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被虐の家 52 家畜小屋OPEN

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「ぐがあああ!」
 修造がのけぞる。春川はリードをしっかり引く。すぐに尖端を離したにもかかわらず、修造はしばらく震え、蹲っていた。
「みなさんも、どうぞ」
 真知子は鼻に汗を浮かべながらも笑顔をつくり、桃江の尻に押し当ててスイッチを引いた。
「ぎゃん!」
 小便を漏らしながら、その場に仰向けにひっくり返った。
 淵野も続く。
「きっ!」
 千絵はその場に伸びてしまった。
「今後は、逆らったらこれだから」
 3匹の尻に、微かに黒く小さな痕が残った。
「いつまで寝てるの」
 春川がプロッドの尖端を3匹に見せるだけで、全員が慌てて四つん這いに戻った。桃江はガクガクと震えが止まらないようだ。
 桃江たちは、男の方を向かされ、背後の春川たちはプロッドを構えながら、リードを強く引いて頭が下がらないようにさせている。
「修造、桃江、千絵。おまえたちが、あの喫茶店MONKを継続したいという気持ちはよくわかる」
 議員と呼ばれていた男が代表して桃江たちに話しかける。
「それに春川さんが出資して応援している。すばらしいことだ。ぜひ応援したい。だが、商店街としては法律の問題や道徳的な問題も抱えている。そこで、春川さんが提案してくれたように、返済が終わるまで一時的に喫茶店MONKを、特殊な風俗店として存続してはどうかというのだ。こうすれば合法的に仕事を続けられる。君たちもハッピーだろう。そう考えて、私たちも了承することにした」
 そんな話だったか、と淵野も思うが、事情はどんどん当事者の知らないところで変化しているのだ。
「ただ、いまの時代、法律に則っていればなにをしてもいいというわけにはいかない。口さがない連中がこの街の行政方針や商店街のやり方への攻撃材料に使うことも考えられる。そうなっては困る。いくら短期間とはいえ、この街の役に立ったことを証明したいのだ。ついては、この店がただ私利私欲のためではないことを示してくれれば、地域全体としても一定期間、目をつぶる意味があるだろうし、それに反対する者はいない」
 町会議員だかなんだか知らないが、えらそうに、と淵野は内心で笑う。さっき姉妹たちにチンポを突っ込んで腰を振っていた男なのだ。
「というわけで、さきほど春川さんも私たちの考えに全面的に賛同してくれた。つまり、風俗店である間、売上の半分を地域に還元してもらう」
 半分……。
 思わず淵野は春川を見る。春川は微笑みながらまっすぐ男たちを見ている。指揮者のように。
 すべて彼女が描いた絵なのだ。
「そして出資した春川さんや融資した人たちに還元できたところで喫茶店MONKとして再開することになる。どうだね。いい話だろう? 地域に貢献したあなたたちのことは、街がきっと末永く大切にするだろう。喫茶店MONKはきっと大人気の店になる」
 どこがいい話だ。いまの調子で会員から吸い上げたお金で返済をしていけば半年と経ずに完済できるのに、売上の半分を地域に還元したら、単純計算で返済期間も倍以上になる。期間が延びれば、その間にまた春川たちはいろいろカネのかかることを思いつき、姉妹たちに被せていくことだろう。
 桃江も千絵も修造も、以前にここで会ったときとはうってかわって、なんの反応も示さない。電気ショックがそれほど大きかったのだろうか。
 男たちが床に並べた書類に言われるままに署名していく。修造だけは、グローブを外された手を異常に震わせてしまい、何度も署名に失敗したが、なんとか書き上げた。
 こうなると男はホント、ダメだな、と淵野は実感する。
 今日で姉妹と修造の運命は完全に春川の手に握られた。それを地域社会が受け入れた。もはや、出口はない。
 あるとしても、桃江たちの手の届かない場所に遠のいてしまった。
 火曜日から大工が入り、店の改装がはじまった。大きな窓、テラスのような客席、明るいオープンキッチンは、すべて変更となる。
 木曜日には、春川たちも来てチェックしていった。いかにも短時間のやっつけ仕事で、壊すだけ壊しておきながら、仕上げは手抜きもいいところだった。もしも前のような店に戻すとしたら、姉妹は借金をしなければならないだろう、と淵野は思う。だが、心配する必要はない。そんな日は永遠に来ないのだ。
 3日ぶりに店におりた姉妹は、その変わりように愕然とする。
 窓は格子とブラインドで完全に隠れている。外からは光はほとんど入らない。電灯のほか、スポットライトなどが備えられているが、なにもしないときは薄暗い倉庫のようだ。
 キッチンのあったあたりには、床が一段下がり、樹脂の張られた一角となっている。大きな排水口。そしてシャワー設備。一段高いところに透明な西洋便器と和便器。異様な光景だ。
