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いいなりドール 40 なんか嫌な話になりそうです

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 おかしなクスリを吸わされて朦朧とさせられて連れ込まれたあげく、自由であるとか、うさんくさい共同意識とか、グランピングなんて、うんざりなんだよ!
 母なら叫ぶでしょうね。わたしは黙る。
「すげー高級な寝袋があるから、ファスナーしちゃえば、完璧だからさ」
 布団を2つに畳んだような四角い寝袋。もこもこしています。温かそうです。その中でスヤスヤしたいです。
 完璧というのは、要するに誰も布団に潜り込むようなことはできない、という意味でしょう。
 エロ親父の源蔵が、わたしの股間を見たくて潜り込んできたようなことは、この寝袋ではできません。それはまあ、少し安心。
 だけど、ナイフで切り裂いたら、簡単にやられちゃうよね。
「必要なら、ダブルサイズの寝袋もあるよ」
 なんと2人用の寝袋。
 そうか、そういうことか。
「トイレと風呂はこの奥の別のテント。大丈夫、ちゃんとつながっているから、雨が降っても大丈夫」
 一ヵ所、通り抜けられるところがあって、その向こうらしいです。
 クスリのせいか、いろいろなことがあったせいか、わたしはもうぐったりなので「寝かせてください」とお願いしました。
「うん、わかった。ここ使っていいよ」
 オレンジ色の寝袋。カーテンと相まって、女子っぽい雰囲気ではあるけれども。
 カーテンはマジックテープで簡単に閉じておくことはできます。音は筒抜けだし、彼らの影がはっきり見えています。
 それでも寝袋に入ったら、床がふかふかのクッションということがわかり、フードみたいな部分をぎゅっと引き絞ったら完全なヌクヌク状態になって、その直後、意識不明になるように眠ってしまったのでした。
 そのせいか、深夜にふと目が覚めてしまったのです。
 薄暗い。
 ここはどこ。
 わたしは誰?
 いやだけど、トイレに行きたい。寝袋から出ると、部屋はかなり寒く、ぶるっとなってますますトイレに行くしかないのです。
 がらんとした部屋は薄暗いですが、明るい色調で場所はよくわります。2カ所だけ閉じているカーテンがあって、ドットコムたちが意外にもかなり離れて寝ているらしいことがわかりました。
 トイレ方向を12時とすると、わたしは10時あたり。彼らは2時と6時あたりです。
 通路はなんだか明るいのですが、それはセンターからの明かりにようです。センターに誰かいるのでしょうか。
 トイレは最新のもので快適でした。水洗です。
 思い切って外に出てみました。入り口は簡単に開いて、ぎゅっと身が引き締まるほど冷たい外気の中へ。木々が昼間より高く、近く感じます。山の中って、人間の世界というよりも植物の世界なんですね。
 出てから「しまった」と思ったわけです。戻るには顔認証が必要でした。わたしの顔ではダメかもしれません。こうなったらセンターへ行って誰かに助けてもらうか、朝までセンターにいるしかないでしょう。センターに入ることができれば、ですけど。
 とても明るいランプのように橙色に輝くテント。ちなみにライトのテントは暗く、わたしがいたレフトと同じような感じ。ええっと、このライトは光るライトじゃなくて右って意味。RとLの発音を正しくね。あ、このRとLは、右と左って意味じゃなくて、LightとRightってことなんだけど。
 そんなことはどうでもいい!(自分で言いだしたのですが)。
 センターを一周したものの、中に人の気配はなく、影が動くこともありません。
 入り口のドアはロックされ、顔認証に顔を向けてみました。もちろんわたしの顔はなんの反応もしません。正面も横も斜めも。微笑んでも睨んでも。怒っても、ダメ。
「なにしてるの」
「ああっ」
 背後からの声に叫びそうになり、口を自分でふさぎました。振り返ると。
「こんばんわ。ミユキ」
 毛皮のヘンタイがいました。そのうしろにあの女も。ニコニコして。
「ようこそ。待っていたんだ」
 2人に腕をとられ、センターに連れ込まれました。顔認証はとてもスムーズで、そのオヤジの顔は一瞬で認証され、自然にロックが解除されてドアが開くので止まることなく中へ入っていくことができるのです。
「夜更けにふさわしいお客さんだわ」
 彼女に肩や鎖骨や腕を撫でられます。
 まさか3人でエッチなことを?
