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荒縄工房短編集 第四話 死ぬまで内緒 磨く女・妙子編(その1)

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★短編です。「死ぬまで内緒」という自虐系のシリーズにしていこうと思っています。その最初のお話「磨く女」。なにをなにで磨くのか。そして……。お楽しみください。

 寂しさを紛らわせる方法はいろいろあるだろうが、妙子は子ども時代から無性に一人になりたくなるときがあった。寂しさを紛らわせるというより、自分から寂しさでいっぱいの空間を生み出してそこに浸りたいのだ。
「んんん、ああ、どうしてこんな……」
 自分の声しかしない。
 いつしかその癖に秘密の行為が加わった。紛れもない性的な行為だ。それも、マスタベーションだった時期は少なく、自分を追い込むような行為に発展していった。
「ああ、恐ろしい。こんなことをして……」
 自分を寂しさしかない時間と空間に閉じ込めることで、日常に戻る勇気を得ていたのだが、いつしか性的快楽をそこで得るようになり、同時にそんな自分を罰することに夢中になっていく。
「妙子は厳罰に処す」
 なぜ罰するのか。理由があるようで、妙子にも思い出せない。その思いが「罰」と認識されたのはきっとずっとあとのことだろう。おそらく、罰せられると思った方が、より性的な気持ちを強くさせると知ったときからではないか。
「妙子は悪い女だから、罰せられて当然ね」
 自分の声が狭い部屋に響く。そこには誰もいないのだが、だからこそ言葉は絶対なのだ。止める者はいない。妙子をかばう者もいない。
 ただ、彼女はしだいに、罰せられたことをできるだけあとまで引きずるようにしたくなった。
 恐らく、鉄棒から落ちて手首をくじいた時からだろう。包帯に巻かれて痛みが続く手首を抱えて学校へ行く日々は、思いがけず彼女を興奮させたのだった。不便。痛み。腫れ。不安。面倒。そういったものが混ざって数日続く。
 そのくじいた手を使って、淫らなことをする。痛い、つらいの果てに気が遠くなる。
 偶然のケガはそうそうないのだが、狭い部屋に一人寂しくさせて、なおかつ自分を罰したとき、その罰の記憶を長く引き伸ばそう、そしてできれば明るい陽の下でも感じ続けよう、と思いついた。
 自傷行為は独特だった。家族にも見つからないように、それでいて医者にかかるほどではないもの。
「罰だから、痛くて恥ずかしいことじゃないと」
 妙子はその思いつきに幼い体を震わせたのだった。
 用意したのは裁縫用のマチ針だ。ただ、何度も何度も逡巡し、実行に移すまで月日が必要だった。
 衝動が高まりすぎて、どうあっても実行しなければ収まらなくなっていく。「これまでの罪状が重なり過ぎた」となにがなんでもやるしかないと自分を追い込む。
 場所は前から決めていた。右乳房の横だ。どうしてそこなのか、あとで気付いたのだがブラジャーをつけはじめてから、ときどきむず痒さを感じるところだった。
 自転車に乗っているとき、電車に乗っているとき、授業中など、突如、そこを掻きたくなってしまうのをいつも我慢していた。不思議と掻けるとき、掻いても人目につかないときには、さして気にならないのである。
 その柔らかな肉をつまみ罰することにした。
 チクッと刺した。
 皮膚はその程度では破れず、針は若い肌の弾力に負けてしまう。注射針と違い、布に刺すだけの用途のためか、鋭さが足りない。
 簡単には刺さらないと思えば、しだいに大胆になっていく。
 はじめての罰。それは五回、チクチクと皮膚を刺そうと押しつけることだった。
「こんなのでは罰になりませんね」と自分でも物足りない。安堵の一方で、あの気の遠くなるような感覚の入り口にも到達できない。
 何度かチクチクとやったあげく、とうとう自分の家で、机に乳房をのせて、その端の方に針を思いきり突き刺した。
「あっ」
 深夜に思いがけず声をあげてしまい、慌てて針がついたままの乳房をジャージの下に隠す。
 誰にも聞かれていないか、気にされていないことがわかるまで、じっとしていた。
 しばらくして乳房にきちんと針が突き立っていることを確認し、手鏡や姿見を使って、何度も確認し、スマホで撮影した。
 スマホの映像は客観的で、それなりに衝撃的だった。人間の肉にマチ針が半分ほども埋まっているのだから。
 その映像は思わず寝る前に消してしまったのだが、期待したとおり痛みは数日続いた。何をしても、そこが気になる。赤くプツッと残っていた痕が腫れたり膿んだりしないか心配しつつ、大きな変化はなく、少しずつ消えていく。
