荒縄工房短編集 第二話 親不孝子不孝(2)
「一緒にいかがですか?」
「へへへ。それじゃ」
配達員もズボンのファスナーをおろして固くなっている陰茎を取り出します。
「口を開けろ。もっと大きく」
母はアーンと声をあげて口を大きく開けました。
目が上を向き、窓から覗いてる私に気付いたかもしれない……。
とても焦りましたが、目を背けることができませんでした。
二人の男たちは、無情にも母めがけておし○こをし始めたのです。
「ああああ」とうがいをするときのような声を上げる母。まるで喜んでいるように見えます。だからでしょうか。男たちは遠慮なく浴びせています。
二人の泡沫が止まったとき、ずぶ濡れになった母は、まだ口を開けています。その中には二人の排泄物がたっぷり溜っています。
「いいぞ、飲んでも」
母はごくごくと飲み干し、「ありがとうございます」と二人に礼を言ったのです。
それは二人のプレイではまだプロローグなのです。そのあと、配達員は帰り、二人が部屋に移ってしまうとなにをしているのかはわかりません。
ただ肉を叩く激しい音が何十発と続きます。母の悲鳴はほとんど聞こえないので、口を塞がれているのでしょう。
そして窓枠に跨がっての木馬攻め。
これはもう、終盤なのです。おそらく、それまでに、母は男のものを何度も受け入れていたに違いありません。
足首にくくりつけられたバケツ。それは母の排泄物が入ったものだったと、そのときに知ったのです。
「臭いなあ、おまえのケツから出たものは」
「お許しください」
「いやらしいまんこだ」
「あああああ」
窓枠や外で責めるとき、教員はわざと母の声が出るようにしているようでした。母は大声を出して人が来てしまうことを恐れながら、それでも我慢できません。
「今度は、この豆を潰してやろうか」
「ひいいいい」
窓枠の股間部分に、鞭の柄をぐりぐりと突き入れます。悲鳴が大きくならないように、母は必死です。
「見ろ、溝におまえの汁が溜っているぞ」
何度か、窓の部分を確かめたことがあります。いつも妙にきれいになっていました。それに、そこは雨戸、ガラス戸と四本の溝があり、かなり幅が広いのです。
ここに跨がるとどうなるのだろう。
まるで母の温もりが残っているかのような溝に手を当ててみたこともありました。
三回ぐらい見ましたが、もっと見たかもしれません。よく見えない室内での行為は想像するだけで、見たいとは思いませんでした。十分でした。
それほど夢中になったのに、母のことは徹底して軽蔑していました。娼婦のように抱かれるだけならまだしも、母の異常な性愛をあからさまに満たしている姿を、肯定できるほど私の心は広くなかったのです。
それでいて母は私に対して怒ることは一度もなく、献身的に店と家事に努めていました。料理も近所の総菜屋や肉屋のものが多いとはいえ、それは近所付き合いでもあるのでこの界隈では当然でしたが、手料理を作ることも多く、正月などは凝った料理も作ってくれました。
ただ旅行に行くことはまったくありませんでした。母は店が忙しいからと言うのですが、理由は教員の性具になるためだったに違いありません。教員の都合でいつでも相手ができるようにしていたのでしょう。
そしてそのために私の機嫌まで損ねないように必死だったのかもしれません。
私が高校に入っても、母と教員の関係は続いていました。教員はハゲて皺が増え、母も痩せて昔ほどの美しさはありません。
借金はいつまでも減らず、とっくに母を売りに出せる時期は逸していました。
当時の私にはただただ汚らしい関係にしか見えませんでしたが、二人はなんだかんだ言って愛し合っていたのです。
家でプレイするのは、そのほうがスリルがあったからでしょう。借金の話も、母を買うような意味付けがあったのではないでしょうか。恐らく、借金しようがしまいが、肉体関係は続いたでしょう。
母は妻子のある教員から、なにをされてもしょうがない状況にあることで、気持ちが高まったに違いありません。
「ふーん。窓枠ねえ」
私は後ろ手に縛られ、サッシの窓枠に跨がらされていました。それは母が跨がったものよりは狭いものでした。
「男と女じゃ股間が違うからな。おまえの方がずっとキツイだろ」
「は、はい」
古いアパートの一階。彼の部屋の北向きの部屋にある窓に、全裸で跨がっているのですが、彼は意地悪で、玉袋を別々にゴムバンドできつく縛り挙げ、その先に鉄アレイを取り付けて、窓枠の向こうとこっちに垂らしたのです。
「で、おまえは、こうされると、母親と一体になれるってわけ?」
「くうううう」
そうかもしれません。母が感じたものとはぜんぜん違うかもしれませんが、大学生になった私には、同級生によるこの責めが生きるよすがとなっていたのは確かなのです。
