田に確認する。
「十時スタートです。あとはびっしりです。残りの十七戸の三十分訪問もありますから」
七時を回っていた。
「ペットルームとか、このあたりは探したんだけどね」
大森が言う。
「行き先はわかってる」
「え?」
どっちかだろう。私がもし千春だったら、そうする。
「悪いが、植木夫妻に頼んで、ペット仲間に連絡をしてくれないか。探すところはわかっているから」
大森が十二階へ向かっていった。
「カメラを用意しておけよ」
「え?」
「おもしろい絵が撮れるかもしれないじゃないか」
こちらの余裕に、松田はあっけにとられていたが、慌てて自分の部屋に戻っていった。
三十分もかからなかった。大森から電話があった。
「さすが杉村さんですね。ホントにスゴイ。もう見つかったってさ」
「どっちだった? 近くの公園? それとも丘の上か?」
「丘、でした」
最初の三日で千春をしっかり訓練した。その中で、逃げるのにふさわしい場所は二つしかない。訓練で使った公園。そして丘の上のホームレス。
千春は気づいていないが、あの訓練はいわば条件付けだった。反射的な反応をするメス犬の千春は、ほかのことを考える余裕はなかっただろう。
「じゃ、行こうか」
手にしたゴルフクラブのシャフトを、鋭く二回、素振りした。
ゴンを連れた植木夫妻、大森、カメラを持った松田をしたがえて、丘の上の公園に向かった。
遠くからでも大型のペット特有の低い吠え声が聞こえてくる。
「にぎやかだな」
丘の上にはホームレスたちと、四頭の大型ペットとその飼い主たちがいた。
早くも興奮している仲間たちを見て、ゴンも走りだそうとする。
「メスの臭いはわかるんだね」

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