「これじゃ、蚊に刺されるより軽いわ」
 腕に刺された蚊の痕のほうが、きれいに消えるまで長引いた。
 もう少し深く刺そう。消毒液を手に入れ、以前の場所より少し下のところに、マチ針を突き刺してみた。
「うっ」
 すぐに止めようとする気持ちを抑え「だめよ、これじゃ」とさらに深く。
「はあああ」
 このとき、いままで感じたことのない悦楽に飲まれて、失神しそうになった。
 気付くと、マチ針は机にぶつかっていた。完全に肉の中に埋まり、手を離しても、立ち上がっても、飛び跳ねても抜けない。
「とうとう……」
 やってしまった。その余韻は長く続いた。痛みというよりも、やってしまったことへの恥ずかしさであり、肉体に傷をつけることへの最後の一線を越えた喜びだった。
 喜びは、やがて恐怖へと変わった。
 妙子は一本の針によって、人に言えないことを喜びとする存在、罰せられたり狭い場所に閉じ込められて当然の存在になったことを確認した。それが恐ろしかった。
 やがてその恐ろしさは、うれしさへと徐々に高まっていく。
 これが私の悦びなのだ、と妙子は自分に言い聞かせた。「この悦びと一緒に生きよう」と誓った。
 若気の至り、だろうか。何度か乳房に針を刺しているうちに、とうとうマチ針の頭だけになるまで深々と刺せるようになっていた。
 しかも休みの日、誰にも気付かれることなく、右の乳房の横にマチ針を突き刺したまま過ごすこともあった。
 なにをしても怖い。針が肉を裂いているような気がする。血が溢れているかもしれない。抜いたあと酷い傷が残るかもしれない。
 夜、風呂場で秘かにそれを抜き取るのは、汗だくになるような行為で血も流れた。血は思ったよりも滴り落ちていき、止まらないので焦ったが、用意していた絆創膏でしばらく抑え、自室で消毒し絆創膏をつけかえると止まった。
 鈍い痛みは数日続いた。ブラをつけたときの痒みもむしろ強くなったような気がするのだが、傷口が開いてはいけないので、我慢する。その我慢の意味が変わった。いまはムズムズとする我慢の時間も、悦びだった。
「今度、また刺してあげるね」
 針をきちんと消毒しなければ危険だと気付いたのはその頃だろう。
 そのおかげで、社会人になって一人暮らしをするまで、それ以上の厳しい罰はしなくなっていた。
 痛みだけなら、乳房に輪ゴムをつけて弾くだけでもよかった。血が止まって気持ちの悪い色になるのもおもしろかった。
 輪ゴムプレイは(その頃には、これがプレイであることを自覚していた)、痕も長く残るし、輪ゴムをしたまま学校へ行き、あまりの痛さにトイレで外したりすることも含めて楽しめた。
 自分を罰することがプレイになっていくのを、妙子はあまり気にしなかった。いずれにせよ家族はもちろん誰にも言えない秘密であり、こういう行為にふけることそのものが、自分に課せられた怖くて楽しい罰なのだ。
 男子と手をつなぎ、デートをし、キスをしたり、乳房を服の上から揉まれたりもしたのだが、その甘い悦びの裏には常に罰による暗く大きな悦びがあり、到底、そこまでは到達できないのだ。
「ああ、罰でしか感じない……」
 そんな体になっていくこともまた、妙子には官能だった。私は違う、普通の女子とは違う、と。
 セックスを恐れた。
 行為への恐怖に加えていま大事にしている罰による悦楽が、セックスによって消えていくことを恐れた。
「もしセックスが苦痛なら、私にとってはそれも罰になる」と思いつく。
 セックスしてみたい気持ちが勝って、そんな理屈を見つけた。
 最初は相手も初めての幼なじみで、それなりに痛みもあって出血もしたので、プレイに近い感動を覚えた。
 しかし回数を経ていくと、痛みは減り、スリルもなく、感動もなくなっていった。相手は誰でもよかったので、苦痛に通じるような大きな男の人、いかつい男の人を求めてみたが、回数を重ねるほど悦楽が乏しくなってしまう。
 セックスの快楽はオナニーの延長としては満足できるものだったが、そもそもそれで満足できればプレイはいらないはずだった。



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ペンネーム「あんぷらぐ」
1970年代からのSM小説を読み、書き。「仲ゆうじ」などのペンネームで「SMセレクト」などに小説を書かせていただいておりました。
未発表作、新作などを随時、お読みいただきたいと思っています。
2019年「あんぷらぐど」表記から「ど」を取って「あんぷらぐ」へ改名。

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