彼とはあるサークルで知り合い、SM小説の話から男同士の関係まで、なぜか気分よく好きなだけ話のできる間柄になっていき、私の最初のご主人様となってくれたのです。
「親不孝なのか、親孝行なのか、わからないね」とからかわれました。
私が親不孝であるなら、母は子不孝とでも言うべきでしょうか。
いえ、やはり母を悪く言う気にはなれません。哀れでけなげで必死だった母……。
母は私が高校卒業するのを待っていたかのように急逝しました。教員に看取られることもなく、寂しい最期でした。唯一連絡の取れた祖父の妹が駆けつけてくれました。あとは私だけでした。
入院して肝臓や腎臓に癌があって「よくこれまで医者に行かずに」と医師たちにさんざん私が叱られました。
さらに驚くべきことに、医者たちから「どういう仕事をしていたの?」とかなりしつこく聞かれました。というのも、指や手首、足首、膝、肋骨などに複数の骨折痕があって、どうやら医者に行かずにそのまま放置していたらしいのです。体にもたくさんの傷や痣がありました。
「古い傷もあるから、なにをしていたのかと不思議でね」と医者。
私が疑われていたようです。それでも、死の間際まで母と私の関係が良好なので、医師たちはしだいに私を疑うことはなくなりましたが……。
入院から半月ほどで余命いくばくもないと宣告され、母も覚悟をしたようですが、私は教員の件を自分から切り出すことはできませんでした。
「誰か、連絡すべき人はいる?」と何度も聞いたのですが、微笑むばかりです。
医者によれば鎮痛剤も徐々に効かなくなっているので、そうとうな痛みのはずなのですが、母は亡くなる瞬間まで微笑んでいました。
まるで痛みを楽しむかのように。
さらに驚いたことに、母は私が大学を不自由なく卒業できるほどのものを残してくれていました。借金などはなかったのです。あったとしてもとっくに返済されていたのです。相続の関係で文具店も家屋もお金に替えることになってしまいましたが……。
自由にしてもらい、それが私にはむしろ悲しく、大学でも勉強のかたわら、母の性癖について深く学ぶようになっていました。自分は母のような肉体ではないけれども、気持ちは一緒で、母のように嬲られたいと妄想するようになっていきました。
ですから最初の彼との出会いは、偶然ではないのでしょう。求め合い引き合ったのです。
彼にはしっかりと男色を仕込まれましたし、緊縛されて服従し、恥辱にまみれる悦楽を教え込まれました。
以来、社会人になってからも、数え切れないほどの人たちと関係を続けながら、中年になろうとしていました。
突然、弁護士事務所から勤務先に電話があり、高岡某という人物について心当たりはないかと問われました。
「いえ。知りません」
ぞっとしたのは、これまで恥ずかしい行為によって知らぬうちに関係していた男性だったのでは、といった恐れでした
その男が私の名を覚えていて、なにかよからぬことを考えているのではないか。もし母の恥ずかしい過去や自分のいましていることが明るみに出たら、この職場にはいられない、といった焦りもありました。
ですから、その夜、弁護士事務所の近くの喫茶店に行き、「雪さんは、あなたのお母さんですよね?」と若い弁護士に切り出されたとき、私は混乱してしまいました。
「そうですが、それが?」
「実は……」
高岡某は、あの教員のことでした。
あれほど長い関係があった男なのに、私は名前もろくに知らなかったのです。知ろうともしなかったし、ただ専門学校の教員であることしか頭にありませんでした。母の病状も最期も知らせることはありませんでした。

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自虐の虜となった女子校生が自分の肉体破壊に突き進んでいく。物語はデッドライン(引き返すことのできないところ)に向かって、エンディングと発端から交互に描かれる。結末はわかっているのに、読み進めるしかない破壊的な磁力を発する作品。
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陸上部の女子・菜津希はそのことが頭から離れない。練習中に公園の隅に暮らす汚れた人たちを見たときから、肉体をその人たちに汚してほしいと願うようになる。それはやがて理解者であり脅迫者でもある人物を得て輪姦願望へとエスカレートしていく。鍛えた若き体を汚辱する快楽。

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