 そこでなにが行われるかも明らかだ。
 客席のあったところには、恐ろしげな拷問器具が並ぶ。大きな車輪。十字の磔台。三角木馬。太い柱で囲まれて姉妹を十分に吊せるだけの滑車が天井に並ぶ。そしてほとんどのものが壊されて運び出されたため、ガランとした店内の隅には3つの檻が用意されている。立つことはできない。そこに入れば獣のように這いつくばるしかない。
 このほか姉妹にはどう使うのかもわからない恐ろしげな器具や鉄のイスなどが並んでいる。鉄球。鎖。金属の枷。鉄の棒。壁にはあらゆるタイプの鞭、パドル、ケインが並ぶ。
 窓際の棚には大小さまざまなディルド、プラグ、淫具が並んでいる。
 入り口の近くに、円盤が取り付けられている。直径1メートルほどの円盤には、数字とシンボルが描かれている。ピザを切り分けるように12に区分けされ、同心円上に3段階。外側には人のカタチをしたシンボル。その内側には5から50まで5刻みの番号が振られている。また、2か所には「×2」「×3」となっていて、そこだけ黒塗りに白抜きの文字になっていた。
 そして一番内側には、壁にかけられた鞭などを模したシンボルが描かれている。
「これはさ、こう回すんだよ」と淵野が軽く回し、やがて止まる。すると上にある針のところでカチッと止まる。
「前屈みで尻を出す格好だね。次に」とまた回す。ルーレットのように滑らかに回転する盤。
「15だ。そしてもう一回」
 今度は丸くループした細長いラケットのような格好のシンボル。
「あれだ」
 壁には、丈夫な細いワイヤに柄を取り付けたもので、その尖端は輪になっている。シルエットはラケットに似ていなくもない。が、まったく用途は違うものだ。
「これで、尻を15発ってことだね。もし、最初に×2とか×3が出たら、もう一度回して、たとえば15が出たらその倍とか3倍の数になるわけだ」
 姉妹は声も出ない。
 渋い銀色のワイヤは人の肌を削り取ってしまいそうなほど、鋭利に見えた。
「もちろん、お客様はそれ相応のものを払うの」と真知子。「1発1000円としたら、15発で1万5000円よ。倍なら3万。3倍なら4万5000円。すごく稼げると思わない?」
 春川たちは最後はなんでもカネに換算するのだ。肉体や精神のダメージのことはまったく気にしていない。
「いったいここは、なんなんですか? もうお店じゃない……」と千絵。
「そうね。外に出てみる?」
 姉妹は、真知子の趣味か、ボンデージ系のブラとコルセットをしていた。陰部は剥き出しだが、乳房はブラで隠れている。
 首輪にリードをつけ、両手の枷をブラの横にカラビナで止める。
 2人を外に出す。まだ夕日が残っていた。
「ああ、そんな……」
 外壁は墨のように黒く塗られてしまっている。そして父母が築いた店の入り口にあった看板は、まったく違うものに取り換えられていた。
 白い板に、下手な黒い文字で筆書きらしく「被虐の家」と書かれている。それに加えて、赤い文字で小さく「家畜小屋」と添えられていた。
「この店は、一般名称は『家畜小屋』ね。あなたたちには家畜になってもらう。お客さんはあなたちを指名して、好きなだけ遊ぶことができるわけ」
 好きなだけ……。
 桃江と千絵は真っ青になっていた。
「大丈夫よ。中の道具は雰囲気を強調するための、映画のセットみたいなものだから。あれを本当に使う客なんていやしないわ」
 これまでとはまるで違う。こちらで準備したショーではない。客が妄想したことをカネを払って実行できる場所になってしまう。
 底知れぬ恐怖を姉妹は味わっている。
「それにこの店は事実上、会員限定だから。こうしたことを熟知している会員のみが楽しめる場所よ。ダメな客は二度とと入店させません。今後はネットでも一切、ここの情報は出さないわ。会員だけが知っている店で、会員が推奨した人でない限り新しい会員にもなれません」
 そこにトラックがやってくる。
「家畜小屋さんってこちらですか?」
 花屋だ。
 荷台から「家畜小屋さんへ」と書かれた花が運び出されて入り口に飾られていく。送り主はよくわからない。
 淵野はそれを見て、春川はこの街に「被虐の家」を何店舗か出すつもりなのではないか、と感じた。ここは3匹の家畜小屋。他はなんだろう。奴隷小屋。豚小屋。犬小屋……。それぞれに、春川の堕としてきた女たちが肉体を売りにやってくるとしたら……。
「明日の金曜日からは、奴隷姉妹生誕祭をやるわ。お客様も大勢いらっしゃるし、たくさん稼げる。日曜日までの3日間でちゃんとあなたたちが売り出せたら、借金なんて簡単に返せちゃうわ」
 姉妹たちは恐れていた。月曜日の種付け輪姦のあと、接着剤は使われていない。つまり、今後は誰でもカネさえ払えば種付け可能になるのだ。
 最初の2回はVIPがいたので陰部を封じたのだが、今後は不要となったのである。


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