奈々恵の百日 14 第四話 絶望試験 その2 泣いてしまいそう
「一本、入れるごとに喜べよ」
ピシャッと平手でお尻を叩く男。そこは鞭や竹刀で叩かれて傷だらけで、そこに海水がついて痺れるような痛みなのです。
「はあっ、うれしいです。いっぱい、浣腸して、奈々恵にして!」
「ダメよ、人間の名前をまだ叫んでるじゃない」と多美。
「いっぱい、ブタ四号に浣腸して!」
笑い声が起こる。悲しみがこみ上げてきて、このまま突堤から海に飛び込んでしまおうかと思う。
どうして死ななかったのか。これまでも自分で選ぶことができたはず。
いまは首輪をされ鎖を男たちに握られて、きっと海に飛び込んでも引き上げられてしまうでしょう。
「よかったな、みんなに笑われて」
きつい浣腸に腸が焼け爛れていきますが、私は「ありがとうございます、うれしいです」と言いながら笑顔をつくり続けるのです。
「なにがそんなにうれしいの?」
美和さんの言葉。
「はあ、はい。みなさんに見られながら、いっぱい浣腸していただいて、お尻から噴き出して……」
自分で言いながら、不思議な感じがしたのです。自分で自分に言い聞かせているように。そう、これはとてもいいこと。うれしいこと。楽しいこと。そしてありがたいこと。
「とっても、とっても、ありがたいです」
そのまま素直に口にしました。
「そうか、そんなにうれしいなら、おれたちもやり甲斐があるよ」
男たちは本気とも冗談とも取れない言い方です。
私は自分の言葉に酔い、こんなことをされているのが、本気でうれしいと思えてきました。
そうです。美和さんに誘われて、許諾し続けながらどんどん自分の権利を失っていき、遂には人間である奈々恵を捨ててブタ四号になっていく決意をしたのです。
思えば最初からうれしいことを目指して、ひたすらすべり落ちていったのです。
ですから、最後の決意、ブタ鼻、巨大乳房、タトゥー、リングといったものを施していただいたこともまた、喜びだったはず。病院からこの小屋へ移されて不安と、やってしまったことの大きさに妙に固くなってしまっていたのです。
これからは、ブタ四号として残りの命を燃えつきさせること。それはとてつもない喜びのはず。笑顔も自然に出るはずです。
「お、少し目つきが変わったな」と男がいいます。「ホントだ」と男たち。
「まあ」と多美が認めたようです。
「なんだか、下品な目つきになった」と武男。「もうこんなやつと知り合いだなんて思いたくもない」
ペッと唾を海に吐き捨てました。
美和さんがわざわざしゃがみ込み、音を立てて必死で排泄をしている私を覗き込みながら「まだまだだわ」と言いました。「もっともっと、いやらしい目つきになって。ただのブタじゃないのよ。いやらしいことが大好きで、どんな酷いことをされてもうれしくなってしまう変態ブタなの。人間でも本物の豚でもない、ブタ四号になるの」
意味はわかりますが、自分がどう変わっていけばいいのかはわかりません。もしかすると、それは私が意識して変わることではなく、毎日毎日、こうした喜びにふけって肉体を酷使していくことで結果的になっていくものかもしれません。
「すげえいやらしい目つきになってやがる」と男たちは喜んでいます。それがうれしくなってきて、顔もほころぶのです。
「もっともっといやらしいブタ四号になります」と申し上げていました。
その直後、お尻にぐりっと押し入ってくるものを感じました。
「どうだ、入ったじゃないか」
「マジかよ」
「でっかいケツ穴だな」
男たちの誰かが、まだ海水をじょぼじょぼと排泄しているアヌスに手を入れたのです。
「おもしれえぞ、おまえらもやってみろよ」
「ああっ、ひいいい」
手が抜かれると海水が噴き出します。そしてまた誰かの手が……。
その痛み。傷ついたアヌスに染み込む塩水。腸壁は熱くうねっています。
「笑えよ!」
美和さんに頬を引っぱたかれました。
「ふええええええ」
こんな痛みの中で笑うなんて。
「やれよ」
バシバシと頬を叩かれます。
「はあ、うれしいいいいいい、ブタ四号のお尻の穴、もっといじって!」
言葉に出せば自然に表情がついてくるのではないでしょうか。意識して苦痛で表情筋がこわばらないように、むしろ弛緩するように。
「まだだめよ」
引っぱたかれるうちに、美和さんの指の一本一本の温もりが頬から伝わってきて、惨めさがぐっとこみあげてきてしまい、ポロポロと涙を流しながら必死で笑顔になろうとしました。
「わざとらしい」
ゴンと彼女の拳が顎に入りました。
号泣したい。だけど、それはできないのです。私はもう泣かない。涙が出たとしても、笑顔でいなければ。ブタ四号に接する人たちが、私のことを徹底的に見下し安心し、心を寄せる対象ではなく、ただただそこにいる物体として扱ってくださるようになるまで笑顔でいなければ。
「よくなってきたんじゃない?」と多美の声もします。
「だったらさ、舌を出せよ」
武男がしゃがみました。
ぐりぐりと腸内で誰かの拳が回転し、ビュッビュッと淫汁を噴射しながら感じていますが、ブタになりきってだらしなく笑顔のまま舌を出しました。
「こんなことされても、泣くなよ」
彼は火のついたタバコを舌に近づけてきました。
怖い。泣いてしまいそう。眉間に皺が寄っていくのですが、なんとかこわばりを解いて、笑顔のままでいようとしました。
「あわわわわわ」
タバコが舌に押しつけられ、ジュッと音を立てています。その煙が鼻孔を刺激し、新たな涙が流れます。
「忘れてない? 笑顔」と美和さん。
笑顔になろうとしていますが、どうしても悲しげになっているのでしょう。

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