セルフライナーノーツ 『安里咲2』
亜由美シリーズの6作目、安里咲の完結編がこの『安里咲2』です。
2作で完結なら前編・後編とすべきだったのかもしれませんが、刊行時には『安里咲3』があるかもしれないので、シンプルに番号のみとしました。
飼い慣らされていく安里咲を、安里咲の視点で一人称で描くことで、周囲によって強制される数々の恥ずかしい行為、苦痛をどう受け止めているかを表現できるのではないか、と思いました。
安里咲は亜由美と違い自虐的な悦楽にふけることもなければ、剛介を求めていたわけでもありません。彼女の最初の体験はバレエを教えてくれたロシア人のマーコフでした。しかもそれは悲しく悔しい終わり方をしています。友人でライバルの珠緒とマーコフが彼女を罠にはめたのです。
そして大学に入ってすぐに、亜由美の拷問実験に参加してしまいました。そこで見た通常ではとても耐えられないほどの苦悶の中で悦楽に溺れる亜由美の姿に衝撃を受けます。
まさか同じ境遇に堕とされるとは。自分は亜由美ではない、それでも亜由美のようになってしまうのか。
苦痛のみを強制してくる教授夫人、寮長らに加えて剛介やゲー研の連中たち。ですが、しだいに逃げ出すことよりも、その中で得られる強烈な快楽に気づかされていきます。
肉体を限界まで酷使され、精神的にもギリギリの状況に常に置かれ、自分の意志ではなにもできません。すべてを管理下に置かれています。
しかも、彼女の目の前には苦い初恋の相手、マーコフまでもが現れたのです。
女子寮のペットとしての仕上げとして、安里咲は自分の私物をすべて商店街の空き店舗で売り尽くします。ただのバザーではありません。安里咲の肉体奉仕を楽しむためだけに、人々は彼女の私物を購入するのです。
ゲー研だけではなく、誰とも知れぬ人たちにも体をすべて使って奉仕させられます。さらに見世物として恥ずかしい行為を次々とさせられていきます。
終わりがないのです。
絶望の中で、安里咲は少しずつ亜由美のことを理解していきます。あの拷問実験で亜由美はどんな気持ちだったのだろうか、と。
当初は亜由美に騙されたと思っていました。あの拷問実験のあと亜由美は海外留学をしたと聞いたからです。あれはすべて自分たちを騙すための芝居だったのではないか。亜由美は安里咲たちのことを笑いながら、海外へ行ってしまったのだろう、と思っていました。
それが徐々に、あれはすべて本当のことだったのだと理解していきます。そして助けようとした安里咲を拒絶した気持ちも少しずつわかる気がしてきます。
本書には亜由美は登場しませんが、安里咲は常に亜由美と心で会話をしています。彼女ならどうしただろうか。彼女はこんなことをされて、どう感じていたのだろうか。
これまで理性的に生きてきたつもりだった安里咲ですが、徐々に命を燃やしながら快楽に沈んでいくことを受け入れはじめます。
彼女に残された選択肢は2つしかなく、受け入れるか拒絶するか、です。もし亜由美を一度も見ることもなく、言葉も交わすこともなかったのなら、おそらく安里咲はただ拒絶し続けてチャンスを見つけて自分で終わりにしたことでしょう。
ですが、安里咲はそうはしませんでした。
一度だけ、明白なチャンスがありました。このまま終わりにできると確信し、それを望みました。でも、剛介によって阻止されます。
このとき、安里咲の中ではっきりとした変化があり、彼女自身もそれを確認します。
こうして安里咲は東欧の城へと連れていかれます。マーコフたちが待ち受けています。吸血鬼伝説のあるという城は、近代的な秘密クラブとして改築されています。広間とそれに隣接する食堂があり、見知らぬ外国の男女たちの会食から、安里咲は奴隷としての行為を求められます。
そして広間への扉が開きます。
さまざまな拷問器具。そしてギロチン台。
ここで終わらせることができるかもしれない、と安里咲は期待します。自分から終わりにすることは失敗しましたが、きっと彼らに身を任せれば終わらせてくれるのではないか。
そんな気持ちになったからか、安里咲は容赦のない拷問にひたすら溺れていきます。
最後まで執筆して、安里咲はまじめで諦めない女性だと確信しました。強い気持ちがいわば生命力となって輝くのです。その輝きは嗜虐的な男女には、まぶしく、疎ましく、夢中にさせていきます。
嗜虐の楽しみを奪う行為は、相手が無気力となりすべてを諦め、輝きを失うことでしょう。拘束され、選択の余地のないとしても、輝きを失ってただの肉塊となってしまったら、退屈なだけの存在です。
キツイ責めを与えて、それにどう反応するか。それは一方通行のようでいて、やはり人間どうしの行為である以上、なにかしらの会話が成立していなければ退屈なのです。
私は慎重にこの物語を書き進めました。私が自棄になったり、間違った選択をすると、安里咲が台無しになってしまうからです。
絶望の中でもなお安里咲は安里咲であり続けてくれなければなりません。果たしてそんなことは可能でしょうか?
ちょっと著者ならではのわがままで、ややこしいことをセルフライナーノーツに書いてしまいましたが、シンプルで刺激的な物語としてお読みいただければ、それで充分です。
ただ、書く側としては、こんなことも考えていたんです、という意味で今回はやや複雑な部分について言及してみました。
実は安里咲に抱いた疑問と期待は、この作品でほぼ解消されているのですが、「待てよ、これで全部だろうか」という疑問も残りました。安里咲にはまだ深いなにかがある……。
結局、『安里咲3』は書く予定はありませんが、亜由美の完結編で彼女は再び登場してくれます。亜由美と安里咲はどんな会話をかわすのか。そこで2人の気持ちがさらによくわかるのではないか。
そんな気がしています。
それはともかく、『安里咲2』をたっぷりお楽しみいただければうれしいです。
★『安里咲2』★

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完結編。休む間もなく徹底した調教の果てに辿りついたものとは……。恥辱にまみれた公開調教から東欧の古城で繰り広げられる拷問ショーへ。

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★『安里咲1』★

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亜由美の拷問実験を目撃させられた美しき女子大生・安里咲。後継者として目をつけられ、女子寮のペットに。寮長たちによる過酷な調教が彼女を被虐の快楽に引きずり込みます。

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