いいなりドール 5 不健全なのはわたしです
サイテーの男の笑いです。
足を開きました。
彼が自分の意思でなにかをするなら、そのまま受け入れる覚悟でした。
指というのは、なにげに鋭い器官です。
唇のときは夢中でしたが、いまは冷静で、自分でもあまり触れたところのないところに当たっている兄の指先を感じていました。
このままうまく行けば、兄は欲望を抑えることができず、わたしはドロドロにされるでしょう。
やっと。
このときが。
きた。
「くすぐったいよう」
兄の指は肌が窪むほどでもなく、なぞるように動き回るのです。
「ふふふ」
兄が笑った……。サイテー男は笑うのです。
わたしは我慢できず、自分のベッドに仰向けに倒れました。大の字です。すべてを受け入れます。
大きな影。
のしかかってくるでしょうか。重いだろうな。
だけど兄は服を脱ぐこともなく、相変わらず指先でわたしの身体を触るのです。
「ううううっ、くすぐったいんだってば」
すると今度は十本の指で本気でくすぐってきたのです。
「あああ、だめええええ、やめて、お願い、ひー」
文字にするとレ○プをされている女子の悲鳴のようにも受け取れるかもしれませんが、わたしはただ兄にくすぐられているのです。
大の字ではいられず、身体を縮こまらせて。
「ううう、だめえええ、死ぬう、死んじゃう、やめてぇ」
どのぐらいくすぐられていたのでしょうか。
気づくと兄はもういなくなっていて、微かな異臭だけが、部屋に漂っていました。ニオイといえば、むしろわたしの身体から発したものの方が多いぐらいです。
いやらしいニオイです。
「ああ、クソッ」
窓を開けました。
クソッ、クソッ、クソッ。ここに全裸の女子がいて、食べ頃なのに、触るだけで引っ込みやがって。この変態ドスケベ野郎。
わたしは怒りがしばらく収まりませんでした。
怒りとは、いったい、なんなのでしょうか。
頭にくる。カーッとなる。腹を立てる。憤る。
要するに思うようにいかないのです。
確かに、怒りの表現によって誰も得はしません。こんなに怒っている全裸の女子はわたしぐらいのものでしょうが、これをそのまま兄にぶつけたところで解決はしないのです。
怒っているのはわたし。兄は関係ない。
原因は兄ではなく、わたしにある。
ドロドロにされると思ったら、くすぐられただけ。それって、兄弟ではよくあることじゃないですか。
近親相姦じゃない、めちゃくちゃ健全なことじゃないですか。
兄は健全だった。
不健全なのはわたしです。
わざわざ裸で。風呂あがりに全裸でうろうろし。兄を挑発し。触ってくれたものだから、これはもう行くところまで行くと思い込み。
なにもかもが、わたしのせい。
だったら、怒ってもしょうがない。
部屋着を身につけて、冷静になろうとします。なにがいけないのでしょう。
残された変態マンガ。
兄はそれを開いて折り目をつけていました。
「あぅう、かんじちゃううう、のりこ、いっぱいかんじちゃうううう」
そんな言葉を発して、おし○こをしている女子。いえ、おし○こではなく、いわゆる潮吹きってやつでしょう。女はクジラみたいに潮を吹くのか。ホラは吹くけど。
考えれば、昨日はキスをしました。今日は肌を触ってくれました。くすぐってもくれました。
兄はもしかして、それが好きなのかもしれません。
だったら、わたしは怒っているのに、兄は満足しているかもしれないのです。
ストーリー的には最後までやらないで満足するなんて、あり得ません。突き抜けたところに満足があるのです。
でも現実は違うかもしれません。
少なくとも兄は、昨日は昨日で満足で、そのお礼にこのマンガをここに置いていき、今日は今日で満足で、その意味でこのページを開いておいたのかもしれません。
というか、そもそも、わたし、兄のことなんてこれっぽちもわかっていないのです。わかるはずもないのです。もし兄のことがわかっているのなら、なんで引きこもっているのかもわかっているはずだし、そこから出てくる方法もわかっているはずです。
そうなんだ、わたしって、そもそもなんにもわかっていなかった。
バカな妹を持った、繊細な兄。
兄は昔のように妹をくすぐり倒して満足したのです。
それのどこが悪い。
むしろ考えようによっては、とっても素敵なお話ですよね。いや、そうでもないか。でも、まあ、「探偵ナイトスクープ」で放送できるギリギリのラインって感じですよね。
「西田局長、探偵のみなさま。いつも楽しく番組を拝見させていただいております。わたしは女子校生で、いまとても大きな野望を抱いております。それは引きこもりの兄に、昔のように、思いきりくすぐって欲しいのです。どうかこの願いを叶えてください。できれば、たむら探偵と真栄田探偵以外の探偵でお願いします」
ええ話や。西田局長はたぶん、泣く。
傑作選にも選ばれそう。
そして、キモイけど案外かわいくもあるわたしは、一躍スターに……。
「あの、くすぐられてた彼女ですよね」
サインしたり、一緒に写真撮ったりすることになるのです。
「探偵手帳、見せて」とせがまれます。
あ、できれば、収録時に客席にいようかな。
ああ、そんなことはどうでもいいのです。
とにかく、自分勝手なことをしようとして、兄にきちんとやり返されていたのは事実です。

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