「やめてよ、わたし、したことない!」
「なに言ってんのよ。立派なディックを2本従えてさ。なんにもないなんて」と彼女、イジワル。
「ないの! なんにもしてない! したことない!」
「へえ。3P好きなんだと思ったわよ」
 3P。スリー・パーソンズ。男2人と女1人または、男1人と女2人(いまここ)、または男1人、女1人、性別不詳1人という組み合わせもあり。さらに3人全員、性別不詳という可能性もあり。いまの時代はなんでもあり。
「そんなんじゃないですよ!」
「じゃあ、どんなのよ」
 毛皮オヤジと女はわたしの手をとって、センターのセンターにつれて行きます。ここはカーテンの仕切りはなくて、円形の壁沿いにはパソコンやロッカーなどが整然と並んだ一角があるものの、どちらかといえばサッパリとした、ガランとした部屋なのです。
 その中央には、掘りごたつ的な円形スペースがあります。そこに連れていかれて、座りました。ふわっとしたいい座り心地です。
 ただ、目がどうしても中央の中央のさらに中央にそびえ立つでっかいオブジェにいってしまうのです。それと向き合うことになるし、目をそむけると、肌が見える毛皮オヤジか、いやらしい目で見つめる女と目が合ってしまうわけです。
 それは、男性のアレにしか見えない太い棒状のオブジェ。その下には2つに割れたまんじゅうみたい丘みたいな形状があって、どう見ても女のあそこなのです。
 つまりアソコからアレが突き出ているわけです。
 ご丁寧におまんじゅうには先のとがった植物の葉が四方八方に出ています。それがゆらゆらと微かに揺れていて、このテントの中を空気が自然に流れていることを示していました。
「これはね、大事なものなんだよ」とオヤジが言います。「これは電波を妨害する装置で、盗聴も盗撮も不可能。スマホも繋がらない。あらゆるデジタル機器をコントロールできる」
 そして女が、馴れ馴れしくわたしの肩に手をやって「つまり、ここで話すことは漏れないってこと。漏れちゃったとしたら、ここにいる誰かが漏らしちゃったってことになるの」と耳元で囁くのです。
 ここで起きたことは誰も漏らさないことが前提。
 そして、1つのグラタンを3人で分け合って食べるような「世界」。「いいなりドール」をみんなで……いただく。
「そんな顔しないで。せっかくかわいいのに」
 女の指先がわたしの頬に触れます。泣いてる、わたし。
「いまから言うことをしっかり聞いてほしい」
 オヤジは妙にマジメな声を出します。3人しかいないのに、そんな大きな声で言わなくてもいいじゃないか、と思うほど全力です。発声練習のようです。
「ミユキの母、雪子、源蔵、兄の健介は、敵の手に落ちた」
「敵? 警察じゃなくて?」
「警察は2種類ある。私たちが困ったときに110番をして助けてもらったり、交番に駆け込んで助けてもらう警察。もう1つ、私たちの敵としての警察」
「どういうことですか?」
「それをこれから話す」
 夜中というよりも、夜明け前。
 オヤジはいろり端で昔話をする名優のような雰囲気で、客席の一番後ろまでしっかり届く張りのある声で恐ろしく、理解しにくい話をしたのです。
「いまから25年前。ある新興宗教の団体が恐ろしいテロ計画を推進した。猛毒を開発したり、敵対する人物を暗殺した。同時に資金洗浄の国際的な仕組みを作り上げた」
 なんとなく聞いたことのある話です。首謀者たちは、全員が死刑になったことで話題になった事件。わたしの産まれる前のことですが、母はその頃……。
「当時、まみやづかの会という新興宗教があった。まったく別物だ。だが見た目が少し似ていた。白っぽい服を着る者が多かった。いつの間にか住宅地の中に教団の施設ができて、住人の反感を買ったりした。似ているが、こちらはテロなどまったく意識することもなく、ただ穏やかな世界に集うことで生をまっとうしたい、命ある限り生き続けたいというだけの集団だ」
 ああ、なんか嫌な話になりそうです。


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1970年代からのSM小説を読み、書き。「仲ゆうじ」などのペンネームで「SMセレクト」などに小説を書かせていただいておりました。
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