インサイドアウト 第三話(その3) みんなと逆なのね
大事な性器の中で無数の雑菌が繁殖している。いくら膣には多少の殺菌作用が備わっているとはいえ、こんな暴挙には対応できない。
真津美は汚れたハンカチを再び自分の中へ押し込んでいく。
「ううううう」
目尻から涙が流れる。
「感じてるの?」
「は、はい」
柏田からすれば、次回まで真津美にセックスもオナニーも禁じたつもりなのだろうし、これまで一時的だった悲惨な姿を日常化させようとしてのことだろう。
恐らく、直人が考えいたような若鮎の会を開かせないためにも。
もどかしい。好江に冷たい目で見下ろされながら、絶頂を迎えたい。クリトリスを愛撫できないことがこれほど疎ましいとは……。
真津美は次の柏田からの呼びだしを待ち続ける。その間も肉体は穢れ腐っていく。次回を心から望むようになる。日常は刻々と崩れていく。快楽は寸止めのまま。冷めることがない。
「このポーズは?」
お尻を向けた写真。
真津美はそれを真似る。
「あっ」
好江はいくつもの衝撃を受ける。
白いお尻にペン先で傷つけるように描いたのだろう。左側に「ゲロ女」、右側に「ウ○コ女」と書き殴られている。細い傷跡だがインクというよりも皮膚が削れて読み取れる。
「これ、何年も取れないわよ。かなり深いみたいだし」
皮膚の下に油性の黒インクが入り込み、刺青に似た状態になっている。告げるつもりはなかったが、直人のしたことだ。
そして肛門を黒く丸いものが貼り付くように隠している。
「この黒いのはなに? 貼りつけてるの?」
「直径六センチのアナルプラグを常時、入れています」
その末端の黒い底だけが見えている。
「それって、中まで入っているってこと?」
「はい。十五センチほどの長さがありました」
「トイレはどうしているの?」
「禁止です」
「え? いつから?」
「日曜日からです」
あの日は朝から男たちに浣腸などでお尻を嬲られて、午後には大量のザーメンを注がれたままプラグを入れられたのだ。次回まで抜いてはいけない……。
下腹がぽっこり膨らんでいるのは溜っている便のせいだ。
「大丈夫?」
「苦しいです」
土曜日の午後から二十四時間食事はなく、上と下からザーメンのみ体内に入れていただけだったとはいえ、傷の回復のためにも、通勤のためにも、最小限の食事はしなければならない。それがすでに、五日分、溜っていた。
「あなたはお尻も使うのね?」
「はい」
当たり前のことだと真津美は思うが、好江は興奮している。
「あなたが誰とどんなことをしているのか、とても興味があるわ」
好江は意外なことを言う。
「あなたの性の方向はみんなと逆なのね」
「どういうことでしょう?」
「セックスは快楽でしょ。極上の快楽と思えば、シャンパンやふかふかのベッド、きれいな下着やネグリジェ、花を飾ったり音楽を流したり。とにかく素敵なものにさらに素敵なものを掛け合わせて、夢心地の中でめくるめく快楽に浸るわけじゃない?」
真津美はそんなことを望んだことは一度もなかった。
「だけど、あなたのは真逆。汚らしくて痛くて恥ずかしくて……。その行き着く先はなに?」
それは死だ。決まっているではないか。
「たぶん、みじめな最期よね。あなたは自分の肉体から痛みを感じることで、はじめて生きていることが実感できて、なおかつ刻々と終わりに向かっていることを楽しんでいるのね」
その解説は真津美にはどうでもいいことだったが、自分が漠然と信じていることをまったくの他人の口から聞かされるのは新鮮だった。
「つまり、あなたは闇を抱えることで、ここでいい仕事をしている、とも言えるわけか」
好江がなにも言わないので、真津美は再び服を身につけた。入れ直したハンカチの異物感を味わいながら。体の角度を変えると、直腸に入っているプラグが前へ内側から押し上げて、そのハンカチをより感じてしまう。
「んんん」と変な声が出る。
それを好江は笑った。
「どこで、そんなことをしているの? まさか自宅じゃないわよね」
真津美は一瞬、不思議そうな表情になった。好江は例の写真を見てはいたのだが、SNSに上がっているほかの柏田による映像や文章は見ていないようだ。または、関連付けていないのかもしれない。
「ご存じの、そのSNSでメッセージを送ると、わかるようになっています」
真津美はそう答えていた。
「ふーん。つまり、これはあなたがやっていることなのね?」
「はい」
「じゃ、そんな面倒なことはしないでもいいでしょ? いつなの?」
「それを決めるのは私ではなく……」
「やっぱり誰かいるんじゃない。それが内窪直人?」
そうではないが、彼は無関係ではない。

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