『隷獣 2』 18 こんな恥ずかしいかっこうの女子を
確かに裏社会とほぼ同じような世界にわたしたち母娘はいます。ネコさんやヤマイさんが、ごく普通の社会人だなんて信じられません。だからといって、ここではいかにもそれらしい人を見かけたこともありません。
押入れには母を責める道具類と手提げ金庫がありました。クリーム色をした古いものです。ダイヤルを回して開けるタイプです。
「どうやって開けるんだろう」
ネコさんに聞かなくては……。
その時です。ぐらっとアパートが揺れました。
「きゃー」とわたしは思わず豪太にしがみつきました。大きな地震が来たと思ったのです。
「ヤバイ、逃げないと!」
比較的冷静な京子がドアを開けました。そこから真っ赤な炎が飛び込んできたのです。
「えええ! なに、これ」
「火事だ」
そんなはずはない。誰もが思いました。
さらに爆発のようなものを感じました。ただ事ではないのです。
窓しか逃げ場はありません。そこを開けると、ドンと音がしてわたしたち全員が戸口まで吹き飛ばされました。
「なんだよー、熱っちいじゃねえかよ!」
豪太が怒り、ドアをもう一度開け放ちました。窓側がもっと危険なのです。だから、戸口から外に飛び出すしかありません。
「なんか、かぶるもの」
夏掛けの布団を出してきて、わたしたちはそれぞれに頭からかぶり、炎の中へ突っ込みました。わたしはスマホと金庫を抱えていました。途中で布団が落ちてしまい、一瞬、炎を感じましたが、気づけば塀にぶつかっていました。戸口とアパートの塀はわずかな距離しかないのです。
隣の部屋から噴き出している炎が風であおられてこちらに向かってきます。
「キャー」
叫びながらわたしたちは走り、なんとか道に飛び出しました。
近所の人たちが大勢、見に来ています。
「消防車!」と誰かが怒鳴っています。「ケガは?」
わたしたちはなんとか無事に外に出ることができました。その後も、次々とアパートの住人たちが飛び出してくるのですが、わたしたちの隣の部屋とその上の階からものすごい勢いで炎と煙が噴き出しています。
太ったおばさんが塀をよじ登ってくるのを、近所の人たちが手を貸して道に引きずりおろします。
2階の人たちは2人の学生が飛びおりて、なんとか助かりました。庭の方からは顔が真っ黒になってしまった人たちが数人、道に出てきて倒れました。
サイレンが近づいてきます。
「ヤバイな。おれは逃げるけど」と豪太。
「わたしも」と京子とともに野次馬たちの間に入って、とにかく逃げました。
偶然ではないはずです。隣の部屋で爆発があったのは、きっとわたしたちを狙ってのことではないでしょうか。
ネコさんが「しばらく離れていろ」と言ってくれたから、それが頭にあったから逃げるのが当たり前だと思って行動できたのです。
でも、これではなにも悪いことはしていないのに、ただ逃げたことになってしまうとしばらくして気づきましたが、もう戻れません。
「おれのうちに来いよ」
するとまた、京子が嫉妬の目で睨みます。
「だって、京子はうちに来るわけにはいかないだろう」
「こんな恥ずかしいかっこうの女子を連れ込むつもり?」
確かに、わたしは部屋ではつんつるてんのジャージしか着るものがないので、みっともないのですが。
「かまうもんか。黙って来れば、メシも食わしてやるし、もう一発、ケツ穴をやってやってもいいし」
それが京子には悔しいのです。
「先生の家に来なさい。それでいいでしょ? 服を買ってあげるし」
2人の板挟みです。
「そうか。じゃ、おれも京子のところへ行くよ」
「ダメ。お父さんとうちで鉢合わせされたら困る」
愛人ならではの気配りでしょう。同時に、わたしになにかしらの報復を考えているような気もして、京子の部屋には行きたくありません。
「豪太といる」とわたしは彼にしがみつきました。
こんなやつでも、いま頼れるのは彼だけ。
お尻の処女を捧げた彼を、わたしは男として認めているのです。
「もう!」
京子は教師の顔ではなく、ただの色ボケ女のように嫉妬を剥き出しにしていました。
「今日はオヤジが行くんだろ、そっちにさ」
そのとき、再び爆発音がしました。振り返るとアパートが完全に崩壊していくところでした。消防車は到着していますが、放水はまだです。負傷者の収容をしていたので、最後の爆発で道路はパニックになっていました。
わたしたちに興味を持つ者などいません。
急いで現場を離れたのですが、その時、はじめてわたしたちが裸足だと気づきました。
3人は奇妙な笑い声をあげ、豪太が近くの店でサンダルを買ってくれました。薄暗くなっていく街で別れました。京子は自宅へ。わたしは豪太の部屋へ。
「どうした」
安堵とともに恐ろしさがこみあげてきて、涙ぐんでいたのです。豪太は肩を抱いて「大丈夫だ」と言ってくれました。
母の行方がわからず、これまで長年生活をしてきたアパートが崩壊してしまい、わたしはどうすればいいのかもわからないのです。
「制服も、学校の道具も……」
どうでもいいことなのに、明日からどう生きればいいのかもわからなくなっていました。
「心配するな。おまえはおれの肉便器なんだぞ」

小説(官能小説) ブログランキングへ
★隷獣 郁美モノローグ版★

Kindle版はこちらへ
DMM.R18版はこちらへ
DLSite版はこちらへ
女子大生がケモノとして飼育される 山ガールを楽しんでいた郁美は、同級生の有希恵に「隷獣」としての素質を見出され、山小屋でケモノに堕ちるための調教を受けるのだった……。伝奇SM小説『隷獣』は、郁美のモノローグに書き改められ、ブログにはない結末が追加されています。
★妹は鬼畜系★

DMM.R18版はこちらへ
DLSite版はこちらへ
義理の妹に調教される兄「ぼく」。義妹のケイに、さらに義母に調教される。男の娘として男性たちのオモチャに、トーチャー・クラブの生け贄として拷問へとエスカレートしていく。コメディ要素あり。
今日のSMシーン

奴隷堕ち 11 麻倉みお